2022年06月01日

旭川から行く【廃駅探訪】廃止後も賑わう駅風景

進むJR北海道の廃線、廃駅。そんな中、線路はなくとも人が通う廃駅がある。気軽な観光気分で、ノスタルジックなひとときにふれてみませんか。


留萌本線 旧増毛駅

その歴史は

まず紹介するのはJR留萌線、旧増毛駅。廃駅になったのは2016年(平成28年)12月。留萌本線の留萌駅ー増毛駅間の廃止に伴い、長い歴史に幕を閉じた。

同駅が開業したのは1921年。時代は大正である。今では留萌本線の終着駅として知られるが、港湾輸送を目的に建設されたことを考えれば、その位置づけは留萌本線の始発駅と呼ぶべきではないかと筆者は考える。
まあ、最果てイメージの方がドラマチックなムードがして、イメージは良いんでしょうが。だから映画(駅・STATIONなど)の舞台にもなったりして。

しかし、1978年(昭和53年)に貨物取扱い廃止。自家用車の普及のせいだろう、その4年後には、駅は完全無人化された。ついには2015年(平成27年)、JRが廃線・廃駅を関係自治体に申し出るに至る。

そして今

 

左側、向こうに見えるのが旧駅舎だ。
駅舎は増毛町がJRから無償譲渡を受け改修。周辺設備はJRが一部費用負担したとのこと。
おかげで、まちの新しい観光拠点が誕生したという具合だ。

ちなみに、右側はバスの待合所。
今や町民の足は路線バスに取って代わった。

 

駅舎は見事に復元されている。建物外観は周辺の歴史的建造物と調和するよう板張りされており、これは復元というよりリニューアルか。
ちなみに左側の棟は広くキレイなトイレ。
無人化となった折、駅舎は縮小されたそうだが、その分もしっかり元通りに。

ひとまず、外観を見て回りましょうかね。

 

上は、前掲の駅舎の裏側、ホーム側だ。
終着駅のシンボル、車止めとともに線路が残されている。駅舎、外側からは改札口の面影は見つけられない。無人化をきっかけに無くなったままのよう。
向かって左側、線路が延びる方に、ホームが残されている。
廃線時の構造は単式1面1線。

 
 
 

ここは格好の記念撮影スポット。
天気の良い休日、なんとか人を避けてこれを撮ることが出来たが、いつもは大体誰かが立っている(笑)

で、線路を挟んだこの反対側はというと・・・

 

鰊でも栄えた増毛町。当時、町はさぞかし賑わっていたことだろう。駅は貨物の取り扱いがあり、それ用の引込線があったであろうことは、今は駐車場となった広い敷地にその面影を感じ取れる。
本来は列車で訪れるべき場所に車が大挙してやってくる光景は、何とも皮肉だ。

それでは、駅舎の中をご案内。

 

駅の原風景には間違っても無かったであろう大きな旗には孝子屋(ここや)と。
孝子屋ぐるめ食品という地元企業が、内部で魚介類の加工品をメインにお土産品などを販売するショップを展開している。

 

館内ではドリンクや軽食を販売。「孝子屋」看板の奥の部屋には加工品がずらり。
スタッフも複数常駐しており、対応はとても良い。

地元産の果物を使ったジュースとか・・・

 

タコ飯とか・・・食欲を刺激するこれはヤバい(笑)

 

店内は地元色ある美味しさが満載だ。
おかげで観光に訪れた方々の入店は引きも切らない。

 

ガマンできず、甘えび汁を購入。
増毛町の特産品、エビの出汁が濃厚な味噌汁に、旅の疲れが癒される。

 

購入した食品は、館内のゆったりとした休憩スペースで飲食可能。
画像、奥のスペースでは増毛駅の歴史を綴った展示が行われている。

 

最寄りには映画の舞台となった建物も。
また、表通りは飲食店が数多くあり、町のPRが効いてか夏季はスゴイ賑わいだ。
駅があった頃はどちらかと言うとひっそりしてたけどなぁ・・・と、何とも釈然としない筆者である。

SPOT DATA

住所 / 増毛郡増毛町弁天町1丁目
開館 / 9:00~17:00(土日祝は16:00)
休館 / 年末年始
孝子屋TEL / 0164-53-1213

函館本線 旧神居古潭駅

その歴史は

続いては函館本線旧神居古潭駅。廃駅になったのは1969年(昭和44年)9月。
同年、同駅に隣接する納内駅ー伊納駅間がトンネル化されたことで新線が開通。よって旧線に取り残された形となった同駅はお役御免となった次第。

その歴史は長い。開業したのは1901年(明治34年)。
って、しれっと言ってみたが120年前! この厳しい自然環境の中に駅を造るとは。当時、鉄道網の整備は国策であったとはいえ、工事の厳しさは想像を絶し、そのエネルギッシュな開拓魂には感銘を受けるばかり。

そして今

 

これが旧駅舎。森の中に佇む駅舎は、さながら避暑地の別荘のようで洒落ている。
1989年(平成元年)に復元されたもので、明治時代の洋館建築として旭川市指定文化財に。現在も大切に管理されながら、旭川市が誇る一大景勝地「神居古潭」の休憩スポットとして活用されている。
本来は、旭川サイクリングロードの休憩地点とての役割もあったが、付近のサイクリングロードは崖崩れなどにより閉鎖されていて、自転車で訪れる者はいない。

 

改札口を出るとホーム跡が。まるで石垣を組んだような造りに歴史を感じる。
ホームは都会でもないのにとても長い。筆者の目測だが、列車なら7~8両は停車できそうなほどだ。
かつては貨物の取扱があったり、また特急列車が停車していた、との痕跡がまじまじと。

廃線時、ホームはこの画像と駅側の相対式、2面2線の構造だった。

 
 

内部はウッディなインテリアが施され、休憩スペースが。
また、わずかであるが周辺の観光案内と駅の歴史がパネルで展示されている。

 

ホームからかつて線路跡(サイクリングロード)を行くと、蒸気機関車が3両 (29638、D51 6、C57 201) が静態保存されている。SLに関しては筆者は熟知していないが展示のC57はかなりレアな車体だとか。

 

足取りは逆戻りとなるが、駅には石狩川に掛かる吊り橋を渡って行く(この画像の地点までは車で行ける)。

 

余談となるが、吊り橋は、漫画「ゴールデンカムイ」の、ある圧巻のシーンに登場。漫画では古い時代の橋が描かれているが、今では大きくて安全。

・・・等々、SLや歴史ある吊り橋といった見どころも満載。駅舎の他にも訪ねる価値は大きいスポットだ。

SPOT DATA

住所 / 旭川市神居町神居古潭
見学期間 / 春季~秋季間無休で開放されているが、冬期間は立入禁止となる


この記事のキュレーター

美味しいもの、旨い酒を味わう時間が何より大事。
不惑の呑兵衛を目指すべく、きき酒師の資格を取得。

・SSI認定FBO公認 きき酒師
・日本酒WEBメディア SAKE TIMES ライター