2019年10月29日
弁護士に相談するようなトラブルや問題なく暮らしたい。でも、何かあったときのために知っていて損はない! そんな身近で起こったお悩みに、テレビなどでも活躍している【北村晴男弁護士】が答えてくれた、身近なお悩みの解決法&アドバイスを紹介します。
まず、なぜ違法ダウンロードが処罰されることになったのかについて説明します。
通常、音楽や映画はCDやDVDとしてお店で売られたり、有料でネット配信されたりしており、このCDなどの代金やネット配信料が、それを作った作者(アーティスト)などに収入として入ります。
この収入は、さらに新しい作品を作ったり、アーティストの卵を育てたりすることなどに使われることで、より豊かな文化が生まれることになります。
ところが、海賊版の音楽や映画がダウンロードされると、アーティストなどにはまったくお金が入らず、新しい作品を生みだしたり、次世代のアーティストを育てたりすることができなくなります。
このように、違法ダウンロードは文化の発展を妨げるという意味で社会に大きな悪影響を与える行為です。
そこで、特にCDやDVDとして売られたり、有料でネット配信されている音楽や映画の海賊版を、海賊版であると知りながらパソコンなどにダウンロードすることについては、刑罰の対象とすることとされたのです。
本件では、レコード会社が公式にアップしているライブ映像を、編集・加工して自分のSNSなどに投稿している人がいる。
まず、この行為が違法であることは間違いありません。
ミュージシャンのライブ映像というのは、それを撮影して仕上げている人がいるわけで、ライブ映像が完成した段階で、直ちにその人に著作権が発生します。
その著作権というのは、著作権法で保護されているのですが、勝手に(著作権者の許可なく)編集や加工をされないという権利です。
これは著作者人格権のひとつで「同一性保持権」というものです。
だから、勝手に編集や加工をすれば、この同一性保持権を侵害する違法な行為になります。
さらに、それをSNSなどに投稿するという行為は、著作物を利用する行為となり、これも著作権侵害になります。
「違法行為をして作られている映像なのではないかと思いつつ」ということなので、相談者の方も少し疑問は持ちつつも、「違法」だと分かっていると言っていいでしょう。
まず、違法だと分かっていながらダウンロードした場合について検討します。
2010年に著作権法が改正されて、元来は私的な利用のためだったら著作物をダウンロードしても著作権法違反ではなかったのですが、最初に述べた理由から、特別に規定が設けられました。
有償著作物等(本来有料で提供されているもので、録音され、または録画された作品)を違法コンテンツと知りながらダウンロードすると、2年以下の懲役もしくは、200万円以下の罰金に処せられます。
まさかダウンロードするだけで犯罪になると知らない人もまだ多いようですが、気を付けてください。
これについては遠藤憲一さんを起用した面白いCMも流されていますよね。
今、一生懸命周知しているところですね。
ちなみに「違法なコンテンツをダウンロードすることがまさか犯罪になるとは知りませんでした」という言い訳は通用しませんので、気を付けてください。
ところが、本件のご質問は、違法に作られた映像だと思いつつ、他人がアップした映像を見ているだけで違法になるのかということ。
これは現段階では違法ではありません。
将来的にそこまで違法とされたり、犯罪行為として規定されるかについては疑問です。
ダウンロードせず、見ていただけだと、それはあまり形跡も残らないでしょうし…。
他方、ダウンロードして自分のコンピューターに取り込むわけではないけれど、お気に入りやブックマークなどに登録をしてすぐに見に行けるようにする… そのような行為をすると繰り返し見やすい状況になる。
これでは困るということになれば、もしかしたら、そこまで処罰範囲を広げるべきだという考え方が今後生まれてくるかもしれませんよね。
ただ、今の段階ではダウンロードという行為がないと違法とまではされていません。
将来的には処罰される行為が増えるかもしれないので、もしそうなった場合でも「知りませんでした」では済まないので注意しておくことが必要です。
北村 晴男
弁護士(東京弁護士会)
■1956(昭和31年)年生まれ。長野県出身。
■1992(平成4)年に個人事務所を開設し、2003(平成15)年に法人化。生命保険、交通事故、医療過誤、破産管財事件、家事事件など多岐にわたる事件を処理している。
■弁護士法人 北村・加藤・佐野法律事務所代表。
■メルマガ「言いすぎか!! 弁護士北村晴男 本音を語る」(まぐまぐ!)配信中
この記事のキュレーター
出典:asatan