2020年02月21日

【ふらりーと燗酒図鑑】4店の旨い焼燗 ※動画あり

昭和の酒場風情が人気のグルメスポットふらりーと。その中で、酒処としての風情をよりふくよかにしているのが、趣きある熱燗によるおもてなし。とりわけ呑兵衛を惹きつけるのが旨い「焼燗(やきかん)」だ。呑兵衛の筆者がずっと以前から通っている4軒の、心まで温めてくれた情緒ある焼燗を紹介したい。


寄ってらっしゃい ふらりーと

5.7小路 ふらりーと
住所:北海道旭川市5条通7丁目右6号 ・7号
駐車場:なし

焼燗とは

主に陶器の酒器に酒を入れ、直火で温めたもの。酒器や手法は以降に紹介するように様々だ。
日本酒は急速に加熱すると味わいにキレが増し辛口に変化するとされている。
何より見た目から美味しそう。これが焼燗の魅力だ。

焼鳥専門 ぎんねこ

まずは5条通り側、小路の入り口にある「ぎんねこ」から。
早くから開いてるので昼呑みにも重宝。

Photo:KOTA

 

見た目にも温かいハト燗で

同店の酒器は鳩徳利。よく「ハト燗」とも呼ばれる。由来は一目瞭然、その形状が羽根をたたんだハトのようだから。
日本のあちこちで生産されていて、色んな表情のハト燗があるのだ。

ちなみに、「ぎんねこ」と名の入った布は通称ざぶとん。直火のせいで熱くなった器を持ち上げるときに役立つ。

Photo:KOTA

 

まずは一合升で酒を計量し器に入れる。
店同様、升も相当に年季が入ってる。

Photo:KOTA

 

燗専用のガスコンロにのせ点火。
これまた年季の入ったコンロだ。

Photo:KOTA

 

酒は旭川の男山。燗で口当たりがすっきりなめらかになって美味。

店員さんが、熱いのがいいか、ぬるいのがいいか好みを聞いてくれるのもの嬉しい。
初めての方は「おまかせ」と言っておけばよいかと。つまり、「ぎんねこ」が旨いとするお勧めの温度が分かるというもの。

Photo:KOTA

 

この燗酒をやりながらの焼き鳥は格別なのだった。
焼燗の酒は冷めてもイケる。まろやかな旨味が味わえるのだ。

Photo:KOTA

 

店名:焼鳥専門 ぎんねこ
住所:5条通7丁目5.7小路ふらりーと内
電話番号:0166-22-4604
営業時間:13:00~22:00(L.O.21:30)
定休日:月曜
駐車場:なし

やき鳥 べてぃ

お次は、ぎんねこのお隣「べてぃ」。美しい女将さんがひとりで切り盛りしている。

Photo:KOTA

 

べてぃはレアな燗瓶で

「べてぃ」といえばコレ、かっぱ天国。昭和の人間には懐かしい絵柄である。

Photo:KOTA

 

細かい話だが、コレは徳利と呼ぶにあらず。燗瓶(かんぴん)という酒器で、今やレアもの。
ガスコンロで加熱。点火はマッチで。徳用マッチというのが泣かせる。

女将さんが、燗瓶を火に乗せたり、火から外したり、そんな細かな動作を繰り返しながら燗の具合を整えてくれる。
ちなみに、このコンロがこれまたレアもので、壊れたら代えが利かないのと女将さんは嘆く。

Photo:KOTA

 

かっぱ天国といい、醤油ビンといい、何もかもが絵になる。

店名:やき鳥 べてぃ
住所:5条通7丁目5.7小路ふらりーと内
電話:0166-22-5718
営業時間:17:00~22:00
定休日:日曜
駐車場:なし

炉端 楽

ところは変わって、「べてぃ」の向かい側の並びにある「楽(がく)」へ。

Photo:KOTA

 

カウンター越しにある炉で海鮮や肉類を炭焼きしてくれる店だ。炉端という割に実は刺身も良い。

Photo:KOTA

 

ここの焼燗は前掲のぎんねこに似たハト燗であるが、造りが違う。
塗りのない素焼きの徳利は、これはこれで酒は独特の味わいとなる。

Photo:KOTA

 

炭で炙る素焼きのハト燗

ハト燗は炭の上に置いて加熱する。これぞ炉端焼きの店らしい熱燗だ。
炭の遠赤外線効果で、酒はムラなく温まりまろやかな熱燗に。

Photo:KOTA

 

鳩が炉端でひと休み。いい絵だな。

Photo:KOTA

 

店名:炉端 楽
住所:5条通7丁目5.7小路ふらりーと内
電話番号:0166-22-5585
営業時間:18:00〜23:00
定休日:日曜
駐車場:なし

やきとり よしや

さてさて、ラストを飾るのは「よしや」。前掲べてぃの隣にある店。
ふらりーと屈指の老舗である。

Photo:KOTA

 

ここも燗酒はコップ酒で頂く。ちょっと違うのはお店のベテランのお姉さまが並々と注いでくれること。いわゆる「もっきり」というやつだ。

Photo:KOTA

 

もっきりの燗は土瓶で付ける

カウンターに鎮座するのは土瓶たち。これで燗をつけるのが「よしや」流。いわゆる土瓶燗というやつだ。

Photo:KOTA

 

土瓶に酒を入れガス火にかける。熱々になったところで、お姉さまが客の目前に置いたコップにどぼどぼと注ぐという流れ。こぼれる寸前でぷたりと止める、その所作がとにかく名人級。

サイレントムービーを作ったのでご覧あれ。

酒が注がれたら、不用意にコップを持ち上げてはいけない。酒がこぼれる。勿体ない。

こういう場合は、コップに顔を近づけて唇をそっと差し出し、酒をすする。酒場用語で「迎えに行く」というやつだ。
はしたない? いやいや、こういう場所ではこれが粋だ。上品ぶる方が野暮というもの。

ともかく、燗酒は甘辛のタレとの相性が滅法良い。

Photo:KOTA

 

店名:やきとり よしや
住所:5条通7丁目5.7小路ふらりーと内
電話番号:0166-22-1616
営業時間:15:30〜21:30
定休日:日曜
駐車場:なし

愛でるという呑み方

ご覧いただいた焼燗は、どれも各店がそれぞれに工夫した、美味しい酒のカタチだ。
そうした趣向も味のうち。ちょっとだけ、器に目をやって趣を味わってみよう。その燗酒の旨さは格別と思う。


この記事のキュレーター

美味しいもの、旨い酒を味わう時間が何より大事。
不惑の呑兵衛を目指すべく、きき酒師の資格を取得。

・SSI認定FBO公認 きき酒師
・日本酒WEBメディア SAKE TIMES ライター