2019年12月22日

webで復活! 秘密結社【黒薔薇】リターンズ!後編

タウン情報誌asatanの1992年創刊号から5回に渡って連載され、回を追うごとに話題となった人気シリーズ【秘密結社 黒薔薇を探せ!】その3年後に前編、中編、後編として連鎖されたリターンズがweb版で復活!黒薔薇と編集部との再度の戦いを綴った物語の本当の最終回です。


webで復活! 秘密結社【黒薔薇】リターンズ!中編 | 旭川のことならasatan

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タウン情報誌asatanの1992年創刊号から5回に渡って連載され、回を追うごとに話題となった人気シリーズ【秘密結社 黒薔薇を探せ!】その3年後に前編、中編、後編として連鎖されたリターンズがweb版で復活!黒薔薇と編集部との再度の戦いを綴った物語。

↑↑前回までのあらすじ↑↑

第五の災い。吐水怒り大爆発!

壬生谷がウ●コのワナにハマってしまってから2週間というもの、黒薔薇からの災い、手掛かりは皆無であった。
とはいっても、我々にとっては【黒薔薇】に関する捜査のみを仕事にするわけにはいかない。

捜査は勤務時間外に行なっており、ただでさえ少ない締め切り前の睡眠時間をより少なくさせる要因にもなっていたのだ。

この日は日曜日。
吐水は久し振りの彼女とのデートに心を踊らせていた。
通常業務と【黒薔薇】の攻撃の板挟みに、最も疲労していたのは紛れもなく吐水だ。
それだけに唯一、心が安まる彼女とのデートは彼にとって、かけがえのないものであった。

休日のカフェテラスでのブランチを彼女と楽しみ、映画を鑑賞した後、ロマンティックな気持ちになるために〇▽公園内の貸しボートで、「愛のメモリー」を歌う…。
確かにありがちなデートではあるが、そんなささやかな時間が日夜、【黒薔薇】と戦う我々のハートをやさしく包み込んでくれるものなのだ。

吐水は、その予定通り「愛のメモリー大作戦」を遂行すべく、乙女心のように揺れるボートに片足を入れようとしていたその時のことだ。

「ねえ、そこのお兄ちゃん、あそこで女の人が泣いてるよ」
気が付くと、鼻タレ小学生が吐水の袖を引っ張りながらこう話しかけていた。

だが、身に覚えのない吐水はガキの戯言など気にもとめない。
なおもしつこく歩み寄る小学生。

「あの女の人、子どもができたんだって!お兄ちゃんの子どもだよ!」
「何⁉…こ、こ、子どもぉ⁉」
驚きのあまり、声にもならない吐水。

「ねえ!ちょっと!どういうこと?」
彼女も突然のハプニングに、驚きと怒りが入り交じり、錯乱状態になっている。
…俺に子どもだと?そんなバカな⁉

俺は彼女を愛しているのだ。
…確かに身に覚えはあるが、俺はいつもキッチリ腹に出している!しかも俺のカウパーはとても薄い!そんなコトを言う女は誰なんだ!

吐水はワナワナと怒りに震えながらこのように心の中でこう叫んだ。
「いや、これは何者かの陰謀なんだよ…」

そんな言い訳など通用するはずがなかった。
なにしろ彼女は【黒薔薇】のことなど知る由もないのだ。

「…陰謀ですって!ふざけるんじゃないわよ!ビシッ!バシッ!」
怒った彼女は雷電のごとく吐水にオーフクビンタを喰らわすと、スタスタと足早に去っていってしまった。

唖然とした吐水は、ただ、呆然とその後ろ姿をぼんやり眺めるしか術がなかったという…。

 

後でわかったことだが、小学生の手には500円玉がしっかりと握られていた。
──買収されていたのだ。
休日のデート中にまで足を運んでくるゲリラ攻撃の前に、我々はビクビクしながら様子を伺うことしかできない状況に追い込まれていた。

そんな6日後の土曜日のことである…。

ピンポンダッシュ大作戦

田尾野の趣味は映画鑑賞だ。
仕事を終え、帰宅した田尾野は、例によって休日前の夜更かしを敢行しようとしていた。

ブランデーを傾けながら白いガウンに身を包む…。
田尾野はその日、にっかつロマンポルノの最高峰の作品として誉れ高い「日米スワップ合戦」というビデオを楽しもうとしていた。

セッティングはOKだ。
あとはビデオデッキにテープを挿入するだけである。

「ピンポーン、ピンポーン」
誰だ?こんな時間に。
俗にいう「招かざる客」というヤツだろう。
時計の針は午前零時を指しているというのに。

「誰ですか?」
玄関に立ち、ドアを開けるが誰もいない。
不審に思った田尾野は、外まで出て、人の気配を確認する。
しかし、その気配はなかった。

「チッ!こんな時間にピンポンダッシュかよ!」
そんなひとり言を吐き捨て、部屋に戻り、ビデオの続きを見ようと腰を下ろす。

10分後、一回目の濡れ場だ。
高鳴るクライマックスシーンに、彼の●▽※も最高潮に達していたその時である。

「ピンポーン、ピンポーン」
またしてもベルが鳴る。
一瞬の快楽も興ざめしてしまうほどのバッドなタイミングにいらだつ田尾野。
今度は一体誰だ?

田尾野が玄関に出るとまたしても人影はない。
もっとも、普段なら「ふざけんなよ!」とブーたれ、部屋に戻り、自慰行為にふけるところであろうが、今日の田尾野は別だった。

日ごろの攻撃と先日の吐水に対する【黒薔薇】の攻撃を思い出し、「まさか?」と思った田尾野は風のように部屋を飛び出したのだ。

このイタズラ、【黒薔薇】だな?俺の家へ攻撃してくるとはいい度胸だ!
もしそうなら、やつらはこのまま終わるようなタマじゃねえ。
再び、ピンポンダッシュをしかけに来るに違いない!

そう判断した田尾野は家の前の街路樹の物陰に潜み、彼らの攻撃をじっと待つことにした。

30分後、怪しげな黒い乗用車がアパートの前にゆっくりと停まった。
窓にはスモークシールドが貼られ、車内の様子はわからない。
だが、5分経過しても怪しげな車内の人影はいっこうに動く気配はなかった。

「…なんで動かないんだ?もしかして、このアパートの住人の友だちとか…?」
田尾野が自分の勘違いかと思った瞬間、窓がゆっくりと開きはじめた。

「やった!ツラを拝めるチャンスだ!」
すると、車の主は窓からニョキッと腕を出しこちらのほうに何かを向けている。

「…あれは?ま、まさか!」
田尾野が気付いたときにはもう遅かった。
花火だ。
連発花火、爆竹、ねずみ花火…、ありとあらゆる花火セットの中身が田尾野のほうへ向かって来たのだ。
木に身を隠すが、ほとばしる赤や青の火花が田尾野の花先をかすめてゆく。

 

「ちょ、ちょっと!待ってくれよ!」
田尾野がひるんだ瞬間を彼らは見逃さなかった。
「ブォーン!」爆音をあげながら立ち去る車。

「待てー!!」
田尾野は一目散でその車を追いかける。
だが、車対人間、カール・ルイスでも勝つのは不可能だ。

しかし、ここで【黒薔薇】にも誤算が生じた。
田尾野の視力は自称3.0.
サンコンなみの驚異的視力なのだ。
当然その車のナンバーを見逃すはずがなかった。

「旭川さ〇▽◇□!やった、ついに【黒薔薇】の動かぬ証拠をつかんだぞ!」
キッチリとナンバーを確認した田尾野は災いの洗礼を受けたのにもかかわらず心の中には晴れ晴れとした何かがあった。

「明後日こそヤツラの息の根を止めてやる!」
そう心に誓った田尾野はビデオ鑑賞の続きをするため、部屋にスキップしながら舞い戻った。

【黒薔薇】の正体

月曜日、田尾野と吐水は陸運局に赴き、ナンバーの住所と所有者名を入手することに成功した。
意外にも簡単に調べることができて驚くが、さらに驚くべき事実が明らかになったのだ。

田尾野の目の前に見覚えのある名前が飛び込んだ。
K君だ。
住所登録もK君のアパートになっている。

「ま、まさか!K君が黒薔薇…?」
「じゃあ、田尾野さんの車が襲われたときは…?」

「わからない。それは誰かを操っていたんだろう。だけど、俺に向かって花火をブッ放してくれやがったのは紛れもなくK君だよ」
「つまり、本当の黒幕は黒田とおう男ではなく、K君ということでは…?」
ふたりは顔を見合わせた。
まちがいない。
確信に満ちた表情で、彼らの災いに対する作戦を練った。

最後の災いと、あっけない結末

その日の午後1時、やはり現れた。
我々は来たるべき最後の聖戦に備えて、車の中で張り込みをしていた。
待機中の田尾野から吐水に無線が入る。

「黒塗りのスモーク車が来た!よし、合図をしたら、彼らの注意を引いてくれ。俺は車を横づけして、逃げ道を塞ぐ!」
「了解!」

我々の作戦は完璧のハズだった。
しかし、物事はすべてうまくいく、とは限らないものなのだ。
これほど彼らの行動が常軌を逸しているとは!

なんと彼らには我々が待ち構えていることなど、お見通しだったのだ。
車を停めると我々の動きを観察している!
しばし続く硬直状態に息を飲む瞬間。

すると、3人全裸のサングラス男が車から飛び降りた。
日常からかけ離れた光景に不覚にも見とれてしまう調査団のふたり。

恐る、恐る、田尾野が接近する。
するとどうだろう、今度はイキナリ狂ったように会社の前で踊りだすではないか。
車からはズンドコ、ズンドコしたラテン系のビートが鳴り響いている。

コサックダンスにリンボーダンス、路上が一瞬にしてホモ・バーのショータイム状態に陥る。
何をやっているのだと見物人も大勢集まってきた。

 

「危険だ!客を調子に乗らせ、騒動を巻き起こすつもりなのでは…⁉」
アセった吐水はその一行を止めに入る。

「君たち、何をやっているんだ!」
だが、その集まり自体を群衆たちはあさタンの催し物だと勘違いしているのだ。

「いや、何すんのさ!私たち楽しんでるのに邪魔することねーべさや!」
ギャラリーにまでツッ込まてしまい、ただ困惑している吐水。
これには見事に裏をかかれた。
一般人を味方につけることで、我々が手だしできないようにするとは!

「黒薔薇です!皆さん危険ですので離れてください!」
などと、どうしていえようか。
そんなことをすれば一般大衆へ【黒薔薇】の毒牙が向けられることは明らかであり、それだけは避けなけらばならない。

およそ3分のショータイムを終えると、彼らは何ごともなかったような素振りでギャラリーの拍手の中、車にサッと乗り込むと再び窓を開け、調査団に向かってこう叫んだ。

「ハハハ!とうとう我々を捕まえることはできなかったな!楽しかったよ、諸君。…我々はこの旭川を立ち去るが、またいずれ会うことになるかもしれん。楽しみに待っていろ!」

ゆっくりと走り出す【黒薔薇】の車と、明らかにK君のものだとわかる笑い声。
多くの謎を残しているのにもかかわらず、我々は「終わった」という安心感と、まだ、これから何かが起こりそうな不安という、別の緊張感に苛まれながらも、彼らの車をただ見送っていた。

エピローグ

遠い記憶のような【黒薔薇】の7つの災い。
彼らは何のために我々をターゲットに絞り込んできたのか?
3年前に続いて、再び煮え湯を飲まされた我々にそのことがわかるはずもない。

ただ、ひとつ言えるのは彼らは3年前とその体質をかなり変えているということだ。
一般大衆に被害を持ち込むような、卑劣な手段をとるわけでもなく、単に我々とのイタチごっこを楽しんでいるフシがあった。

彼らと戦った一ヵ月ものあいだの記憶が、なぜか懐かしく、心地好く思えるのはそのせいかもしれない。
【黒薔薇】、いやK君は再び、我々に挑戦を挑んでくるかもしれない。
その時は、また快く彼らの災いに翻弄されてやろうじゃないか。

次に彼らのターゲットになるのは、我々ではなく、他の誰かなのかもしれないが……。

おわり


この記事のキュレーター

asatan公式アカウントです。
旭川とその周辺地域に関連するイベント、グルメ、観光、くらしに役立つ情報などなど、ドシドシご紹介しますのでお楽しみに!