2019年12月15日

webで復活! 秘密結社【黒薔薇】リターンズ!中編

タウン情報誌asatanの1992年創刊号から5回に渡って連載され、回を追うごとに話題となった人気シリーズ【秘密結社 黒薔薇を探せ!】その3年後に前編、中編、後編として連鎖されたリターンズがweb版で復活!黒薔薇と編集部との再度の戦いを綴った物語。


webで復活! 秘密結社【黒薔薇】リターンズ!前編 | 旭川のことならasatan

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タウン情報誌asatanの1992年創刊号から5回に渡って連載され、回を追うごとに話題となった人気シリーズ【秘密結社 黒薔薇を探せ!】その3年後に前編、中編、後編として連載されたリターンズがweb版で復活!黒薔薇と編集部との再度の戦いを綴った物語。

↑↑前回までのあらすじ↑↑

なんだこりゃ!第二の災い

「畜生!」

…田尾野の車のエンジンがかからない。
どうゆうことだ?
【黒薔薇】のやつらはすぐそこにいるというのに…!

田尾野は彼らの遠ざかるエンジン音に、なかば諦めかけたように、ボンネットを開けて中を覗き込んだ。
「なんだこりゃあああ!」
田尾野が叫んだ。

「どうしたんですか!田尾野さん!!」
焦りの表情の吐水は、まだか、まだかとしびれを切らす。
「み、見てよ…、これ…」

田尾野は震えながらエンジンルームを指差す。
吐水も、もう黒薔薇を追跡することを諦めたようだ。とぼとぼと車のほうに向かって来た。
そして、車にたどり着き、車の状態をチラッと見た瞬間、彼の顔色が変わった。

「こっこれは!」

 

なんと、田尾野の車のボンネットの中には、あふれんばかりのお肉とエロ本が詰め込まれていたのだ!
「お肉とエロ本」、なんていやらしい響きだろう。

それを呆然と傍観していたK君が、思い出したように駆け寄ってきた。
「ヤツら、もういないみたいです…」
そう、我々は彼らを目撃しながら取り逃がしてしまったのだ…。

現場検証。

その後、まず車を片づけ、エロ本はポケットにねじ込み、洗車をするにつれ、ようやく車が動かない理由を発見した。

【黒薔薇】はまず、田尾野の車に近付き、鍵をこじあけた。
その後、車のボンネットをあけバッテリーの線を切断し、ウマそうな肉を放り込み食欲を増加させ、エロ本でエッチな気持ちになることによって、追跡する戦意を喪失させようとしたのだ。

科学的、生物学的根拠に基づく攻撃だ。
敵ながらあっぱれである。
あとはボンネットを閉め、車の鍵をして、わざと自分たちの存在をアピールするために火薬音をともなう花火に点火し、逃げる体制を整えた。

このあいだ、わずか5分。
恐るべき早業である。

 

とにかく、我々にとっては彼らの行動、人数を目撃できたことは十分な収穫である。
過ぎてしまったことは仕方がない。
彼らを取り逃がしたことは忘れ、再びK君の家で事情を聞くことにした。

K君の告白。

K君は明らかに何かを知っているようだ。
それは、単純に我々のカンだ。

ゲゲゲの鬼太郎は妖気を感じると髪が立つ。
同様に吐水が野生の勘を働かせた場合、股間がモッコリする。
この時の彼の勘は69%の確立で当たるという…。

この日、偶然にも彼の海綿体はいきり立ち「K君はあやしい!」というメッセージをしきりに訴えていた。
我々は彼のムスコを信じて、K君に誘導尋問を試みた。

「K君、さっきの話の続きなんだけど…」(さっきの話とは先月号でK君に質問していたことである)
「え?黒薔薇について?知らないよ」
「そんなハズがない!!」

吐水は股間の予言に自信を持っている。
確信に満ちた表情でK君に迫る吐水。
田尾野はここまで心強い吐水をいまだかつてみたことがなかった…。

「な、何を根拠に???」
吐水の勢いにうろたえるK君。
「実は、出前の一件なんですがね…」
田尾野が割って入る。

「な、なんですか?」
「なぜ、黒薔薇だと?まさか、黒薔薇のメッセージが寿司と一緒にくるはずもない。つまり、誰がやったかわからないのです。しかし、あなたは黒薔薇だと断定した!なぜですか?」

「そ、それは………」
「……知っていますね?黒薔薇を!」

「……………」
「どうなんですか!」

「…はい、知っています!」
やはりそうだ。
ありがとう!吐水のムスコよ!彼の野生の勘の予言率は70%に上昇した!

「彼らのことを話してくれませんか?」
K君はゴクリと唾を飲み込み、深呼吸するとゆっくりと語り始めた。

 

黒薔薇リーダー黒田

「……いいでしょう。黒薔薇について、僕が知っているすべてを教えましょう。リーダーは黒田(仮名)という男です。なぜ、僕が彼らのことを知っているかというと、彼と文通していたからです。」

なんと!あまりの話の唐突さに我々は仰天し、愕然とした。
そしてK君って結構オタクっぽいんだなと認識した。

「ペンパルなので、実際に会ったことはありません。本当です。信じてください!」
「そうですか…。彼とはどういった関係だったんです?」

「黒薔薇の活動についての手紙を読んで批評するような感じです。手紙を読むのが楽しかったですし…」
「(手紙を見ながら)確かに、犯行についてのことが、おもしろおかしく書かれていますね…」

「プルルルルルル…」
話の腰を折るように電話が鳴った。
嫌な予感を胸にK君が受話器を取る。

「もしもし…」
「…ごきげんよう諸君。黒薔薇だ!」

黒薔薇の黒田だ!ヤツには我々の行動が筒抜けなのか?K君はもうバレていることをジェスチャーしながら受話器を吐水に手渡す。

「…お電話代わりました」
「君が吐水君だね?編集後記を拝見させてもらっているよ。当然、今回の我々の行動を記事にするんだろ?」
勝手なヤツだ。
なぜ貴様らの指図を受けなくてはならないのか。
田尾野が我慢しきれず、吐水から電話をもぎとる。

「黒田っていうんだってな…、貴様!」
「もう一人のasatanのヤツだな…?」

「…なぜ、いまさらこんなことを?」
「それは第七の予言が成就されたときわかるさ…。ふははは!」
そこまで待てるか!
我々は怒りに震え、こんなヤツにいいようにやられている自分を恥じた。

「そうだ…、それよりもお前らにいいコトを教えてやろう…、そこにいるKはな、3年前お前らを襲った張本人なんだよ!」
なんだって?これは重大発言だ!!
「…ほ、本当なんですか?K君」
コクリ、と小さく頷いたK君の目には屈辱感に苛まれている証拠の涙がきらめいていた。

「残念だったな!Kのことを信用してたんだろ?実は二重スパイだったのによ!おっと、しゃべり過ぎたな。まあ、近いうちに楽しいイベントを用意しているから…、じゃあな。バイバイ」

電話は切れた。
受話器を置いてK君に話しかける。しかしK君は下をうつむき口を閉ざしたままだった。

真実を知って驚いた。
しかし、この場でK君を責めてもどうしようもないことはわかっていた。

3年前、K君は手紙によって黒田に仕事を依頼された。しかし、黒田の顔は見たことがないという。
はたして本当なのだろうか?
手紙を確認してみると、K君の仕事報告後の黒田の手紙には次のように書かれている。

「よくやったな、未だ見ぬ友よ!君の仕事によって我々の戦況は極めて良好だ。褒美として勲章を授ける!」
アホらしい文面だ。
とはいっても消印はちょうど3年前の1992年であり、文面から察するにK君と黒田が出会っていない充分な証拠である。

ふさぎこんでしまったK君にこれ以上、質問するのはあまりにも酷だ。
K君の自宅は確認しているし今日はここまでにすることにした。
K君もまさか逃げるわけでもあるまい。

K君の失踪。そして、第三、第四の災い。

2日後の午後10時、異変が起きた。
再び事情聴取に訪れたK君がいないのだ。
部屋ももぬけの殻だ。
引越ししている!なんということだ。
我々はK君を信用していたのに…!!

 

彼の勤めている学習塾も3ヵ月前に退社している。
スタート地点に逆戻りだ。
人生ゲームでゴール目前で破綻したパターンと同じ気分を味わう。
俺たちは一体何をすればいいんだあ!

「ただいま!」
我々が【黒薔薇】について頭を悩ます最中、一人の男が帰社してきた。
トド谷だ(仮名)。
営業先から一時事務所に戻ってきたらしい。

「田尾野さん、吐水君どうしたんスか?」
ノー天気なトド谷は質問する。
しかし、我々にはそれに返答する元気さえない。

彼は事務所に入ると撮影のために持っていったカメラを棚に入れようと振り向いた。
その瞬間、思わず我々は吹き出してしまった。

なんと彼の背中には貼り紙があり、こう書かれていたのだ!
「俺を殴ったら、百万円あげます」
これじゃクラスのいじめられっ子だ。

これを貼り付けたまま彼は営業してきたというのか…。
営業先で、彼のこの惨めな姿を見た人はいなかったのか?
そして、ここぞとばかりに殴ってくるヤンキーに遭遇しなかったのか?

 

「いっ、いつからそれを…?」
「なんだこれは⁉こんなの知りませんよ!一体、いつのまに???」

【黒薔薇】だ!【黒薔薇】としか考えられない。
こうゆう古典的な戦法を使ってくるとは…!
これが第三の災いだというのか!

「どうりで知らないヤツが殴りかかってきたわけだ…!あははっ、黒薔薇って意外にやりますねえ!」
妙に感心するトド谷。彼にはことの重大さを理解していないようだ。
まあ、いい。
世の中には知らないほうがいいこともあるのだ。

「ただいま!」
おっと、今度は編集部の壬生谷(仮名)が帰社してきたようだ。

「あれ?トド谷君、背中に何つけてるの?まさか、…黒薔薇?」
事態をすぐ認識する壬生谷。
「まさか、自分も?」
と思ったのだろう。
自分の背中を気にする。
しかし柔軟性に欠ける壬生谷は背中に手が届かない。

「大丈夫ですよ。何も付いていませんよ」
吐水が背中を確認し、壬生谷もホッとした面持ちで靴を脱ぎ、会社内に入ろうとしたその時、

「ぎゃあああああー!!」
突然壬生谷が声高らかに悲鳴をあげた。

「どうしたんですか!壬生谷さん!!」
「くっ、靴が…⁉」

おそるおそる、我々は彼女の足元をのぞいた。
次に瞬間、あまりの恐怖に我々は絶句してしまった。

「恐ろしい!なんと恐ろしいことだ!」
叫ぶ、トド谷。
彼女の靴は茶色い粘着質のウ●コにまみれていたのだ。
しかも、まだ、かすかにぬくもりが残っている!!

 

「…一体、このビチグソをどこで?」
「私は踏んでない!私は、私は…」
壬生谷はあまりの恐怖心で錯乱状態に陥っていた。
発狂寸前だ。
【黒薔薇】はウ●コという究極のウェポンで攻撃を開始してきたのだ。

「asatanの人はウ●コをつけて通勤しているのよ…!」
などと、近所の主婦たちの噂になり、井戸端会議の議題になってしまって営業にも支障をきたす。

「…しかし、作為的にウンコを踏ませるなんてことが可能なんでしょうか?」
田尾野が疑問点を掲げる。
「あつ!そういえば!」
壬生谷が何かを思い出したようだ。

「私、さっき取材で行った、小路に"この先通り抜けできません"という看板があって…、そこから抜けるには、ビルとビルの隙間を歩かなくてはならない場所があったんです。まさか、そこで…?」

すぐさま我々調査団は壬生谷が通ったというその場所に行ってみる。
すると、やはり全長30cm程のウ●コの靴型がきっちりついたままの状態で置かれていた。

しかし、「この先通り抜けできません」という看板はものの見事になくなっていた。
「そんなハズありません!確かにここに看板があったんです!!」

【黒薔薇】だ。彼らが壬生谷の動きを読んで仕掛けたワナなのだ。

 

人にウ●コを踏ませるとは、なんてお下劣なやつらだ!
しかも相手は女性である!
我々も、社内であればいざしらず、ここまで広範囲に攻撃されるとは思ってもみなかった。

彼らによる災いはあと3つも残っている。
一体これから我々の身に何が起こるというのか?

そして、K君はいずこへ?

依然、謎のままである【黒薔薇】の黒田とは何者なのか?

多くの謎が未解決のまま、我々はかすかに湯気が立ち込める褐色のウ●コの前で立ち尽くすしかなかった…。

[後編]へ、つづく。


この記事のキュレーター

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