建物の基礎や壁などをコンクリートで造る際、それを流し込む「器」となる型枠を組み立てる職業。板やパイプで型枠を組み、コンクリートが固まったら解体します。
2021年09月15日
巧みな技術で私たちの暮らしを支える職人たち。経験を重ねるごとに魅力を増す、技能の世界を紹介します
建物の基礎や壁などをコンクリートで造る際、それを流し込む「器」となる型枠を組み立てる職業。板やパイプで型枠を組み、コンクリートが固まったら解体します。
父が型枠職人でしたが、どんな仕事か深く知りませんでした。大工といえば家を建てるものだと思っていて、就職した当時も「どんな仕事をするんだろう」という状態でした。雑用から始め、「目で見て仕事を覚えなさい」と言われました。
紙の図面から立体的な構造をイメージして、自分で一から造る仕事です。図面どおりにいかないときもあり、現場で実寸して計算する対応力が求められます。鉛筆で印を付ける「墨出し」が、建物全体の出来栄えを左右します。型枠がずれたらコンクリートを削ることになるので、責任は大きいです。
現在、旭山動物園で建設中の「えぞひぐま館」です。いろいろな角度から動物を観察できるようにするため複雑な設計で、梁や壁が斜めに交わり、床が傾斜しています。斜めの部分は図面だけでは計算できない難しい造形なので、熟練の技と職人の目が必要です。通常、コンクリートを流した後は石膏ボード等で隠れてしまいますが、この現場はコンクリートの打ちっぱなしなので、仕上がりが直接お客さんの目に触れます。美しく仕上がるよう、緊張感を持って臨んでいます。
型枠を解体した後、思いどおりにコンクリート面ができた瞬間は、やりがいを感じます。住宅の基礎やマンション、ビルなど、多くの現場を経験してきましたが、一つとして同じ現場はありません。形として残るので、完成した建物を見るとうれしく思います。
一人前の職人になるのに10年、現場の責任者である職長は15年かかるといわれており、ステップアップをイメージしやすい仕事です。スキルを身に付けると、任せられる仕事が増え、待遇も上がります。私の若い頃と違い、今は仕事を早く覚えてもらうために、基本からしっかり丁寧に教えています。担い手が減る中、若手は貴重な戦力です。
工務店や専門の会社への就職が一般的です。民間の職業訓練施設で学ぶこともでき、道内では札幌市建築業組合の札幌高等技術専門校があります。国家資格の型枠施工技能士などを取得する人もいます。
この記事のキュレーター
佐藤工務所
型枠職人薄田典仁さん
高校卒業後に就職し、29年間型枠大工の技術を培う。現在、職長として旭山動物園のえぞひぐま館(仮称)建設現場を統括。