北村晴男弁護士の法律相談 2017年11月

北村 晴男
弁護士(東京弁護士会)
1956(昭和31年)年生まれ。長野県出身。
1992(平成4)年に個人事務所を開設し、2003(平成15)年に法人化。生命保険、交通事故、医療過誤、破産管財事件、家事事件など多岐にわたる事件を処理している。
弁護士法人 北村・加藤・佐野法律事務所代表。
メルマガ「言いすぎか!! 弁護士北村晴男 本音を語る」(まぐまぐ!)配信中

経済力のある主人に親権を取られたくない。どうすればいいですか?

20代の頃、仕事から帰って来ても毎日のように遊びに出掛けて、まったく家庭を顧みなかった主人。ちゃんと顔を会わすのは月に1〜2回、会話や連絡もほとんどなしというような状況でした。離婚を考えましたが、なぜか家には必ず帰って来たし、最低限の生活費はくれていたことと、子どもも2人いたので、離婚せずにいました。ところが先日、主人から「子どもが大きくなったから」と離婚を言い渡されました。さらに、主人は仕事の都合で東京への転勤が決まっているのですが、子どもたちを引き取りたいと言っています。長男は今春に進学したばかりの高校1年生、長女はまだ中学2年生で、私は絶対に子どもたちを手放す気持ちはありません。ただ、自宅近くに住む実家には寝たきりの母がいるため、私が母と子どもたちを養えない、東京で暮らした方が2人の子どもの将来が広がるとの理由から主人が子どもたちの親権を取ろうとしています。結婚してからもパートで年間80万円ぐらいは働いていましたので、コツコツと貯めていた貯金と母からの援助で、贅沢しなければなんとか生活できると思っています。経済力のある方が親権を取ると聞きますが、子どもたちの親権は主人に取られてしまうのでしょうか? 阻止したいですが、私はどうしたらよいですか?
(40代/女性)

 あなたには2つの選択肢があります。
 1つ目は、「離婚を断固拒否し、子どもたちと共に暮らす」というものです。あなたには何の落ち度もありませんから、夫からの一方的な離婚請求は認められません。これにより夫が生活費を一切渡さないということが考えられますが、その場合は家庭裁判所に夫が支払うべき婚姻費用(生活費)を決めてもらうための調停を申し立てて、調停が不成立となれば審判に移行させて婚姻費用の支払いを命じてもらうことができます。なお仮に今回夫と別居することになり、数年間経過した場合には、婚姻関係が破たんしたとして、夫からの離婚請求が認められる可能性が出てきますから注意が必要です。
 あなたはこれまで夫の言いなりになってこられたようなので、夫の身勝手な離婚要求をきっぱりと拒否することが、ご自分を取り戻す良いチャンスになるかもしれません。
 2つ目は、「十分な慰謝料と財産分与を夫から勝ち取ったうえで、子どもの親権を得て、夫から毎月相応の養育費を受け取る」というものです。
 あなたは「経済力のある方が親権を取る」と聞いておられるようですが、そんなことはまったくありません。どういう基準で親権を決めるかと言うと、お子さんにとってどちらが良いのか、子ども本位で考えます。一般的に、お子さんが小さい場合は、父親よりも母親が必要ですから、よほどのことがない限り母親が親権者となります。本件のように、高校1年生と中学2年生の年齢だと、母親の必要性は比較的小さくなりますし、お子さんには相当程度の判断力もあり、自分の意思をハッキリと表明することもできますから、お子さんの意思がかなり尊重されます。加えてそれぞれの成育環境も重要です。父親のもとであればどういう環境で育てられるか、母親のもとであればどうかなど、総合的に考慮して親権は決められることになります。お子さんの意思や双方の成育環境を裁判官が客観的に知るために、家庭裁判所の調査官制度があります。あなたが夫と話し合っても押し切られるだけですから、まず家庭裁判所に離婚調停を申し立ててください。その中で財産分与と慰謝料についてはもちろん、親権についても話し合うことになります。その際、家庭裁判所の調査官が、お子さんと親のいないところで面談をしてお子さんの本当の意思を聞くことになります。その時に調査官は、お子さんの性格や発達の程度、双方の成育環境はどうかなどを調査して調査報告書を作成し、裁判官に提出します。この調査官の報告書はとても重視されることになります。ですから、お子さんが「母親と生活をしたい」と心から言ってくれるかどうかが大きなカギになりますね。こういう場面になって突然、「私と一緒に生活したいと言ってね」と言っても、これはダメです。それまでどのように母親が子どもたちと親子関係を作ってきたか、逆に父親はどうかによって決まるということですね。それによってお子さんの意見の表明の仕方が違ってきますから。お子さんも母親とか父親を客観的に見られる年齢になっていますし、自分の将来のことも相当程度は考えられますので、ごまかすことはできません。お金がない点は、父親から養育費をもらうことで相当程度カバーできます。父親が「自分が親権を取れないなら養育費を払わない」と言ったとしても、それは通りません。離婚後、親権者がきちんとお子さんを育てられるように、お子さんのために払うのが養育費ですから。
 養育費の金額を算定するにあたってはネットで家庭裁判所のホームページを見てください。双方の収入がどれくらいでお子さんが何人ならいくらなど、目安は一般の方でも知ることができます。養育費の額が決まらない時は調停をして最終的には審判という形で家庭裁判所が決めることになります。適正な額を家庭裁判所が決めてくれますので、父親に十分な経済力がある場合は、母親はそんなに心配することはありません。
   

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投稿先:info3@asatan.com「北村弁護士法律相談」まで

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