2022年05月21日

【粋を味わう】蕎麦前を楽しめるそば店3選

酒を楽しみながら蕎麦が出てくるのを待つ「蕎麦前」。他の飲食店にはない蕎麦屋ならではの習慣です。蕎麦が好き、何より酒が好きという筆者の、蕎麦前のレポートをお届けします。 ※情報は取材当時のものであり現在は内容が変更されている場合がありますのでご了承ください


蕎麦前とは

蕎麦前とは、蕎麦の食前に小料理を肴に酒を楽しむこと。または、それらツマミを意味する言葉。肴は旬の小鉢や板わさ、玉子焼き、蕎麦味噌、天ぷらなどが一般的。
食前といっても和食や洋食でいう「前菜」とは違う。蕎麦前はあくまでも飲酒することを言う、江戸の頃からある酒好きのための蕎麦文化なのだ。

北のそば 和佳亭

 

市民によく知られた人気店。ゆえに、特に昼時はとても混み合っているので、酒も楽しもうというなら少し時間を外すのが得策。慌ただしい中、お店に手間を掛けさせるのは野暮ってもんだ。何より、バタバタしてる中で酒を飲んでも旨いかどうか。

価格が改定されている場合があります

 

蕎麦屋にして刺身まであるという豪華な単品料理。
筆者は蕎麦前で頂くが、もちろん、酒を飲まなくたって、蕎麦と一緒に味わうことは可能だ。

価格が改定されている場合があります

 

バラエティあふれるアルコールのメニュー。ああ、筆者がこよなく愛す男山の生もと純米もあるではないか。
店は、蕎麦だけじゃなく、お酒もどうぞ飲んでくださいと言ってるようなもの。
だから筆者は遠慮しない(笑)

 

まずは漬物で。早く出てくるからついつい頼んでしまう。
お通しが漬物の場合があるので要らないといえば要らないが、自家製のあっさりした漬物での飲み始めは実にしっくり来る。

 

元来、漬物だけでも事足りるのだが、メニューに見つけ、つい頼んだ「カツとじ鍋」。
メニューにカツ丼セットなどがあるくらいだから、その美味しさはお手の物だろう。
ちなみに、これをきっかけに酒はさらに進み、お代わりを注文。

 

この日は「梅おろし」で締める。
これに冷たい酒がとても良いのである。という訳で、もう1本お代わり。
もう、蕎麦前ならぬ蕎麦中(そんな言葉はない)状態であるが、これも蕎麦と酒の美味しい楽しみ方なのだ。
あながち飲兵衛の言い訳ではないと思う。

お店情報

店名:北のそば 和佳亭
住所:旭川市1条通20丁目
電話番号:0166-38-6188
営業時間:11:00〜15:30 / 16:30〜20:00
定休日:第1・第3・第5木曜
駐車場:あり

そば処 名人傍

 

ところは旭川駅前。地域で働く方々や買物ついでのお方まで、蕎麦好きに知られた店。もつ蕎麦なんかも人気のようだ。
店の外には、おすすめメニューの写真がいろいろ貼ってあって、その中に燦然と輝く単品メニューの1枚。

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お仕事帰りに板かまぼこでも食べませんか。
と言ってるわけもなく、もうこれは、どうぞ飲んでってください!と言っているようにしか見えない。

というわけで、まずはビール。

 

さりげなく供される「かきピー」がウレシイ。
冷たいビールで、仕事で疲れた体がすっと癒されるのだった。
実際にはそんなに働いてないくせに、ビールを飲むと世の中そういうことにしてしまうのが飲兵衛のいいところ。

 

この日のアテは「もつ煮」をチョイス。
どっちかというと、あっさり目に炊いてあって、キンカンがふわりと旨いのだ。

気付くと、あれ?ビールが蒸発してる~!(飲み切っただけだろ)

 

ということで、酒チェン。
いかにも業務用的な男山も、これを選ぶ屈託のなさが、こういう店の嬉しいところ。
酒が変わればお通しも変わる。これだけでも酒が進んでしまうので困ったものである。

 

まったくもって、酒とともに食べる蕎麦は、蕎麦と一緒に飲む酒は何て美味しいのだろう。
いつも同じ感嘆を繰り返す筆者であるが、これでゆったりと過ごす時間はもう至福としか言いようがない。
蕎麦屋には居酒屋の「もっと飲みませんか」的な雰囲気がないのが良い。

いえ、居酒屋に行けば、その「もっと飲みませんか」なムードに呼応してガブガブ飲むんだけどね(笑)。

お店情報

店名:そば処 名人傍
住所:旭川市1条通8丁目
電話:0166-23-1929
営業時間:11:00~19:30
定休日:日曜日
駐車場:あり(カーレストと提携)

蕎麦 雪屋

 

さんろく街という土地柄、夜の営業?と思っている方も多いようだが、日中から営業中。
なので、筆者も夜だけでなく休日など、ちょっと遅めな昼食をゆっくり楽しむべく訪ねることも。

価格が改定されている場合があります

 

酒肴の一品と銘打ってずらりと粋な小料理が。面積では蕎麦とあまり変わりがない、なんという力の入れよう。そう、これが雪屋なのだ。
ここの店主は分かってらっしゃる。蕎麦屋とは飲むところですよ、居酒屋のルーツは蕎麦屋なんですよ(諸説あり)と、昔ながらの蕎麦屋を演出してくださった(と筆者は思いたい)。

また、この店はいい酒を置いていて、その点もありがたい。

 

「ホヤの塩辛」だなんて、シブいツマミも置いある。
これがまた麹の旨味が効いていて上出来。酒も、いきなりのスタートダッシュである。

 

そして、おすすめの「とり天婦羅」を。
ネギの飾り方、また塩を添えたりと、そつの無さはさすが店主は和食のお方。
さっきの塩辛も含め和の名店といったクオリティに、酒が進むこと必至。はい、もちろん飲みましたとも。

と言いつつ、蕎麦屋で長居は野暮というもの。
しめの蕎麦を頼んでおかなきゃ。

 

同店は昼時に限り大盛りにしても通常料金。
だからという訳じゃないが「大もり」を注文。酒をやっているうちに、すっかり食欲が出てしまったもので。

残りの酒も手伝って、大もりもするっと完食したのだった。

お店情報

店名:蕎麦雪屋
住所:旭川市3条通7丁目
電話番号:0166-23-0011
営業時間:11:30~14:00 / 17:00~翌2:00(金土祝前2:30)
定休日:日曜・祝日
駐車場:なし

蕎麦前の心得

まずは、酔っぱらわないこと。酒を飲ませる店なのに?と思うかもしれないが、ここは蕎麦屋。多くの客は蕎麦の香りを楽しみに来ている訳で、酔っぱらいの存在は甚だ迷惑である。

次に、長居しないこと。会話を楽しむうち、ついゆっくりしてしまうのは仕方ないとしても、暇をつぶすために居る場所ではない。蕎麦屋では、さっと食べてすっと席を立つのが粋と心得たい(主観論です)。

そして、蕎麦は食うべし。ツマミでお腹がいっぱいになってしまって、もうご馳走さん。というのは論外。店は「いいですよ」と言うかもしれないが、蕎麦屋はそばを食べるところ。野暮な行いは極力慎みたいもの。


この記事のキュレーター

美味しいもの、旨い酒を味わう時間が何より大事。
不惑の呑兵衛を目指すべく、きき酒師の資格を取得。

・SSI認定FBO公認 きき酒師
・日本酒WEBメディア SAKE TIMES ライター