2024年01月23日
待望、新酒の到来だ!! 「しぼりたて」って何だか果実の飲み物のような言葉ですが、いえいえ、日本酒も「しぼりたて」があるんです。しかも今の時期だけ、冬ならではの酒が「しぼりたて」。今シーズンも酒屋に並んでいますよ。ということで、筆者が度々お届けする日本酒レビュー、今回は毎シーズン楽しみにしている、新発売の2本を紹介します。
「しぼりたて」は「新酒」のイメージ。まさに今回紹介の2本はいずれも秋に収穫された米で仕込まれた新酒だ。
初冬に出荷される新酒は、熟成期間が短い分、フレッシュな香味が期待でき、四季折々に酒を楽しみたい愛好家には見逃せないものとなっている。
また、「しぼりたて=出来立て」というイメージは、何かと新しいものに目を向けたい人々に刺さるのかもしれない。
ここで紹介するのは上の2本。
いよっ!! 待ってました!! とばかりに購入した左が男山、右が高砂酒造の品。どちらも旭川市内にある酒蔵のもの。いわゆる「地酒」だ。
我がまちに地酒があるって、なんだか誇らしい。
ところで、しぼりたての「しぼる(搾る)」とは?
これを語ると酒の話をお待たせするので、巻末に記した。興味がございましたらどうぞ。
こちらは男山が展開する道産の酒米だけで仕込む「北の稲穂」シリーズの1本。
北海道の酒造好適米(酒米)は近年、質の良さで脚光を浴びている。
「生原酒」とは、日本酒の多くは造り始めから出荷までに1~2度の加熱殺菌を行うのに対し、一切それを行わない酒のこと。また加水もしていないので原酒と呼ぶ。
テイスティング用のグラスを使って。香りが判別しやすいワイングラスのような形をしている。
ほんのりとした甘い香りを、ごく軽快な柑橘っぽい匂いが覆う。
軽く甘酸っぱい香りといえばいいのに、ちょっと分かったふりをする筆者(笑)。
口に含めば、きりっとした口当たり。
その中から、さらりと旨味が感じられる。が、飲み込んでしまえばすっと消えていくすっきり感も(これをキレがあると言う)。
やや淡麗ですっきりと呑みやすいタイプ。フレッシュな新酒らしさがここにある。
と言っても、これは生酒なので、アルコールが17度とちょっと高め。そういう意味ではけっこうな呑み応えを堪能できる。
※以上、個人の感想です
純米酒
精米歩合:60%
アルコール度:15度
価格: 720ml ¥1,485
一方、こちらはしぼりたてに加え、「新酒」であることもアピール。
国士無双ではお馴染みの、ブルーのボトルにラベルが映える。
こちらも北海道産の酒米を使用。
やや甘い香りがほんのりと。
何だろう、種のある優しい味の果物の香りのような?
うん、良い酒はこんなふうにイマジネーションをふくらませるものだ。
まずひと口。ふんわりとまろやかに甘酸っぱさが舌を楽しませてくれる。
フレッシュで軽快な口当たりのおかげで、続くもうひと口もスムーズに。
後味にほんのり、やわらかな旨みも心地よい。
※以上、個人の感想です
日本酒は、料理とともに味わうことで本領発揮。
酒質が良ければ、酒は料理の味を高め、また料理が酒の味わいを深めるという相乗効果が。
一緒に味わうとあら不思議、料理の材料によって酒の味が変化して感じられる、そんな面白さも見逃せない。
旬の鱈を使い、この時期美味しい「たらちりの小鍋立て」で晩酌。
昆布出汁を張った鍋から煮えた材料を引き出し、ぽん酢で頂くという趣向。
今回は、タラ・白菜・ネギ・豆腐という具の顔ぶれで、シンプルな組み立てに。
味わいが軽快な新酒とは、強いて言えば「あっさり同士」。酒と肴の関係は良好だ。
おおっ、タラの身が旨い。
まず、筆者を喜ばせたのは男山と出汁の相性の良さだ。
酒のすっきりとした香味に、出汁の旨みがより引き立って感じる。だから具まで美味しく感じるのか。
また、鍋を食べながら呑めば、酒の方も旨みがアップ。あっさりしたタラや豆腐もいいけれど、この酒ならタチや牡蠣など味のこってりした食材とも合いそう。
さて、晩酌は国士無双でも。
こちらはこちらで、また良いことが。
酒のおっとりとした旨さ、これがポン酢の味を引き立て美味しくしてくれている。
おかげで穏やかな白菜の風味まで膨らんで、美味しいの連鎖がここに。
また、男山同様、酒は肴を得て味わいが変化。
口当たりもすっきりと、味わいがちょいと辛口に転じたか。
これだから日本酒は面白い。楽しみ甲斐が実に奥深い。
酒類販売店および下記の酒蔵直売店で。
男山 酒造り資料館
住所/旭川市永山2条7丁目
電話/0166-47-7080
開館時間/9:00~17:00
休館日/年末年始
高砂酒造 明治酒蔵(直売店)
住所/旭川市宮下通17丁目
電話/0166-22-7480
開館時間/9:00~17:30
休館日/年末年始
なるべく専門用語を使わずカンタンに説明しましょう(実はそれが難しい)。
「しぼる(搾る)」は酒蔵の専門用語。ざっくり言うと酒の原料を「ろ過」すること。
ろ過は分かりますよね。濁った液体を澄んだ状態にすること。
酒の原料は、麹・米・水を混ぜ合わせ発酵させたもの。状態としては、どろどろとしている(甘酒を想像してみて)と思って頂きたい。
よく目にする透明な酒にするために、これをろ過する(しぼる)訳だが、その手法は、古来よりあるものとして・・・
○布袋にどろどろを詰め、上から圧力をかけ文字通り液体を「絞り出す」方法
○袋を吊るし液体をぽたぽたと下に落とす方法
・・・などがある。ろ過によって分離される液体が「清酒」、残った原料が「酒粕」だ。
酒粕はご存じですよね。スーパーなんかでも売ってる、甘酒の材料になるアレだ。
現代は『自動圧搾機』が主流。処理速度が旧来式に比べ断然速く、また品質向上も見込めるとされている。
が、国内にはあえて昔ながらの方法にこだわる酒蔵も多く、これにより独自の味わいを訴求している。
この記事のキュレーター
特別純米生原酒
精米歩合:55%
アルコール度:17度
価格 720ml 1,599円