2019年10月07日
タウン情報誌asatanの1992年創刊号から5回に渡って連載され、回を追うごとに話題となった人気シリーズ【秘密結社 黒薔薇を探せ!】がweb版で復活! 40代以降の人々の記憶に今も鮮明に残るノンフィクションを思わせる迫力で、黒薔薇と編集部との戦いを綴った27年前の物語。
前回、最後に、我々は【黒薔薇】ら対して挑戦状を叩きつけた。
そして、発売後の6月24日、またさらに【黒薔薇】からの警告状が編集部に届いた。
いかにも大げさに新聞紙を切り貼りし、犯罪組織のつもりでいるのだが、実にくだらない。
内容も「攻撃を加える」などと、脅しているつもりだろうが、前号に記載した“画びょう攻撃”を考えると、今回の攻撃もたかが知れているのではないかと思われた。
すると、その翌朝【黒薔薇】かから一本の電話が入ったのである。
電話を受けたのは、『あさたん編集部の花』と呼ばれているメルモちゃん(仮名)である。
彼女は、その電話の内容を、次のように切実と話してくれた。
「ダックスボイスって言うのですか? それを使って声を変えているんですよね。
気持ち悪かったですよ。
ヘッヘッヘッなんて笑うんですから…。
この人頭おかしいんじゃないかって思いました」
内容はちょっとシャレにならないものだった。
「編集部に爆弾を仕掛けた。
昼の12時キッカリに爆発するからな!」
と言うのだ。
そんなハズはないと思いながらも、いちおう一通り編集部内を全員で探してはみた。
やはり、それらしき物は見当たらない。
そして12時がやって来た。
どうせイタズラだろうと思ってはいるが、みんな緊張していた。
そして時計の針が12時を回って少し経った時、突然玄関の方で
と大きな音が鳴った。
みんな一瞬〈ドキッ〉としたが、すぐに2人のスタッフが玄関へ向かって走った。
我が編集部はビルの9階に位置するのだが、スタッフがエレベーターの前に着いた時には、すでにエレベーターは6階まで降りていた。
1人が非常階段で追いかけたが、5階ぐらいまで降りた時に、ビルの駐車場から一台の車が飛び出した。
白のソアラである。
残念ながら、ナンバープレートは見えなかった。
その2人が戻ってきた時、別のスタッフが玄関で爆発音の正体を見つけていた。
それはなんとクラッカー。
玄関ドアの新聞受けの中でクラッカーが鳴らされていたのである。
確かにしょーもない、いかにもオタクっぽい手段ではあるが、計画性といい、なかなか手際の良さが感じられ、編集スタッフの誰もがやられたという気持ちになっていた。
すぐにあさたん会議が開かれた。
みんなイライラを抑えきれない様子である。
会議ではもちろん【黒薔薇】と対決する方法が議論されたが、ネックになっているのが、相手は、こちらの所在地や電話番号を知っているが、こちらは相手のシッポすら掴んでいないという事である。
そこで、何とか【黒薔薇】を誘い出す作戦を考えた。
その作戦とは『学生のフリをして、伝言板に電話番号を書き、ターゲットとなる人物の写真を渡す』というものであり、写真を受け取りに来たヤツを撮影し、後をつけて相手の所在地を突き止める作戦である。
作戦は、翌日からすぐに開始された。
JR旭川駅の伝言板に我が編集スタッフ おじ造(仮名)の電話番号を記入。
その夜スタッフ全員で、おじ造の家に集まり、電話を待った。
22時7分【黒薔薇】からの電話が入った。
テープレコーダーを用意し、相手の声を録音しようとしたが、例のダックスボイスを使っており、まったく役に立たなかった。
しかし、こちらの思惑通り、誘い出しに成功した!
写真の受け渡し方法は、宮下通りの『東本願寺』である。
「鳥居をくぐって、すぐ左にある木に張り付けておけ」との指示があった。
約束の時間に、写真の入った封筒を指示通りの木に貼り、おじ造はその場を去ったが、残りのスタッフは近くに身を潜め【黒薔薇】が現れるのを待った。
約10分後。
白のソアラがお寺の前に止まった。
一昨日、編集部のあるビルから飛び出して行ったあのソアラである。
ナンバープレートは用意周到にも、黒いビニールテープが貼られており、見ることができない。
車から出てきた男も帽子をかぶり、サングラスをかけている。
運転席の男も同じである。
木に貼り付けてあった封筒を男が取り、助手席に乗り込むと、車はすぐに発進した。
我々もその後に続き車を走らせた。
ソアラは、そのまま神居に向かって走り、5分ほど行ったところで急に車を止めた。
我々もソアラを少し追い越したところで車を止め、様子を見ようとして後ろを振り向いた。
その時、ナンバープレートのテープを剥がそうと、ソアラから降りてきた男と目が合ってしまったのだ。
その男は、すぐさま車に戻り急発進させた!
我々も追いかける!
しかし、ここで我々は重大なミスを犯していることに気がついた。
我々が乗っている車はミラだったのである。
相手はソアラで、しかも改造車。
追いつくハズはなく、みるみる離されるばかり。
信号3~4個目で、ついに我々は赤信号につかまってしまった。
これで相手の所在地を知る術を失ってしまった。
でも我々も諦めはしない!
相手とソアラを写した写真を引き伸ばし、「この車を知りませんか?」と各大学の掲示板に貼り付けたのである。
各大学に手配ポスターを貼ってくれたのは、前回も投じようしたアルバイト学生のY君である。
Y君自身も、自分の友人を駆使して【黒薔薇探し】に協力してくれた。
また『情報提供者 先着5名様にディスコ〇〇〇の無料入場券プレゼント』としたためか、それらしき2人、それらしき車1台の情報を入手することができた。
そして、2人と1台を結びつけるいとを探し出そうと調査を開始した次の日、とんでもない情報が編集部に飛び込んできた!
なんと、学生アルバイトのY君が【黒薔薇】に襲われたというのである…。
[Part.3]へ、つづく。
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