2020年03月15日

産後に気分が落ち込むのは『産後うつ』なの?【産科婦人科医が答える体の悩み相談】

旭川市の【豊岡産科婦人科】で院長を務める【久田孝司先生】に登場していただき、さまざまな身体の悩みにお答えしてもらいます。※この記事は2017年11月に発行されたタウン情報誌『asatan 12月号』で掲載した記事を再編集したものです


Q.産後に気分が落ち込み、育児に気持ちが入らない…まさか『産後うつ』?

友だちが、「産後に気分が落ち込み、育児に気持ちが入らない」と言っていました。産前に比べると表情が暗く、話すことも愚痴ばかりでした。これはいわゆる『産後うつ』というものでしょうか。
(相談者:20代/主婦)

A.一時的に気持ちが落ち込むことは珍しくない

産後、一時的に気持ちが落ち込むことはよくあることです。産後数日で泣きたくなったり、赤ちゃんを可愛く思えない、家族に不満を抱く、などは決して稀なことではありません。【多くの妊婦さんが経験すること】です。

産後3日から10日の間にこうした症状が現れることは多く、マタニティブルーズと呼ばれます。気持ちがふさぐ、集中力が無くなる、不眠などの症状が出ますが、最も多いのは涙もろくなることです。

産婦さんの30%程度にこうした症状が現れる、という報告もありますので、誰にでも起こりうると考えて良いでしょう。ほとんどは2週間ほどで自然に治ります。よく話を聞いてあげるだけで、治療の必要がないことが多いのです。ですが、【この中の5%ほど】が産後うつになる、と考えられています。

産後うつは抑うつ感・焦燥感・不安・不眠・自責・育児放棄などが現れます。マタニティブルーズから移行を含めて、産婦さんの5から10%に現れる、という報告があります。こちらも決して少なくありません。

赤ちゃんを愛せない、家族を愛せない、自分は母親として失格なのではないか、という自責の念は、悪化すれば自殺にも至り兼ねませんので、【周囲が気を付ける必要があります】。

ひとりで悩まず身近な人に相談を 治療には家族の協力も重要

産後うつの場合、家族の協力が欠かせません。産婦さんに育児のすべてを任せずに、時には赤ちゃんから離して、育児の負担を軽減することが必要です。

ただし、自分がダメだから赤ちゃんから離された、と【思わせないようにする】ことが大切ですが、妊娠前にうつなどの精神疾患を経験した女性や、赤ちゃんに病気が見つかった、望まない妊娠・出産をした女性に多い、という報告もあります。

私たち産科医は、こうしたことを常に念頭に置いておく必要があります。少し前に放映されたテレビドラマ『コウノドリ』でも、産後うつがテーマになっていました。症状が重い場合、投薬を含め【精神科医と連携して治療】します。マタニティブルーズと違い、産後うつは治療が必要な状態と思って良いでしょう。

マタニティブルーズも産後うつも、家族の理解と協力が欠かせません。出産をした病院でも相談に乗ってくれるはずです。行政の支援もあります。1人で抱え込まず、まずは身近な誰かに話してみることです。

育児に気持ちが入らないことに、【罪の意識を持ち過ぎない】ことです。我慢を続け、自分を責め続けるのが最もいけないことです。

 

さいごに

産後うつの場合、向精神薬(SSRIのパキシルなど)を使わざるを得ない場合もあります。妊娠中はともかく、授乳にはそれほど影響はありません。

乳汁への移行は10%程度で、赤ちゃんへの影響は少ないと考えられており、あまり気にせず薬を使えます。とにかく1人で悩まないこと。それが最も大切なことだと思ってください。

【豊岡産科婦人科】基本情報

豊岡産科婦人科
院長:久田孝司
住所:旭川市豊岡4条1丁目1-10
電話:0166-31-6801

出典:asatan

 

※コラムの内容については、筆者の見解を尊重したものであり、すべての読者に当てはまるとは限りません


この記事のキュレーター

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