2019年11月02日
弁護士に相談するようなトラブルや問題なく暮らしたい。でも、何かあったときのために知っていて損はない! そんな身近で起こったお悩みに、テレビなどでも活躍している【北村晴男弁護士】が答えてくれた、身近なお悩みの解決法&アドバイスを紹介します。
慰謝料には、入通院慰謝料と後遺障害慰謝料があります。
その火傷について通院治療されたのであれば、入通院慰謝料が発生することは間違いありません。
入通院慰謝料は、交通事故の損害賠償の実務によって確立された考え方で、どのくらいの期間入院または通院したか、という事情から、定型的に認定される慰謝料の額です。
怪我による苦痛を金銭に評価するという作業を個別に行なうのは不可能に近いので、入通院期間という客観的事実を基に慰謝料額を算定することにしたのです。
K美さんの場合は、入院せずに、一定期間通院した結果、症状固定となるものと思われます。症状固定とは、傷病の症状が安定し、それ以上治療を行なっても治療効果が期待できなくなった状態をいいます。
症状固定に至るまで通院していた期間を通院期間といいます。
たとえば1ヵ月間通院して症状固定になったのであれば、裁判上認められる慰謝料は28万円ぐらいが目安です。
2ヵ月間通院したのであれば52万円、3ヵ月間通院したのであれば73万円、4ヵ月なら90万円と、期間が長くなるに従って増えていきます。
期間に比例して増えていくわけではありませんので気を付けてください。
ちなみに12ヵ月通院した場合の入通院慰謝料は154万円程度が目安です。
火傷ということですから、そんなに長く通院はされていないかもしれませんね。
例えば2ヵ月間通院したのであれば52万円ということになるでしょう。
もう一つは、後遺障害慰謝料です。
治療によっては治らない機能障害や痛みなどが残ることを後遺障害と言います。
後遺障害慰謝料というのは、後遺障害に対して認められる慰謝料です。
本件に則して言うと、醜状痕(みにくい傷あと)が残りそうですので、どの程度かによりますが「ちょっと酷いよね」と感じるようなものであれば、醜状痕という後遺障害が残ったということになります。
ただし、醜状痕というのも様々で、ものすごく酷い状態のものから、ちょっとしたものまで幅があります。
いろんな基準がありますが、K美さんの場合は足に1㎝ほどの火傷の痕が残って色素沈着するということですね。
後遺障害には、様々な程度があり、その程度によって等級が決まっています。
どの等級にあたるかを認定することを等級認定というのですが、第1級から第14級まで等級がわかれています。
例えば第1級の後遺障害が残ると裁判上認められる慰謝料額はおよそ2800万円。
それに対して第14級という1番軽い後遺障害になると後遺障害慰謝料はおよそ110万円となります。
K美さんの場合は、足に1㎝ほどの火傷痕で色素沈着ということですから、可能性があるのは、1番軽い第14級です。
14級に該当するのは、「下肢の露出面に掌(てのひら)の大きさの醜い痕を残すもの」です。
本件は、火傷で色素沈着ということですが、掌の大きさにはあたらないようです。
そうすると、どの等級にもあたらない可能性が高いです。
どの等級にもあたらないと後遺障害慰謝料が1円ももらえないかというと、そうでもないです。
裁判例では、程度とか中身を確認して1番軽い14級に該当しないようなものでも、「ちょっと気の毒だよね」という場合には、いくらかの後遺障害慰謝料を認めている場合もあります。
本件の相談者は女性ですから、例えばスカートなどを履いて足を露出したときに1㎝ほどの火傷の痕が色素沈着していて、それがすごい辛いということがあるかもしれません。
普通の人の感覚として「これ、ちょっと気の毒だなぁ」「これ、ちょっと恥ずかしいよね」「つらい思いをするよね」と、誰でも言えるような状況であれば、例えば14級相当で110万円ですから、この半額程度とか、三分の一程度とかの後遺障害慰謝料が認められる可能性もあります。
北村 晴男
弁護士(東京弁護士会)
■1956(昭和31年)年生まれ。長野県出身。
■1992(平成4)年に個人事務所を開設し、2003(平成15)年に法人化。生命保険、交通事故、医療過誤、破産管財事件、家事事件など多岐にわたる事件を処理している。
■弁護士法人 北村・加藤・佐野法律事務所代表。
■メルマガ「言いすぎか!! 弁護士北村晴男 本音を語る」(まぐまぐ!)配信中
この記事のキュレーター
出典:asatan