2022年11月25日
鴨(かも)南蛮。昔からあるそば屋の定番にして、本来は今時期が旬とされるメニューだ。が、意外と食べたことがないというヒトもちらほらと。ということで、かも南蛮の簡単なウンチクと、その食レポをお届け致します。 ※情報は取材時のものであり、現在、料理の内容や価格が変更されている場合がありますのでご了承ください
ざっくり言えば、そばに鴨肉と南蛮(ネギのこと)をのせ熱いつゆをかけたものをかも南蛮という。江戸時代にネギを南蛮と呼んだ(諸説あり)その伝統がそば屋で受け継がれている。そば粉を麺にしてつゆで食べるスタイルが確立した江戸後期。その頃からかも南蛮はあったらしい。
当時、鳥を食べるといえば、もっぱら野生のマガモ。今じゃメジャーな鶏(ニワトリは)も、当時は高級食材で、卵は食しても肉は庶民の口には入らなかったとか。
秋から冬。野生のカモは寒さに備え体に脂肪を蓄える性質がある。この時期のカモは脂がのっていて美味しいとされ、かつ、そばつゆに合うということで、かも南蛮は季節のそばとして定着したものと思われる。
現代では、いつでも品質の安定した養殖の合鴨(あいがも)が出回り、かつ冷凍保存できるのでかも南蛮は季節感を失ってしまった。が、蕎麦好きとしては、そばの伝統文化を味わうべく、この時期に「ああ、食べたいな」と思うのである。
伝統文化はさておき、今時期に脂ののったカモとネギというだけで、身体が温まりそう。なんだかんだで、やっぱり今時期におすすめしたい筆者なのである。
さんろく街の中心で「そば」の旨さを発信する店。
歴史ある老舗だもの、かも南蛮にハズレはないと筆者の信用は絶大だ。
カモと南蛮(ねぎ)。それ以外なにも引かない、なにも足さない(ウイスキーの広告でこんなコピーありましたな)。
もう、かも南蛮の典型。見本中の見本とも言うべきかも南蛮の登場だ。
ちなみに、品名は「鴨南(かもなん)」。
南蛮を略して、こう呼ぶ店はけっこう多い。
まず目につくのが、この清廉潔白なネギ。
そういや、ネギだってこれからがいっそう美味しくなる。
やっぱ、かも南蛮は旬のそばと言って過言ではないなと確信。
肉はむちっとした歯ごたえ、香りは思いのほか穏やかだ。
ときどき、カモってくさみがあるんでしょ(アタシはニガテです)、と言うヒトがいるけれど、それは思い違いというもの。確かに香りはあるが、臭いというものではない。その独特な香味がカモなんだけどなあと思う筆者。
そうした点では、このカモは至極食べやすいかも。「カモ」と「かも」でシャレたわけじゃないですが。
ともかくは、はま長さんの、きりっとかえしの効いたおつゆにまみれ、カモの旨味が穏やかに引き立つ一杯であった。
また、大き目なネギも大正解。むちっとしたカモと、食べ応えがきちんと比例している。
「鴨がネギしょってやって来た」というセリフがあるでしょ。
つい、そんな絵を撮ってみたくなっちゃうんだよね(笑)
でも、こうして食べるとより旨いことは確か。
店名:は満長 本店
住所:旭川市3条通6丁目
電話番号:0166-22-2731
営業時間:11:30~14:00 / 16:00~01:30
定休日:日曜
駐車場:なし
メニュー豊富な有名店で修業を積んだご亭主。
多彩な味わいを提供してくれる中、定番メニューにも手を抜かない。
鴨南蛮(1,120円)
前掲の「鴨南」とはぜんぜん違うでしょ。これもまた店の個性。
かも南蛮もいろいろである。
まずは、カモからしみ出た脂が旨そう。
漫画家・東海林さだおさんがエッセイでかも南蛮愛を語っていたのを思い出す。
鴨南蛮の魅力は、おつゆの表面にキラキラ浮かぶ無数の脂にある。
中略 きらきら星のつらなり。これを見ただけで、
「鴨南蛮をとってよかった、本当に良かった」と心の底から思う。
筆者もまさに同感である。
このキラキラには、そばを美味しくする成分がたっぷり入っていると信じたい。
そうそう、断じて言っておくが、脂はけっしてギトギトしてはいない。
そして、おもむろに食べてみれば、肉の味がまた絶妙だ。
ひとくちで、おおっ、これだよコレ、と思った筆者。
ときどき、カモってどんな味?と尋ねられるが、カモはカモの味としか答えようがない(笑)。
たとえそれが養殖のカモであっても、独特の野趣(いい意味でクセとも言う)があり、愛好家にはこれが堪能のポイントだろう。
上画像、よく見るとゴマが散りばめられている。
実は、このゴマがとても良い風味を醸し出し、かも南蛮の、特におつゆの旨味を豊かに高めている。
たかがゴマと思うかもしれないが、後半、おつゆが美味しくて思わず飲み干してしまった。
おっと、紹介を忘れるところだった。
同店のかも南蛮には、薬味のネギとともにおろし生姜が添えられている。
まずは少し食べてから生姜投入で味変。
これにより、おつゆやカモがいっそう味わい深い。
いやはや、先ほどのゴマといい、細かいところに配慮の効いたそばは実に食べ甲斐があり楽しい。
店名:そば処 季白
住所:旭川市東旭川南1条5丁目
電話番号:0166-73-9699
営業時間:11:00~20:00
定休日:不定休
味の店というだけあって、趣向を凝らした味なメニューが豊富。旨いもの好きの筆者には頼りになる店のひとつだ。
でも、かも南蛮はかも南蛮。アイディアメニューでなし、どうしたってフツーだよね?
と思いきや・・・
鴨南(1,000円)
・・・ん?
これはカニカマかな。
やってくれますねえ、そば菊さん。
やっぱり、何につけただじゃ済まさない創作意欲には脱帽だ。
カモはなかなかに脂がのっていて、旨味がじわじわとにじみ出てくるような歯応えも良い。
カモがおつゆに合っているのか、おつゆがカモに合っているのか、ともかく相性も絶妙だ。
そば菊おなじみの素朴なそばも、カモの風味をよく引き立てる。
あるいは、カモの旨味にまみれて、そばもまた旨し。
カニカマは、箸休めというところか。
ラーメンのナルトのようなつもりで食べてみれば、そばつゆにカニカマの甘味は悪くない。
店名:味の店 そば菊
住所:旭川市永山3条9丁目
電話:0166-47-0972
営業時間:11:00〜14:30、17:00〜20:00
定休日:日曜日 火曜・水曜の夜
駐車場:あり
いかがでしたか。
かも南蛮は、いかにも滋養ありげで身体が温まりそうなそば、そんな感じがするでしょう。
ちなみに
カモ肉は鶏肉よりも低カロリーな上に、健康と美容に欠かせないビタミンB群がたっぷり。特にビタミンB2は鶏肉の4倍近くあり、コラーゲンも豊富なんだそうな。
また、鉄が鶏肉の約10倍あり、疲労回復や貧血予防などが期待できる健康食材とされていて・・・
とか何とか、まあ固い話はさて置き、たまにカモいかがです。
じっくりと味わってみませんか。
この記事のキュレーター
鴨南(957円)