2019年12月18日

【旭川の地酒】フレッシュな旨さ、新酒3本ピックアップ

日本酒愛好家には嬉しい季節の到来。新酒が出回る頃となりました。  ここは、地酒のまち旭川。市内の酒蔵でも、この秋に収穫した米を使って仕込んだ酒が瓶詰めされ、続々と新酒が発売されています。 そこで、気になる3本をピックアップ。筆者自身がテイスティングを楽しみながら、その味わいを紹介します。


新酒とは

まずは、ここで言う新酒の意味を整理しておきましょう。
文字通り「新しい酒」のことには違いありませんが、日本酒をめぐる関連団体それぞれで定義づけは様々。酒税にからむ難しい話もありますが、呑む側にはあまり関係のない話。
「その年の秋に穫れた米を使って冬から春にかけて造られる酒」、くらいに捉えておけば概ね間違いはありません。

Photo:KOTA

 

秋、新酒の仕込みが始まると、蔵にはそれを知らせる合図として「酒林(さかばやし)」という杉でできた飾りが取り付けられます。杉玉という地域もあります。
上の画像は男山酒造り資料館の酒林です。

男山 北の稲穂 純米生原酒

まずは、永山は国道沿い、大きな建物(蔵)と酒造り資料館でお馴染みの男山株式会社から。

Photo:KOTA

 

何とか人ごみを避けてシャッターを切りました。実際には観光客がたくさん。大型バスで乗り付けた外国からの来館で連日大賑わい。

Photo:KOTA

 

生酒とは、酵母による発酵を止めるための熱殺菌(蔵では火入れと呼ばれる)していない状態の酒のこと。酵母が生きているので、発酵が進まないように冷蔵で温度を下げて保存します。
また、原酒とは水で割っていない酒のこと(大概はアルコール度数や味わいを調えるため加水する)を言います。つまり生原酒はほぼ出来立ての状態と言えるわけです。

冷えた状態でグラスに注ぎます。いわゆる冷酒というやつですね。
鼻を近づけてみると、ほんのりと甘酸っぱい香りがします。
口に含んでみると香りのイメージそのままに、軽やかにフレッシュな口当たり。酸味や甘味が溶け合って口の中に広がります。この爽快感がいかにもしぼりたてのイメージ。

少し時間が経ち、酒の温度が室温に慣れてくると(いわゆる「冷や」、常温というやつですね)、口当たりはよりなめらかになってきました。すいすい呑み進む美味しさです。

【発売日】12月5日
【価格】720ml:1508円/税込(数量限定)
【販売先】酒類販売店、および同社直売所(旭川市永山2条7丁目)

純米生酒 大雪乃蔵 新米しぼりたて

続いては、オエノングループ合同酒精株式会社から。南4条の、赤いレンガ塔で知られる、そこが同社の旭川工場です。
といってもレンガ塔は焼酎関連の建物だそうですが(笑)

Photo:KOTA

 

新米。 朴訥な感じが何とも良いネーミング。分かりやすくていいですね。
グラスにそそぎ鼻を寄せてみると甘酸っぱい香りがなかなかに鮮烈。ふと柑橘系の芳香を思わせる爽やかさです。

酸味、甘味がしっかりと潤いつつ、すっきりとした口当たり。うん、美味しい。フレッシュでいかにも新酒というイメージです。
ひと口ひと口堪能しながら、そうそう、甘酸っぱいワインを味わうようにじっくりと楽しみたい、そんな質感に惹かれました。

【発売日】11月29日
【価格】720ml:1190円/税別(数量限定)
【販売先】酒類販売店

しぼりたて初高砂 特別純米

3本目は高砂酒造株式会社から。

Photo:KOTA

 

宮下通ではお馴染みの風格と歴史を感じさせるあの建物「明治酒蔵」で購入しました。
これが発売される前後には、同社の看板ブランド「国士無双」の新酒も発売されています。

Photo:KOTA

 

ほんのりまろやかな甘い香りに誘われてひと口。酸味や旨みなどがすっきりと整った、バランスの良い美味しさです。
口当たりは軽く、なめらかなのでとても呑みやすい。すっと飲み干してしまえば印象は軽快に、それでいて、じっくりと味わえば素材の旨み感じる確かな飲み応えのある酒のようです。

その上、キレ(あと味がすっきりしていること)が良いので、色々な料理とスムーズな相性を発揮しそう。これからの時期、年末年始の食卓にも重宝しそうな1本です。

【発売日】12月6日
【価格】1800ml:2500円/税別 (数量限定)
【販売先】酒類販売店、および同社直売所(旭川市宮下通17丁目)

ほろ酔い後記

お酒もいいけど肴もね

酒を美味しく、加えて体に優しく楽しむためにツマミは欠かせません。
香り、そして軽やかな旨みが印象的な今回の酒には、聖護院大根の粕漬けを用意しました。漬物の粕の香り、ほんのり酸味ある甘じょっぱい味わいが相性の決め手です。

Photo:KOTA

 

酒と肴の相性には一定のセオリーがあり、それに沿った一例としてこの漬物を用意しましたが、それはそれ。この秋に穫れた野菜、つまり旬の味覚に、旬の酒を添える。そんな組み合わせが粋じゃありませんか。

酒を呑んでツマミを。ツマミをかじって酒。どう楽しもうとも、口の中にじゅわっと旨みが広がって、なんとも幸せな気分。この相性、期待以上。
どうぞ皆さんも、お気に入りのスタイルで、旭川の地酒を楽しんでみませんか。


この記事のキュレーター

美味しいもの、旨い酒を味わう時間が何より大事。
不惑の呑兵衛を目指すべく、きき酒師の資格を取得。

・SSI認定FBO公認 きき酒師
・日本酒WEBメディア SAKE TIMES ライター