2021年04月20日

【旭川】そんな地酒に魅せられて ~4月酒蔵最新情報

酒蔵のあるマチ旭川。四季を通して日本酒のすばらしさを私たちに伝えてくれています。日頃から旭川の地酒を愛飲する筆者が興味を抱いた各社の動向に触れてみました。今回は2蔵、新発売2本のレビューをお届け。


男山 『諸事情』

いきなり、何かのお知らせですか?というようなタイトル。
いえ、これが酒の名前なんです。
いったいどんな事情があるんでしょうか。

 

その事情とは

昨年、コロナ禍により大打撃を被った飲食店。その影響はもちろん日本酒メーカーにも及びます。
酒が売れず出荷が停滞した結果、製造した酒が貯蔵タンクに残ったままという状態に。タンクが空かなければその後の酒の製造しようにも保管することが出来ません。その結果、秋に酒米の入荷があっても酒の製造の目途が立たない状況にまで追い込まれました。

 

そこで、苦肉の策に打って出た男山。余剰在庫となっている酒を手頃な価格で売ってしまおうと、昨年、緊急発売されたのが『諸事情』。男山の思いを、そのままブランドにしたのでした。
8月に『諸事情 純米吟醸』と『諸事情 普通酒』を、12月には『諸事情 辛口純米』を発売し、好評のうちに完売しました。

そして、この4月に発売となったのが『諸事情 特別純米生貯蔵』です。
これは例年5月に発売される夏の人気商品『笹おり』の、同様の諸事情による余剰在庫を一旦タンクに戻し、上澄み部分を1度火入れ(熱殺菌)して生貯蔵酒として発売するもの。男山酒造り資料館のみの数量限定販売となっています。

諸事情により説明が長くなってしまいました(笑)
何はともあれ、頂いてみましょうかね。

すっきり辛口純米酒

 

まず、程々に冷やして試してみます。

『笹おり』を知るものには、この透明感になんとなく違和感を覚えますが(『笹おり』はごく薄く白濁)、上澄みですものね、透明で当たり前か(笑)

 

香りはおだやか。甘酸っぱい香りがほんのりと感じられます。
口当たりも軽く、すっきり。というか極めてやわらか。低温貯蔵で余分に寝かせた分、角が取れてまろやかになったというところでしょうか。
そして、ふわりふわりと口の中に漂う酸味や素材味。後味もすっきりしていますね。

もともと、夏向きの淡麗タイプとして搾られた酒。その本質をそのままに熟成が長所に磨きをかけた、そんなクリアな酒質をより楽しむには、小洒落た旬の和食が似合いそうです。寿司もいいですね。

少しずつ室温に馴染ませて、常温になったところで呑み直してみましたが、個人の感想としては、自分は程々冷やした方が旨い。すっきり感はもとより清涼感を味わえるところに、この酒の良さがあると思います。

それにしても、880円。 特別純米でここのプライスはかなりお買い!!

商品情報

■ 諸事情 特別純米 生貯蔵
【価格】720ml 880円/税込
【販売先】男山酒造り資料館 およびオンラインショップ

※諸事情 スパークリング日本酒 270mlも同時発売

男山 酒造り資料館
住所/旭川市永山2条7丁目
電話/0166-47-7080
開館時間/9:00~17:00
休館日/年末年始

高砂酒造 『農家の酒』

同社の地元プロジェクト酒が発売されました。
うーん、こちらも説明が長くなるかぁ ^^;

 

農家の酒とは

まず地元プロジェクトとは。
「オール旭川素材で日本一うまい酒を造ろう!」と旭川と地酒を愛する有志によって2012年に立ち上げられたプロジェクトで、『農家の酒』は、会員が東旭川の(株)うけがわファームDEN‐ENで酒米の田植えと稲刈り体験を行い、さらに酒蔵でラベル貼りなどの製品化作業のお手伝いなどもしながら生み出した、まさに“旭川の酒”です。

実は筆者も、2017年度に参加。
生まれて初めての泥にひざまで浸かっての田植え、酒蔵見学、ラベル貼り、お披露目会などに出席しました。

 

上は、当時、自分たちが植えた米が実ったうけがわファームの田んぼです。
田植え以降、ひとりでうけがわファームにちょくちょく立ち寄っては、生育の様子を眺めていました。
自分で植えた稲から酒ができるんだ、と感無量になったものです。

しかし、昨年度はコロナ感染拡大防止のため、前述の会員によるイベントはすべて中止に。
それでも、うけがわファームによって酒米は生産され事業は継続。会員および多くの市民が楽しみにしている『農家の酒』は今年も醸造されたという次第。
めでたし。

すいすい飲める心地よさ

 

さて、こちらも程よく冷やして頂きます。

おーっとっと、こぼれるよ。
こういう時は酒を持ち上げずに、置いたままで、こちらから口を突きだしてちゅ~っととすするのが粋ってもんよ。
これが酒を迎えに行く、ってやつだ。

なんて講釈はそのへんにしておいて・・・
口から迎えに行くのもいいですが、せっかくの酒。まずは香りを楽しみましょう。

まずは、ふわりと香る果実香。やや軽めながらも凛としていて、吟醸酒らしい品質の良さを感じさせます。

 

柔らかな口当たり。ほのかな甘さが口のなかに広がります。
そして、のどごしも軽快。あと味もさらりとしていますね。
道産の酒米「彗星」の持ち味を余すことなく引き出した、清涼感がこの酒の魅力。気軽な食事などカジュアルな場面にも似合いそうです。

 

商品情報

■ 純米吟醸酒 農家の酒

【価格】1800ml 3,300円/税込・ 720ml 1,884円/税込
【販売先】酒類販売店、同社直売所および同社オンラインショップ

高砂酒造 明治酒蔵(直売店)
住所/旭川市宮下通17丁目
電話/0166-22-7480
開館時間/9:00~17:30
休館日/年末年始

今回のアテは

前掲の各画像で、ビンやグラスの向こうにちらちら見えていたのは「ささみのみそ焼き」。

 

ささみを開いて軽く炙り、酒・砂糖を加えた味噌を塗ってこんがりと焼き上げたもの。
味噌は日本酒に合う味わいの代表格ですが、甘酸っぱいタイプの酒とは特に好相性。
また、ささみの淡い味わいと酒の旨味、この相性もじっくりと楽しめますよ。

 

さて、気になる酒はありましたか。
今回の2本は、どちらも数量限定なのでお見逃しなく。

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この記事のキュレーター

美味しいもの、旨い酒を味わう時間が何より大事。
不惑の呑兵衛を目指すべく、きき酒師の資格を取得。

・SSI認定FBO公認 きき酒師
・日本酒WEBメディア SAKE TIMES ライター