2022年09月21日
季節の酒「ひやおろし」。多くの酒屋がこれを扱う中で、市内ではあまり流通していないレアなアイテムがあるんです。逃すことなく筆者も入手し味わってみた、そのレポートをお届けします。
簡単に言うと、冬に発酵させた酒の材料から、春、絞り出した酒を貯蔵し、秋に出荷する製品のこと。
春から秋にかけ熟成することで、酒質に丸みが出て味に深みが。蔵人いわく「旨みがのっている」まさに旬の酒という訳だ。
清酒は通常、製品化されるまでに2度の加熱殺菌(蔵では火入れと呼ばれる)を行うが、ひやおろしとして出荷されるものは、酒を搾った直後の1度だけ。生酒(火入れしない)に近い味わいも、ひやおろしの特徴とされる。
火入れをしていない状態を蔵では「ひや」と呼び、これを市場に卸す(おろす)から「ひやおろし」と名がついた。また、秋に味が上がるから「秋あがり」とも。
お店の陳列に「ひやおろし」と「秋あがり」があったなら、それ、どっちも同じなので迷うことなかれ。
今年も旬な日本酒「ひやおろし」の季節がやってきた。日本酒愛好家は、堪らずにワクワクしている頃である。
旭川の酒蔵もかねてからこの時期にひやおろしを出荷していて、今年もすでに市内多くの酒類販売店の棚に並んでいる。また、旬の味覚に敏感な飲食店でもこれを客に提供しているので、訪ねたときにはチェックしてみて。
上は、旭川市内で操業する酒蔵のひやおろし。
※左から高砂酒造、男山、大雪の蔵。
上は市内の多くの酒屋に流通しているが、旭川のひやおろしはこれだけではないことをご存じか。
ということで、以下で取り上げるのは、逆に市内で広く流通していない、いわばレアな酒。
首尾よく筆者が購入できた2本を紹介したい。
こちらは「日本名門酒会」限定、どこでも買えるわけではないという逸品。
同会は、「民族の酒・日本酒の伝統を守り、良質で旨い酒を愛飲家にお届けしよう」という考えから、地方でそうした酒造りをしている蔵元に呼びかけ発足したボランタリー組織。
「良い酒を佳い人に」をスローガンに、全国約120社の蔵元が丹精こめて造った良質の日本酒を、全国1,500店あまりの酒販店を通して流通させている。 =参考/同会HP=
つまり旭川の男山も、志を同じくする蔵のひとつ。
そして、そのために造られた酒は、前掲画像にあった一般販売のひやおろしとは違う味わいとなっている。
旭山動物園にちなんだ(と思われる)アザラシのラベル。
アザラシの宴会のようなデザインがユニークだ。
香りはほのかなれど、しっかりとした旨味を予感させるものがある。
すっとした口当たりからじんわりと広がる旨味。そこにほんのりとした酸味が脇役に回り、酒の味わいを引き立てる、なかなかの名バイプレイヤー。
飲み干せば、クリアな酒質が印象的。キレも良く、多くの料理との相性を期待させる。
※評価は個人の感想です
コクのあるもの、味わいの濃厚な料理とよく合うとされるひやおろし。
晩酌のアテは「生ハム」で。
生ハムの脂の風味が男山と、何と良く合うことだろう。生ハムのおかげで、酒の甘味や旨味がいっそう膨らんで飲み応えは痛快。
酒の香味は淡麗だが、生ハムの塩味に劣ることなく見事に溶け合う。さすがは生酛仕込み。
※数量限定品につき品切れの場合があります
住所/旭川市永山2条7丁目
電話/0166-47-7080
おやおや?
旭川市内に数店あったはずだが、同会ホームページを検索したら記載なし。
ちなみに、札幌市をはじめ道内各地に10店ほど加盟店がありました。
えぞ乃熊(えぞのくま)。実は筆者、この酒とは某居酒屋で遭遇する。
裏ラベルをみると製造しているのは高砂酒造とある。
詳しく知りたいと同社HPを閲覧するが、商品ページのブランド一覧に載ってない。
え?どこか違う地域の高砂かと思うも、ラベルには旭川市宮下17丁目とある。たしかにあの高砂だよね。
夢か幻か。
方々で調べてみると、道外に北海道の酒を知らしめようと開発した、道外向けのブランドのよう。だから同社定番品とは別の扱いとなっている様子。
なので、旭川市内では同社の看板酒「国士無双」のように広く流通してはおらず、これを知らないというヒトもけっこう多い。
純米・生酒・精米歩合60%・アルコール17〜18度
1.8L 3,080円・720ml 1,540円
手書きの、のほほんとした雰囲気のラベル。北海道のイメージを描くと民芸品のようになってしまいがちだが、その点、本品はポップでなかなか良い
これの上位置のラベルには「秋あがり」とあるが、ひやおろしと同義。
ひやおろしは概ね穏やかな香りとされるので、そんなつもりで鼻を近づけると、思いのほか華やかで、果実を思わせるような香りが意表をつく。そうか、生酒だだからかな。
前掲の「ひやおろしとは」で、ひやおろしは加熱殺菌(火入れ)をすると書いたが、このように加熱をしない「生酒」もひやおろしとして存在する(ということをコレを機に知った筆者)。
なめらかな口当たりから、フレッシュな旨味と酸味が一緒に広がった(微妙に旨味が先行していたようにも思う)。
ほう、一気に攻めてくるね。アルコールも少し高め、そこは生酒の存在感ありというところ。
旨味はふくよかで、素材味も確かにあるしっかりとした飲み応えに好印象。
長くはないが余韻も程々に、ゆっくりと楽しみながら味わえる酒だ。
※評価は個人の感想です
晩酌のアテには、同じ北海道産のものを。
熊とくれば鮭なんだろうが、道産ブリの「あら」を大根と一緒に炊いてみた。いわゆる濃い系の味。
ブリとともに酒を味わえば、これまた何という相性。生酒らしいフレッシュな香味が際立つじゃないか。
これだから日本酒は面白い。口の中は美味しい化学反応による幸福に満たされる。
コクある料理にこそひやおろしと言われるが、まさに面目躍如とはこのことか。
※数量限定品につき品切れの場合があります
旭川市3条通6丁目
TEL 0166-22-2664
旭川市緑が丘東3条1丁目
TEL 0166-60-6066
この記事のキュレーター
特別純米(生詰)・生酛仕込み・精米歩合60%・アルコール15度
価格 1.8L 2,948円 720ml 1,463円