2021年10月25日

気分はブラタモリ【旭川】旧函館本線廃線跡ウォッチング

石狩川に沿って走る旭川サイクリングロード(近文/旭西橋―深川/神納橋)。これがかつて線路だったことをご存知の方は多いと思います。実はまだ、ここには旧国鉄時代の遺物が多数あり、鉄道マニアをわくわくさせる、いわば鉄道遺構ロードでもあるんです。


廃線探索の楽しみ

そう、旭川にもあるんですよ。魅惑の廃線跡が。数年前、テレビ「ブラタモリ」のロケが旭川で実施されましたが、ここを鉄道遺構をネタにすれば良かったのに。タモリさんもワクワクしてくれたかも。そんなふうに思う筆者であります。

かつて線路があった痕跡を自分の足でたどり、まず、走る列車の姿や音など、想像を楽しむ。
そして、遺物の発見。止まった時間を目の当たりにし、ノスタルジックに浸る。
これが廃線歩きの楽しみです。
その面白さは考古学にも似て、まさに奥深い!のであります。

探索地点概要

今回ブラ歩きした場所を下の画像に記しました。

 

滝川から旭川まで、鉄道が開通したのは明治31年(1898年)。
上画像ではオレンジ色のラインが当時、線路が走っていた箇所です。

71年が経ち、昭和44年(1969年)。函館本線「納内~伊納駅」間がトンネル化により線路が付け替えられ、同区間は廃線となりました。

廃線はその翌年、「旭川サイクリングロード」として整備され生まれ変わり現在に至ります。
上画像、白いラインが新しい、現在の線路です。破線部分はトンネル区間です。

それでは見ていきましょうか。
筆者は江神橋よりサイクリングロードに侵入。下見を兼ね、一旦、神居古潭方面、つまり第1章と記した辺りまで行きました。
本当は、探索は神居古潭からスタートしたかのですが、そこから伊納ゲートまでの区間は落石の危険があるため通行止め。下の画像、柵の向こうが神居古潭方面です。
場所は、上の地図でいうと画像の下の切れ端あたりです。

 

第1章 伊納駅跡でさらに古い駅を発見

先ほどのゲートあたりから近文方面に向けて進みます。
下画像、向かって右手には石狩川が並行しています。川の流れでいうと、流れに逆らって上流に向かうカタチになりますね。

 

中央、サイクリングロードはアスファルトで舗装されています。
その幅から、かつての線路は単線だったことが分かります。

ここをさらに行くと、やがて左手に見えてくるのが、今年3月で廃駅となった旧伊納駅のホームです。待合室は撤去されましたがホームが残っていました(立入禁止)。

左:電化された現函館本線 右:サイクリングロード

 

昔々は女子高生で賑わっていた(付近に北都商業があった)ここも、今ではごらんの有様。

残されたホームも立派な鉄道遺構ですが、注目すべきはサイクリングロード右裾にある物体。
これぞ鉄道遺構。サイクリングロード、すなわち昔ここに線路が走っていた頃ここにあった伊納駅のホームなんです。

 

左の駅跡が旧伊納駅なら、このホームは旧旧伊納駅ということになりましょうか。
駅舎はホームの、画像でいうなら右手にあったようです。

それにしても52年前に使われていたホームが残っていることがスゴイ。

 

それもそのはず。プラットホームの土台は鉄骨とコンクリートブロックで造られていて、いかにも頑丈。
鉄骨? いやいや、これは線路のレールと思われます。鉄道関係の建築物には、このようにレールを再利用することが多いのです。タモリさんなら一発で見抜いたことでしょう。

上に雑草が生い茂っているのは、たぶんホーム面は舗装されておらず、砂利敷になっていたからだと筆者は推測します。

 

旧伊納駅を通り過ぎ、振り返ってみれば、ここがホーム近文駅側の端。
ホームはかなり長いです。田舎駅なのに、というと伊納に失礼ですが、昔は貨物の取り扱いがあったから相応の長さだったのかも知れません。

で、再び視線を近文方面に戻し、進みます。

 

ほどなく行くと、左手には春日青少年の家ですよ、という道(伊納大橋から入る)と交差します。
え、バス停のサインがあるけど、バス、来るのかな。

 

市のHPで調べたら、春日青少年の家、というのは現存してるよう。ちなみに家、というよりキャンプ場なんかがある野外活動施設らしいです。

第2章 軌跡むんむん! 古い擁壁に萌える!

さらに進みます。
出くわしたのは、現函館本線と旧函館本線(サイクリングロード)が並行する、ちょっとしたノスタルジックゾーン。

 

かつて蒸気機関車が走った線路跡の横を、特急電車が高速で走り抜けます。

 

右側の草地は石狩川の堤防になっていて、その上は車道。
旭川サイクリングロードにおいては、ここだけ自転車専用道路と車道が交差しているので、車で向かう場合は通行にはご注意を。

 

右の広い方が、江神橋まで行くことのできる車道(その先、函館本線と交差し森の中へ)。
左がサイクリングロードです。この先が、ドキドキの「当時のものゾーン」なのだ。

 

おおっ! 古い落石防護設備が。
草木にまみれたコンクリートブロックによる土台と防護柵が、時の流れを物語ります。

 

整然と積まれたコンクリートブロック

 

なんかスゴイことになってます

 
 

目線を上にやると、すごい岩石。
ここに線路を敷いたとは、何たる大事業でしょう。当時の苦労は大変なものだったことでしょう。

と、面白いものを発見!!

 

何やら、銘板のようなものがありますよ。

 

苔むしたブロックの中に、銘板を発見。工事の期日は記載されていませんが、分かることは、少なくともこれが国鉄時代のものであること(そもそも、線路の付け替えはJRでなく国鉄時代ですが ^^;)。

設計/旭川鉄道管理局旭川保線区

昔は旭鉄局なんて呼ばれてましたねえ(ちょっと取引があった)。
区の文字がまず古い。そして名称も国鉄時代のもので、JRとなった今ではこの組織名は旭川保線所となっています。

なんだか、ここだけ時間が止まってました。
じーんと来た筆者なのでした。

 

古い擁壁区間(勝手に名付けるな)を過ぎると、現線路はやがてトンネルから顔を出し、再び線路とサイクリングロードが並行します。

 

第3章 新旧線路の平行で時の流れを実感

先にも申しましたように、新旧、いや、現旧が並行します。
特段、遺構!というものは見当たりません。

 

いやいや、何を言うか。
サイクリングロードそのものが鉄道遺構なのだよ。
かつての軌道を歩きながら、いろいろ思いを巡らせることに価値があることを忘れちゃいかんよ。

と、そこに石狩川に流れ込む支流を渡る橋がありました。
現函館本線の鉄橋も並んでいます。

 
 

よく見てみると、新しい。
サイクリングロードの整備に合わせて架け替えられたものと思われます。

 

江神橋が見えてきました。
サイクリングロードはその下をくぐるカタチで進んでいきます。

左手に柵があります。が、これは昔のものでなく、線路があるから立ち入り禁止!のため取り付けられたもののようです。
川を渡るために作られた橋ですが、たもとは跨線橋になっていて、上画面左側に線路が走っています。

 

サイクリングロード横の線路は、路面より高い位置にあり、走る電車を下から見上げるような恰好になります。
なので、上のようにローアングルで電車を撮ることができる、ちょっとした撮り鉄スポットでもあります。

この先は、あれ、行き止まりかな?

 
 

行き止まりではありません。
サイクリングロードは石狩川の堤防を越すために上り坂となります。

これを登り切りますと・・・

サイクリングロードは堤防の上を進みます。

筆者の推測ですが、この部分は旧線跡ではないような気が。
サイクリングロードとして取り付けられただけで、本来の線路はもっと違ったカタチで敷かれていたと思います。

 

崖を迂回するように、サイクリングロードは方向を変えます。

 

ご老人に連れられたワンコにガン見されながら(笑)、筆者も道を辿ります。

すると再び、古い擁壁が姿を現しました。
なにせ険しい崖の下に線路が敷かれているわけですから、落石防護の備えは欠かせません。

 

こちらの擁壁はコンクリートだけでなく石も使われているようです。
まるで石垣。
この擁壁の上に城でもあるような堂々とした風格さえ感じます。

 

そして、整然としたコンクリート造の擁壁。
工法が違うのは、作られた時期が違うからなのでしょうか(不明)。

と、そこに通行止めのバリケードが。
何のための封鎖なのか、一切表示はありません。管理者もちょっと不親切。

ともあれ、鉄道遺構散策はこれにて終了。

 

この先もサイクリングロードは続きますが、市のHPによると河川工事のための通行止めのようです。

と、この記事を制作していた10月中旬。この通行止めが解除になったとか。
機会があれば、本作の続編のために散策をしようと思います。

散策後記

今回は旧伊納駅のさらに古い時代の形跡、そして、線路を守っていた落石防止の擁壁を確認することが出来ました。
掲載を見合わせましたが、他にも線路があった当時のものと思われる小さな造作物も数々ありました。
なので、通行止めになっているエリアにはもっといろいろあるんだろうなと、思いは募ります。

今回の廃線に関連する記事として、昨年書いた神居古潭の記事も、よかったらご覧ください。

【鉄道マニア必見】秋の神居古潭に行ってみよう! | asatan

https://asatan.com/articles/1728

旭川八景のひとつ神居古潭。勇壮な石狩川の流れと渓谷両岸の四季を彩る木々が美しい景勝地ですが、鉄道の歴史に触れられる絶好のスポットでもあります。ちょっと視線を変えるともっと面白い、そんな神居古潭を歩いてみませんか。


この記事のキュレーター

美味しいもの、旨い酒を味わう時間が何より大事。
不惑の呑兵衛を目指すべく、きき酒師の資格を取得。

・SSI認定FBO公認 きき酒師
・日本酒WEBメディア SAKE TIMES ライター