カラダのお話し 2018年5月

このコーナーでは、旭川市内で医院を開業されている先生に登場してもらい、読者が抱える身体の悩みにお答えしてもらいます。
あなたの誰にも相談できないカラダの悩みに先生がお答えします。

最近、妊娠もしていないのに母乳が滲むようになりました。搾れば出る程度で、乳房もそれほど張っていません。これまでこんなことはありませんでした。血が混じっていることもありません。何かの病気でしょうか?
(相談者:18歳/学生)

A. 搾ってどれくらい出るのかは不明ですが、母乳は妊娠中、あるいは産後授乳期だけ出るものではありません。母乳の分泌にはプロラクチン(乳汁分泌ホルモン)が深く関わっています。
プロラクチンは脳の下、ちょうど真ん中あたりにぶら下がっている、脳下垂体というところから分泌されるホルモンで、母乳分泌を促すだけではなく、胎児の成長や、人の免疫系にも関わっていると言われています。かなり複雑な働きをするホルモンです。
プロラクチンが過剰に分泌されると、何もなくても母乳が出ることになります。過剰の程度によって分泌される量もさまざまですが、搾らなくても滲んでくる、あるいは強く乳房を握ると飛び出してくる、などは放っておかない方がいいでしょう。まずは婦人科で、プロラクチンを測定してもらいましょう。血液検査でわかります。その値が高いようなら、継続的な測定が必要になります。というのも、プロラクチンは採血の時期によって値が変わりやすいからです。排卵時期などは高くなるため、月経8日目までに採血することが望まれます。それでもかなり高い値を示す場合は、脳下垂体の腫瘍の可能性も考えます。下垂体腺腫と呼ばれるもので、大きくて頭痛などの症状が強い場合は、手術療法も選択肢になります。通常はドーパミンアゴニストを投与する、薬物療法で済むことが多いようです。
気を付けなければならないことは、高プロラクチン血症(プロラクチンの値が高い状態)は薬によっても引き起こされるということです。抗うつ薬、安定剤、胃薬(抗潰瘍薬)などの服用で起こります。高プロラクチン血症の1割程度が、この薬剤服用による、と言われています。特に若い女性には、こうした抗うつ薬の投与には慎重になるべきです。抗うつ薬では三環系剤であるアミトリプチリン、イミプラミンで高プロラクチン血症が起きやすいと言われています。こうした薬を使って母乳が多く出るようなら、休薬かほかの薬に変更した方が無難でしょう。胃の不調があっても、若い女性に対しては、高プロラクチン血症を引き起こしやすい胃薬は避けるべきでしょう。

さいごに

お母さんが子に母乳を与える光景は微笑ましく、美しいものだと感じます。子が乳首を口に含んで母乳を吸うことが、お母さんの脳下垂体からプロラクチンを分泌させやすくします。つまり乳首への刺激、その姿を見るといった情動もプロラクチンの分泌を促します。
まさに、神秘のホルモンと言っていいでしょう。乳汁分泌だけではなく、最近は妊娠の維持、水電解バランス、育児行動、子の成長発育にも関わっていると考えられています。女性にとって、かけがえのないホルモンと言えるでしょう(男性にとってもですが)。
母乳が滲むのは、プロラクチンが高いことを示すサインかもしれません。1度婦人科で相談してはいかがでしょうか。

豊岡産科婦人科
院長:久田孝司
住所:旭川市豊岡4条1丁目1-10
電話:0166-31-6801

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