2020年03月01日

妊娠後期に貧血と診断 どのように注意すればいい?【産科婦人科医が答える体の悩み相談】

旭川市の【豊岡産科婦人科】で院長を務める【久田孝司先生】に登場していただき、さまざまな身体の悩みにお答えしてもらいます。※この記事は2018年9月に発行されたタウン情報誌『asatan 10月号』で掲載した記事を再編集したものです


Q.妊娠後期で貧血と診断 日頃からの注意は?

妊娠後期なのですが、貧血があると言われました。飲み薬を出されましたが、飲むと胃がむかむかして、便秘にもなりました。女性は貧血が多いと聞きます。日頃からの注意を教えてください。
(相談者:30代/主婦)

妊娠中は貧血症状が強く現れるが胎児への直接の影響は少ない見解

赤血球は毛細血管を通じて全身の細胞に酸素を送ります。赤血球が酸素と結び付くためにヘモグロビンが重要なのです。足りないと赤血球がうまく酸素と結び付けません。全身に酸素が行き渡らなくなります。ですから症状としては息切れ・倦怠感・動悸などが現れます。

貧血が進めば顔色が悪くなり、錆びたクギなど、妙なものを食べたくなったりします(異食症)。妊娠している方なら、その症状はさらに強く現れることがあります。ただし、【直接胎児に影響することは少ない】と考えられています。つわり(妊娠悪阻)もそうですが、お母さんがどんな状態であっても、胎児は必要な栄養を摂ろうとします。そのため、妊婦さんはさらに苦しくなります。

妊娠中は血が薄まる状態に 治療は鉄材の投薬が基本

妊娠中は血漿がおよそ50%、血球はおよそ20%増えると言われています。つまり、血が薄まっている状態が普通なのです。妊娠後期になればこの状態が少し改善されますが、それでもヘモグロビン値11g/dl以下、ヘマトクリット値33%以下の場合、治療が必要になることがあります。私個人はヘモグロビン値10.5以下を治療の目安にしています。

【鉄剤の投薬が基本】ですが、胃が荒れる、便秘になりやすいという問題がありますので、【飲み薬】がダメな方は鉄剤の【注射】で対処します。程度によりますが、週に1度が基本になります。

大球性貧血の場合は注意を

ただし、赤血球の大きさが異常な貧血もあり、そうした場合血液の病気が潜んでいることがあります。【赤血球の大きさが小さな場合】はまず鉄欠乏性貧血を考えますが、【問題は大きな場合】です。

この大球性貧血の中には、【悪性貧血など重大な血液疾患】が含まれます。【ビタミン12・葉酸の不足】でもこの貧血になります。特につわりなどで栄養をうまく摂れない時に、この貧血になることがあります。食べられるようになったら、豚肉・海苔・納豆などで必要な栄養を摂ってください。

葉酸は通常の食生活では十分な量を摂れないため、サプリメントを活用するのがいいでしょう。ドラッグストアには必ずありますし、産科に常備してあります。先生や看護師さんに相談してみてください。【葉酸は胎児の神経系の成熟にも重要】です。

 

さいごに

妊娠中の貧血は分かった時点で早めに治療するのが大切です。鉄剤の投薬も注射も、行なえばすぐに貧血が改善するわけではありません。効果が現れるのは投薬後10~14日後になります。

【豊岡産科婦人科】基本情報

豊岡産科婦人科
院長:久田孝司
住所:旭川市豊岡4条1丁目1-10
電話:0166-31-6801

出典:asatan

 

※コラムの内容については、筆者の見解を尊重したものであり、すべての読者に当てはまるとは限りません


この記事のキュレーター

asatan公式アカウントです。
旭川とその周辺地域に関連するイベント、グルメ、観光、くらしに役立つ情報などなど、ドシドシご紹介しますのでお楽しみに!