2019年12月25日

【産科婦人科医が答える体の悩み相談】0歳児教育はするべき?

旭川市の【豊岡産科婦人科】で院長を務める【久田孝司先生】に登場していただき、さまざまな身体の悩みにお答えしてもらいます。※この記事は2018年5月に発行されたタウン情報誌『asatan 6月号』で掲載したものです


Q.0歳児教育はするべき?

最近「0歳児教育」という言葉をよく聞きます。私にも生後8ヵ月の乳児がいますが、0歳児教育をすべきでしょうか。何か特別なことをすべきなのでしょうか。迷っています。(相談者:30代/主婦)

赤ちゃんは生後2ヵ月頃から“人間らしい脳”に変わる

赤ちゃんの脳の発達については、最近様々なことが分かってきました。赤ちゃんの頭に光トポグラフィーという計測装置を着け、刺激に対して脳がどう反応するか、などを調べたためです。

一般に赤ちゃんの脳は、「生後3ヵ月で成人の脳への基本的な構造が確立する」といわれていましたが、それが正しいということや、

出生直後の赤ちゃんの脳は本能に従って反応しますが、生後2ヵ月頃にその反応が一時的に低下することも分かってきました。これは、それまで本能を優先して反応してきたのが、大脳によって反応がコントロールされ出したせい、と考えられています。

つまり生後2ヵ月頃から、赤ちゃんは【人間らしい脳に変わって行く】ということです。

脳の発達には「胎児期の環境」も影響する、という考えも

だから、この頃から何らかの教育を、ということでしょうが、その効果は、現在のところはっきりしません。将棋の藤井聡太六段が典型ですが、幼い頃から特別な訓練をしていれば、その道で成功する確率は高くなると思います。

ですが、すべての子どもがそうなるわけではありません。むしろ圧倒的多数は、それほどの成功を見ないといえるでしょう。

最近の知見からは、赤ちゃんがお母さんの【おなかの中にいる頃】から、【様々な環境により脳の発達状況が異なる】のではないか、とも考えられています。そうなると0歳児教育どころか、胎教まで勧められるようになるかもしれません。

本当にそうでしょうか。

胎児に音楽は届かないが、お母さんのリラックスには◎

20年ほど前、旭川の音楽家とともに、胎教CDを作ったことがありました。

その頃、世の中は胎教ブームで、やれモーツァルトが良い、バロック音楽が良いなどいわれていましたが、そもそも、お母さんの子宮の中にいる胎児に、音楽など届くわけがないのです。

皮膚・脂肪層・筋肉・腹膜、さらに子宮の筋肉、羊水に包まれた胎児に、まともに音は届きません。胎教音楽の有用性は、それを聴いた【お母さんがリラックス】し、副交感神経優位となることによって、【ノルアドレナリン】というホルモンの放出を促すことにあります。

その面で、胎教音楽は赤ちゃんにとって良いもの、といえるでしょう。お母さんがリラックスできるのであれば、何もクラシックでなくても良いのです。ロックでもポップスでも良いのです。

 

さいごに

赤ちゃんの脳については「発達は失うことでもある」という言葉があります。

生後半年頃にはどんな顔も見分けることができますが、9ヵ月頃には見慣れた大人の顔しか区別できなくなるとの実験結果もあります。

発音についても同様で、英語のlとrの発音を、初めはできていても、成長に伴って日本語の発音しかできなくなる、ともいわれています。

ですから、あまり早くに教育を施しても、それが本当に身につくのか、【まだ十分に分かっていない状況】です。あまり焦らず、のんびり子育てした方が、私は良いのではないかと思います。

【豊岡産科婦人科】基本情報

豊岡産科婦人科
院長:久田孝司
住所:旭川市豊岡4条1丁目1-10
電話:0166-31-6801

出典:asatan

 

※コラムの内容については、筆者の見解を尊重したものであり、すべての読者に当てはまるとは限りません。


この記事のキュレーター

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