2020年09月20日
旭川八景のひとつ神居古潭。勇壮な石狩川の流れと渓谷両岸の四季を彩る木々が美しい景勝地ですが、鉄道の歴史に触れられる絶好のスポットでもあります。ちょっと視線を変えるともっと面白い、そんな神居古潭を歩いてみませんか。
ここは明治から昭和にかけ、けわしい渓谷を縫うように列車が走っていた場所。
現在、列車はトンネルを通り、姿を見ることはできないが、辺りの立地はほぼそのままに、復元された駅舎や線路跡など、かつて鉄路があったその面影を様々に残し、原風景の想像に難しくはない。
そんな歴史的景観の中で、旭川の発展に大きく寄与した鉄路を想像しながらの散歩はいかがだろうか。
とにかくは石狩川を渡らないことには始まらない。
駐車場から、美しい吊り橋(神居大橋)を渡ったその先が旧駅、神居古潭駅がある。
橋の入り口
Photo : KOTA
神居大橋
1938年に架設されたもので、その後も幾度か改修されている
森の中、矢印の先が駅のあるエリア。よくもまあ、こんなところに駅を作ったな、と思う
Photo : KOTA
橋から左手を望む。
しっかりと護岸工事が施されている。保線のためだろうか
Photo : KOTA
橋を渡り切り、少し行くと駅が見えてくる。
正面入り口。向こうが線路、改札口となる
Photo : KOTA
函館本線、滝川・旭川間が開通したのは1898年(明治31年)。1901年(明治34年)に神居古潭に簡易停車場が設置され、その翌々年、停車場は駅に昇格した。
駅舎が建設されたのは1910年(明治43年)。増改築を繰り返しながら、明治時代に導入された西洋建築による姿を保ってきた。
参考:駅舎内掲示資料
Photo : KOTA
1969年(昭和44年)。同駅は函館本線「納内~伊納駅」間がトンネル化されたのに伴い廃駅となる。
現在の建物は1989年(平成元年)に復元されたもの。
参考:前同
駅舎の横には蒸気機関車の動輪が。
鉄道公園的であるが、これ自体には何の表示もない。
Photo : KOTA
橋梁跡も見もの
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改札を抜けると(抜けなくても行けるけどね)、かつてホームだったエリアへ。
軟石を積み上げた風格あるホーム
Photo : KOTA
相対式ホーム(2面2線)。
向かって左が伊納駅に向かう下りのホーム、右が上り。
かつての線路はサイクリングロードに生まれ変わっている。
Photo : KOTA
それにしても、なんと長いホームだ。
かつては貨物の取り扱いがあったり、特急列車がここで停車していたそうな。
令和の今となっては、想像を絶するスケールだ。
で、伊納に向かい、その先を歩いてみた。
上りプラットホーム。どことなく洋風建築?
老朽化著しく、今は立ち入り禁止(この上に上がるな)になっている
Photo : KOTA
名所案内
アイヌの遺跡があったり地質学の珍しいサンプルがあったり、ほか諸々、神居古潭は何やらすごいところである。
ただ、カムイスキーリンクスがオープンしたのは昭和59年なので、この看板は廃駅となったあと、取り付けられたものだと思う。
まあ、ここは観光地なのでこういう看板があっても不思議はないが
Photo : KOTA
Photo : KOTA
駅をどんどん離れるにしたがって、森が鬱蒼とした雰囲気を増してくる。
ホームは苔むして、廃墟ムードが濃くなってきた。
Photo : KOTA
マムシが出そうで怖いな(ほんとにいるので要注意)とか思っていたら、おっと、立ち入り禁止のゲートが。
サイクリングロードは落石などを理由に、現在多くの区間が通行不可。
そう、ここは難所である。
列車が走っていた頃も岩盤の崩落があり、それに衝突した機関車が川に転落し機関士が殉職という痛ましい事故も。
先ほど、立ち入り禁止となっていた神居古潭~伊納駅間あたりを起点に、旭川発上り列車の光景をシミュレーションしてみた。
伊納駅を出て、そろそろ神居古潭駅に到着だ。
線路は蛇行しているため減速運転が続く。
Photo : KOTA
左は石狩川の激流。
線路のすぐ下は崖だ。
Photo : KOTA
上りホームに接近。
Photo : KOTA
ぐるっと長い左カーブの先が神居古潭駅。
随分と苔むしているが51年前は現役だった。
Photo : KOTA
左手に神居大橋が見える
Photo : KOTA
やがて停車
Photo : KOTA
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停車。そして札幌方面へ向かい発車
Photo : KOTA
線路は単線に。ほどなくトンネルが見えてきた
Photo : KOTA
トンネル入り口。ちなみに、このかまぼこのようなシェルターは、サイクリングロードを落石などから守るために作られたものだろう
Photo : KOTA
内部も壁面が強化され、その分、狭くなっている
Photo : KOTA
トンネルを抜け、ふりむけば橋
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再び線路の蛇行が続く
Photo : KOTA
倒木が。当時はこんな危険は絶えなかったろう
Photo : KOTA
橋梁も多く残っている
Photo : KOTA
納内へ向かって列車は進む
Photo : KOTA
以上が、機関士の目線(車中からはもう少し立ち位置が高いが)での風景である。
現役の頃はこんなにも草木に覆われていいなかったろうが、よくもまあ、こんな秘境に鉄道を通したものと感銘を受けるばかり。
駅舎の納内側には、実際に北海道を走っていた蒸気機関車の実物3台が静態保存されている。
ちょうど旧線路と平行に置かれているので、木々を背景にまるで線路を走っているかのような臨場感だ。
D51 6 蒸気機関車
1936年(昭和11年)から1945年(昭和20年)にかけて1115輌と日本で最も多く造られた機関車で「デコイチ」の愛称で親しまれました。D50型機関車を改良近代化したもので、それまでの経験をすべて投入して出来た
出典:旭川市博物館 Photo : KOTA
C57 201 蒸気機関車
C55型機関車を改良近代化したもので、そのスマートな形態が人気を呼んだ。1937年(昭和12年)から1947年(昭和22年)に201輌製造され、主に急行旅客列車用機関車として活躍。ナンバープレート「C57201」が示すようにC57型として最後に製造されたのが、この機関車だ
出典:旭川市博物館 Photo : KOTA
29638 蒸気機関車
「キュウロク」の愛称で親しまれたこの機関車は1913年(大正2年)から13年間にわたって造られたもので、この時代を代表する貨物用標準機関車として、四国を除く全国で広く活躍した。784輌造られうち270輌は中国や樺太などに送られた
出典:旭川市博物館 Photo : KOTA
秋には紅葉の美しい神居古潭。せっかくなら見頃に合わせて出かけてみてはいかがでしょうか。
見事な景勝と歴史ロマン。きっと価値ある休日になることと思います。
この記事のキュレーター
Photo : KOTA