2023年02月17日
彫刻家の素描は,極めて触覚的であり,描かれた対象の表面の質感や奥行き感を強く感じさせるものとなっています。彫刻家の素描のその様な特徴は,三次元の世界を二次元の中に取り込もうとする画家の素描とは感覚的な相違を伴っており,独自の様相を見せます。 本展では,彫刻美術館が収蔵する彫刻家の平面作品の中から,コンテや鉛筆などを駆使して描かれた彫刻家の触覚的感覚に秀でた素描作品を紹介します。
「彫刻とは,根本的には触覚空間の芸術である。彫刻空間とは,触覚空間であるとも言える。
私たちは対象に手をのばし,対象を手さぐる。陶器,ガラスに私たちはそのもののオブジェ感を知る。茶碗やコップの機能的外観の美しさより,彫刻家にとって,これが第一義的な美の要素たりうる。」(『柳原義達美術論集 孤独なる彫刻』より)
戦後の日本彫刻界を牽引した一人である柳原義達が語るように,彫刻家は自身の触覚を拠り所として作品を作り上げている。そのため,彫刻家の素描は,対象の形態や動勢を把握するために習作的に描いたものも,彫刻作品の構成を練るために描いたものについても,どれも極めて触覚的であり,描かれた対象の表面の質感や奥行き感を強く感じさせるものとなっている。
彫刻家の素描のその様な特徴は,三次元の世界を二次元の中に取り込もうとする画家の素描とは感覚的な相違を伴っており,独自の様相を見せる。
「触覚空間」という言葉で彫刻家の感覚を示した柳原義達は,自宅で鳩を飼って素描を繰り返し,瞬間的な仕草やその際の身体の構造の把握に努めながら,鳩をモチーフとした一連の彫刻作品を制作した。
その素描は,短いストロークを無数に重ねる手法で描かれており,空気を含んだ羽のふわりとした軽い手触りを思わせるものとなっている。
本展では,彫刻美術館が収蔵する彫刻家の平面作品の中から,コンテや鉛筆などを駆使して描かれた彫刻家の触覚的感覚に秀でた素描作品を紹介する。
中原悌二郎記念旭川市彫刻美術館(旭川市春光5条7丁目)
令和5年2月11日(土曜日)~令和5年5月28日(日曜日)
午前9時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
一般450円/高校生300円/中学生以下無料
(観覧料には常設展観覧料を含む。各種減免規定あり。)
毎週月曜日(月曜日が祝日の場合は翌日)
0166-46-6277(中原悌二郎記念旭川市彫刻美術館)
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