2019年11月03日
タウン情報誌asatanの1992年創刊号から5回に渡って連載され、回を追うごとに話題となった人気シリーズ【秘密結社 黒薔薇を探せ!】がweb版で復活! 40代以降の人々の記憶に今も鮮明に残るノンフィクションを思わせる迫力で、黒薔薇と編集部との戦いを綴った27年前の物語。
【黒薔薇】からの電話が切れてから、すぐ我々はエレベーターで駐車場に向かった。
ミラは一体どんな姿になっているのだろうか。
我々は不安だった。
駐車場に着いてミラの姿を見て愕然とした。
白のボディに真っ赤なペイントで、いたるところに落書きされていたのである。
さらに、いらずらはそれだけではなく、フロントガラスに食いカスのガムが十数個ベッタリと貼り付けられていたのだ。
この時ばかりは、さすがに頭にきた‼︎
しかし元通りにしないと仕事にならないので、とりあえず洗うことにした。
まずフロントガラスのガムを何とかしないと、洗車場へ移動するワケにもいかないので、まずガムを取る。
しかし、やられた事のある人ならわかると思うが、なかなか取れないのだ。
必死になって汗をかきながら取っていて、ハッと気付くと、ワイシャツやネクタイに赤いペイントが付いてしまっているではないか。
まさに怒りの頂点である。
何とかガムを取り洗車場へ向かう。
これは水性ペイントなので割と簡単に洗い流す事ができた。
それからも奴らのいたずらは留まる事がなかった。
営業マンのマイケル君(仮名)が打ち合わせのために車を停めて、30分ほど戻ってみると、彼の車には7枚のヌードポスターがベタベタと貼られていたのだ。
彼は「お客さんの前で、とんでもない恥をかいた」と怒っていたが、ムリもない話である。
さらに、今度はデビット君(仮名)が営業に出掛けようと車を発進させた。
しばらくは気が付かなかったが、信号待ちのときに妙に後ろの車が車間距離を開けて止まる事に気がついた。
ルームミラーで後ろの車の人たちを見ると、どうも自分の車を見て笑っているように思える。
デビット君は、道路脇に車を停め、何があるのか確かめに車を降りた。
すると…
何とフックにロープが括り付けられていた!!
そのロープの先には女性用の下着、ブラジャー2つとショーツ2つが結びつけられていたのである。
デビット君は、このままの姿で買物公園近くにある会社から永山まで走っていたである。
読者の中にも、この情けない姿の車を見た方がいるのではないだろうか。
ちなみに9月22日の出来事である。
いたずらはその後も続き、内容も段々エスカレートしていった。
そしてお客様との約束の時間に遅れたり、行けなくなったりと、仕事上での支障をきたし始めてたのである。
郵便受けにも時々いたずらされており、ゴムでできたクモをメルモちゃん(仮名)が掴んでしまって、驚きのあまり泣いた事もあった。
こうなってくると、いくら徹底抗戦の意を決しても「何とかして欲しい」と言う声が編集部内に出始めるのも当然である。
このままでは…と、みんなが考え始めた頃、【黒薔薇】から封筒が届いた。
封筒の中身は2枚のワープロ用紙。
1枚目には「我々の調査から完全に手を引かないと、次の文章を貴社のスポンサーに送りける」とだけ書かれていた。
そして2枚目には「今スグ、アサヒカワタウン情報トノ、トリヒキヲ停止セヨ。サモナイト貴社ニクナイコトガオキルゾ!!」と書かれていた。
これはもう決定的であった。
すぐにスタッフ全員を招集し、会議を行なった。
我々の取れる行動は一つしかなかった。
本当に無念ではあるが、我々はついに【黒薔薇】に対して降伏する決定を下したのである…。
今までたさんの応援の封書、ハガキを送って頂いて本当にありがとう。
ぜひ、正体を解明してくださいという、多くの声を無視する結果に終わり、本当に申し訳なく思っています。
しかし、スポンサーにまで被害が及ぶことだけは避けなくてはなりません。
ましてや取り引きを停止されると、あさタンそのものが無くなってしまうので、どうかわかって頂きたい。
後は、皆様が【黒薔薇】に仕事を依頼する事がないよう切に願うばかりであります。
完
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