北村晴男弁護士の法律相談 2017年8月

北村 晴男
弁護士(東京弁護士会)
1956(昭和31年)年生まれ。長野県出身。
1992(平成4)年に個人事務所を開設し、2003(平成15)年に法人化。生命保険、交通事故、医療過誤、破産管財事件、家事事件など多岐にわたる事件を処理している。
弁護士法人 北村・加藤・佐野法律事務所代表。
メルマガ「言いすぎか!! 弁護士北村晴男 本音を語る」(まぐまぐ!)配信中

振替休日や給与に反映なく出勤日外の労働は不当労働?

21歳の息子の勤め先は、飲食業・賃貸業など幅広く手掛けている会社で、息子は飲食の仕事に携わっています。就業規定には、土曜・日曜日・祝日は休みとなっています。ただ、月に2回ほど土曜日や日曜日、祝日が営業日となったり、イベント出店により出勤したりしています。振替休日や給与に反映されていればいいのですが、なにも変わりません。息子は特にそれに対して不満を持ってはいないようですが、不当労働のような気がしてなりませんが、いかがなものでしょうか?(旭川市/Y・A)

 まず、ちょっと難しい話になりますが、法定労働時間・法定休日についてご説明します。
 法定労働時間とは、労働基準法(以下「法」といいます。)で定められている労働時間の上限のことで、1日8時間、1週40時間(飲食店のうち常時10人未満の労働者を使用する店については44時間)までと定められており、この時間を超えて労働させる場合は法定時間外労働となります。 これに対し、所定労働時間とは、企業が就業規則などで定めた労働時間のことで、法定労働時間の範囲内であれば自由に定めることができます。
 また、法定休日とは、法が定める休日の最低ラインのことで、1週間に少なくとも1回の休日を与えなければならないとされており、この休日に労働させる場合は法定休日労働となります。 これに対し、所定休日とは、企業が就業規則などで定めた休日のことで、法定休日以上であれば自由に定めることができます。
 法定時間外労働または、法定休日労働をさせるには、あらかじめ労使で書面による協定を締結し、これを労働基準監督署長に届け出ることが絶対に必要です。これを一般に「36協定(サブロクキョウテイ)」と呼んでいます。そして、法定時間外労働の場合は2割5分、法定休日労働の場合は3割5分の割増賃金を支払う必要があります。
 なお、割増賃金は、その人の1時間当たりの賃金により算出します。
 本件はどういう会社か分りませんが、就業規則で土日祝日が休みで(所定休日)、労働時間は1日8時間、週40時間(所定労働時間)と就業規則で定められた従業員10人未満の飲食店に勤務しており、平日は残業はしていないものと仮定してお答えします。
 この場合、法定労働時間である週44時間には、まだ4時間余裕があります。
 会社が定めた休日に仕事をしているので、時間外労働(残業)に当たることは間違いないので、その分の賃金の支払いが必要です。
 「月2回土日、祝日に出勤」とのことですが、2回の休日出勤が別の週にあった場合には、法定休日(週1回)は確保されているため、この出勤は法定休日労働には当りません。そこで法定時間外労働に当るか否かですが、その出勤日の労働時間が4時間以下の部分は法定時間外労働に当らないため(これを「法定内残業」といいます。)、通常の賃金を支払い、4時間を超える部分は法定時間外労働(法定外残業)に当るため、2割5分の割増賃金を支払う必要があります。
 2回の休日出勤が同じ週の場合には、1回目の休日出勤に対しては右のとおり支払いをし、2回目については法定休日労働に当るため、3割5分の割増賃金を支払う必要があります。
 ですから、「土曜出勤しても日曜日にイベントで駆り出されても、給与に反映されないし、振替休日もない」というのは違法です。この場合、土曜、日曜、祝日はタダ働きをさせられているので、とんでもない話です。これは、今のうちに未払賃金を請求をすべきですが…ここから先が実際上難しいですね。経営者は人間で、みんなが人格者というわけではないですから、未払賃金を請求した場合、嫌がらせを受けることがありますね。働いている人が正当な賃金の請求をしただけなのに、様々な不利益を受けることがあるわけです。今後もそこで働き続けたいと考えている場合は、働きづらくなるので実際上躊躇する人も少なくありません。そこで適切な方法としては、同僚の方々と話をして、一人で請求をするのではなく、みんなで請求をすることをお勧めします。それでも告げ口をされ、いじめられることはあるかもしれませんが、単独で請求するよりは、まだリスクが低い。あるいは、この会社に顧問弁護士がいる場合、「経営者を適正に指導して頂ければ助かります」と、顧問弁護士に匿名で通報する…。まともな弁護士なら、その人に不利益がないように、きちんと経営者を指導してくれます。他方で、労働基準監督署に、この会社はこういうことをしているので指導して欲しい、と告げ、なるべく自分の名前を出さずに指導してもらえるようにお願いをする。必ずうまくいくとは言えないですが、労働基準監督官が優秀であればうまく指導してくれる可能性があります。
 注意が必要な点は、賃金等の請求権は2年間で時効にかかることです。ほとんどのケースでは、退職後に未払賃金等の請求がされていますが、過去2年分しか請求できません。
 また、未払賃金を請求する場合、勤務日数や時間を示さなければならないので、証拠を残しておく必要があります。いざ請求しようと思ったら会社は土曜日に出勤してくださいなんて言った覚えはないとか、日曜日にイベントに駆り出したことなんてないと言われます。そこで、たとえば、出勤命令がホワイトボードに書かれたものなら写メを撮っておく、土日に出勤した場合でもタイムカードを押すなど痕跡を残しておくことが望ましいですね。客観的な証拠が無い場合には自分のメモや手帳でも構いません。何月何日どこに出勤など、その都度書いて残しておく。日々記録していたものであれば証拠として「信用できる」と判断される場合も十分ありますよ。    

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投稿先:info3@asatan.com「北村弁護士法律相談」まで

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