2022年01月28日

旭川の地酒【旬のにごり酒】を飲み比べて楽しみました

日本酒の味わい色々。この時期はしぼりたての「にごり酒」も格別です。旭川市内2社の酒蔵が1月に発売した2本を味わってみた筆者の感想をレポートします。


にごり酒とは

長くなるので、ざっくりとした説明をお許し下さい。

日本酒は、「もろみ」と呼ばれる、いわゆる酒のもと(米と麹をアルコール発酵させ加水したもの)に圧力をかけ絞り出して造ります。つまり、もろみを個体と液体に分離させるということですが、この個体が酒粕(さけかす:甘酒なんかを作るアレ)です。
一方、液体は絞り出す際に袋やフィルターを通して濾され清酒となります(法律上、濾さないと清酒として出荷できない)。

このフィルターが極めて細かいと、酒は透明に。粗いと材料が残り白濁します。これがにごり酒ですね。
にごり酒は、濃厚な飲み口、素材の旨味が感じられるといった特徴があり、あえて粗く濾して出荷されるにごり酒は日本酒愛好家から珍重されています。

どぶろくとは違います

にごり酒は「どぶろくのことでしょ」と混同されやすいのですが、別モノ。
前述のように、もろみを濾したものを「にごり酒」。対して、濾していないものが「どぶろく」です。
先程、清酒という言葉を使いましたが、にごり酒は粗くても濾してあるので酒税法上、清酒となります。対して、どぶろくは濾していない酒のことで、酒税法上は「その他の醸造酒」となります。見た目も味わいも似ていそうですが、法律上はまったくの別モノなんですね。

ふたつの蔵からにごり酒

 

白いバックはやはり見映えが悪いですよね。おまけにラベルも白なので露出も調整しにくくて。
撮り直そうにも、もう飲んでしまったので・・・申し訳ありません。

まずは右側。高砂酒造が1月21日新発売の『純米酒にごりもふ。』
なんのこっちゃ?というネーミングですが、ラベルには北海道の白く可愛いモフモフの動物たちが。
なるほど、酒の白とそれらを掛けたということでしょうか。非凡なる命名、おみごとです。

そして左が、男山の『特濃にごり』。もう、にごり以外のなにものでもない、なんて潔いラベルでしょう。
ネックラベルには、にごりを意味する濁点があって、にごりアピールがすごい(笑)。
このネックラベルの裏側には「男山史上最濃」と書いてあります。なんかスゴそうです。
こちらは本来4月発売予定でしたが、1月に前倒し。おかげで同時期での飲み比べがかないました。

ということで、きき酒してみます。

高砂酒造 『にごりもふ。』

 

ほんのりと穏やかに甘い香りがします。
そしてさらりとした口当たり。「にごり」のイメージから、まったりとしていそうという気がしながらのひと口でしたが、まるで逆。むしろスッキリとしていて、甘酸っぱい香味が口の中にふわりと広がります。
お酒の中でも日本酒は、いわゆる日本酒っぽいのが苦手、とおっしゃる方でもイケそうです。

また、あと味もすっきりしているので、いろんなお料理と一緒に楽しむのもオススメ。
冷やせばなおスッキリと。カジュアルに楽しめるタイプのにごり酒をお見受けしました。

商品情報

■ 純米酒 国士無双 にごりもふ。
【価格】720ml:1,375円(数量限定)
【販売先】酒類販売店、および同社直売店

直売店:高砂酒造 明治酒蔵
住所/旭川市宮下通17丁目
電話/0166-22-7480
開館時間/9:00~17:30
休館日/年末年始

男山 『特濃にごり』

 

飲み比べ、すなわち「違い」を言うならば、今回の2本はかなり違います(レビュー映えがしてウレシイ)。
どっちがどっちより美味しいというのでなく、2本それぞれの表情(酒質)が異なるということです。

 

注いでみれば特濃の意味を実感します。
とろっとしている。確かに濃い。かなりの粗しぼり(フィルターが相当に粗い)か、あるいは粕を混ぜ戻しているのか(筆者の予想)、とにかく水分に対する粕の割合が多いということ。

下の画像でも、その濃さの違いが分かるかと思います。

 

その濃さから、口当たりは相当にまったりとしていて、味わいも濃厚に感じられますがベタ甘な感じもなく、むしろカチッと固くクリアな表情も。
なので、同社はこの酒を甘口に分類していますが、筆者の感想としてはなかなかの辛口タイプ。そんな印象も感じます。

酒の味わいをより専門的にあれこれ言う場面では、よく「素材の風味が・・・」とか「米の旨味が・・・」という言い方をしますが、この「特濃にごり」はまさにそれ。にごりの正体は即ち「もろみ(発酵した米や麹)」な訳で、かつ濃いので、もろみの味わいを感じるには打ってつけ。日本酒の新たな世界観に触れてみる良い機会とも言えましょう。

前掲の高砂酒造「にごりもふ。」をカジュアルに楽しめそうと表現しましたが、対して男山「特濃にごり」は甘辛な肴などをつまみながら、じっくりと味わいを堪能する、そんな楽しみ方がしっくりと来そうですね。

キレも良いので意外とすいすいと行ってしまいますが、アルコール度数は19度。日本酒としてはかなり高い方です。
尚のこと、ゆっくりやるのが身のためしょうね。

商品情報

■男山 特濃にごり
【価格】720ml:1,298円
【販売先】酒類販売店、および男山酒造り資料館売店

男山 酒造り資料館
住所/旭川市永山2条7丁目
電話/0166-47-7080
開館時間/9:00~17:00
休館日/年末年始

おすすめのツマミ

一例として、こんなのはいかがでしょう。

 

モッツァレラチーズです。
近年は日本酒に合うツマミとして、チーズはごく普通のものとなってきました。
中でも、今回のにごり酒に合わせたいのは、フレッシュタイプ(熟成していないタイプ)。柔らかな食感と旨味はにごり酒の穏やかな旨味と相性もピタリ。
和食のように、わさび醤油で食べるのもオツですよ。


この記事のキュレーター

美味しいもの、旨い酒を味わう時間が何より大事。
不惑の呑兵衛を目指すべく、きき酒師の資格を取得。

・SSI認定FBO公認 きき酒師
・日本酒WEBメディア SAKE TIMES ライター