2020年03月22日

人畜共通感染症はペットからも? 妊娠中に気を付けることは?【産科婦人科医が答える体の悩み相談】

旭川市の【豊岡産科婦人科】で院長を務める【久田孝司先生】に登場していただき、さまざまな身体の悩みにお答えしてもらいます。※この記事は2018年2月に発行されたタウン情報誌『asatan 3月号』で掲載した記事を再編集したものです


Q.人畜共通感染症はペットからもうつる? 妊娠中に注意することは?

少し前に、屋外で猫に餌を与えていた女性が細菌に感染して亡くなった事件がありました。私は今妊娠4ヵ月なのですが、人畜共通感染症というものがあると聞きました。ペットからもうつるのでしょうか? うつるとしたら注意しなければならないことを教えてください。
(相談者:30代/主婦)

新たに猫の飼育・土や砂との接触などは 妊娠中は避けるべき

妊娠中に気を付けなければならない感染症は多くありますが、この方が心配される人畜共通感染症はトキソプラズマ症だと思います。

トキソプラズマは女性が亡くなった事件のコリネバクテリウムとは違います。トキソプラズマが【寄生虫】なのに対し、コリネバクテリウムは細菌です。トキソプラズマはネコ科の動物を最終宿主とし、人や家畜などは中間宿主です。

もちろん、ペットがトキソプラズマを宿している場合はうつる可能性があります。ただし、胎児にうつって起こる先天性トキソプラズマ症は、妊娠中に初めて感染した場合です。つまり、長年飼っていた猫からは既にうつっている可能性があるため、それほど心配する必要はありません。

ですが妊娠がわかったら、【新たに猫を飼う】のは控えましょう。猫のフンからうつることもあるので、野菜や果物はよく洗い、【猫のトイレ掃除】は妊娠中避けるようにしましょう。ガーデニングを趣味とされている方も多いと思いますが、猫の排泄物が混じっていることもあるので、【土や砂】には気を付けてください。素手ではいじらない方がいいと思います。

検査に関してですが、血液検査である程度分かります。トキソプラズマ特異的IgGを調べます。日本では、この検査で陽性になる方がおよそ5~10%と言われています。これが【陰性の妊婦さん】は、感染しないように注意する必要があります。猫との接触に注意しましょう。

治療について

 

治療には薬があります。胎児への感染を完全に止めることはできませんが、古くからアセチルスピラマイシンという薬を使っています。

日本では【妊娠中の方の初感染率はおよそ0.13%】と考えられています。これと出生数などを鑑みれば、年間130~1,300人の先天性トキソプラズマ症児が生まれている可能性があります。決して少なくない数です。

ですが、心配し過ぎてもいけないと思います。猫だけではなく、生肉にもトキソプラズマが付着している場合がありますので、生肉の扱いにも要注意です。食べる際にはよく加熱しましょう。

日本では猫の感染率がおよそ10%と言われています。感染した猫がほかの動物にうつすのは、感染してから【2週間以内】ですので、成猫よりも【子猫からの方が感染の危険性が高い】と考えられています。子猫はかわいいのですが…。

トキソプラズマ症は、感染した母体にはそれほど大きな障害をきたしませんが、胎児には大きな障害をもたらします。水頭症・小頭症・てんかん・失明などのほか、子宮内胎児死亡を引き起こすこともあります。

残念ですが妊娠が分かったなら、【猫、特に子猫との接触】を避けましょう。猫のトイレにも気を付けてください。今は空前の猫ブームですが、胎児を守れるのはお母さんしかいません。生まれるまで、少しの間辛抱が必要かもしれません。

【豊岡産科婦人科】基本情報

豊岡産科婦人科
院長:久田孝司
住所:旭川市豊岡4条1丁目1-10
電話:0166-31-6801

出典:asatan

 

※コラムの内容については、筆者の見解を尊重したものであり、すべての読者に当てはまるとは限りません


この記事のキュレーター

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