2020年01月07日
旭川市の【豊岡産科婦人科】で院長を務める【久田孝司先生】に登場していただき、さまざまな身体の悩みにお答えしてもらいます。※この記事は2017年5月に発行されたタウン情報誌『asatan 6月号』で掲載した記事を再編集したものです
先日、妊娠していたことがわかった友人が、夜中に腹痛と出血があり、病院に入院しました。お腹の赤ちゃんは大丈夫なのでしょうか?
友人は30代後半で、妊娠したことをとても喜んでいたので心配です。
(相談者:30代/主婦)
A. おそらく切迫流産なのだと思います。切迫とは差し迫った危険がある、という意味です。つまり、【放っておけば流産】してしまいそうな状態ということです。
流産とは妊娠21週の終わりまでをいい、それ以降は早産といいます。この違いは【赤ちゃんが出ても生存が可能か】ということです。
流産ではまず助かりません。そのため、赤ちゃんの蘇生も積極的には行ないません。一方、早産では赤ちゃんが助かる可能性があるのです。
流産のほとんどは、妊娠2ヵ月か3ヵ月の妊娠初期に起こります。週数でいえば5週から11週あたりです。
5週以前の流産では、生理が遅れて、少し多めの出血があったな、と思う程度で終わります。妊娠と自覚できないことも多いのです。
切迫流産の症状は様々ですが、まず、お腹が重く感じられ、痛く、張っているような気がします。さらには出血が起きます。
通常、妊娠すると、出産直前まで出血が起こることはありません。黒っぽいおりものも古い出血です。少量の出血の場合、多くの方はピンク色のおりもの、と表現します。
いずれも出血に変わりはありません。子宮の入り口のポリープなどの場合もありますが、診察を受けて、流産の兆候ならケアしてもらいましょう。
といっても、妊娠初期の流産に決定的な治療法はありません。しかも、流産の過半数を占める、胎児の遺伝子に問題がある流産には治療のしようがありません。
こちらの流産は、おなかの痛みも出血もなく、これまで順調に経過していたのに、ある時、心拍が見えなくなる、といったことで判明します。治療も予防も不可能なのです。
お友だちはこれとは違う、【母体側の原因】による症状だと思います。だから入院させたのでしょう。
今のところ、最も大切な治療は安静と考えられています。そのために、3食・昼寝付きの環境を整える必要があります。入院の最大の目的は安静なのです。
入院されているということですから、お友だちの【お腹の赤ちゃんは助かる可能性がある】、ということです。その見込みがなければ入院を勧めません。
薬や注射では、明らかな効果が望めません。「これは効く」という薬がないのが現状です。少しの間仕事を休んでも、お腹の赤ちゃんのために安静に努める、というのが望ましいと思います。
出血があったということは、子宮と胎嚢(赤ちゃんと羊水を包む袋)の間に血液が溜まり、それが溢れでてきた、ということです。
例えどんなに少量でも、小さな赤ちゃんにとっては大変なことなのです。
豊岡産科婦人科
院長:久田孝司
住所:旭川市豊岡4条1丁目1-10
電話:0166-31-6801
※コラムの内容については、筆者の見解を尊重したものであり、すべての読者に当てはまるとは限りません。
この記事のキュレーター
出典:asatan