2023年06月25日
ひと言に「そば」といっても種類がありまして、「更科そば」とか「田舎そば」とか、風味も違うので、これまたそば好きには面白い。皆さんは、どんなそばがお好みでしょうか。ということで、ここでは「田舎そば」をピックアップ。これを提供する人気のお店を紹介します。 ※情報は取材時のものであり、現在、料理の内容や価格が変更されている場合がありますので、予めご了承ください
と、タイトルを打ったが、実はけっこう難しい(曖昧とも言う)。
JAS(農林規格)などによって明確な定めがないからだ。
※以下、定義めいた情報には諸説あるようなので予めご了承ください
しかしながら、ざっくりと説明しますと、まず、蕎麦粉には種類があって、蕎麦の実を挽くと、中心部から出てくる粉が一番粉、次に出てくるのが二番粉、最も外側のものを三番粉と言う。
色は一番粉が最も白くに対して風味は淡白。二番、三番と外側に向かうと黒っぽくなり、風味が増す傾向にある。栄養価も高い。
こう言うと何となくお分かりだろう。あの真っ白な更科そばといわれるのは一番粉を使ったもの。色が褐色あるいは黒っぽい粉を使ったものが一般的に田舎そばとされ、一番から三番を併せた「挽きぐるみ」と呼ばれるそば粉を使っている。
しかし、麺類における「そばとは何ぞや」についてはJASなどが蕎麦粉の配合比率などで定義付けしているが、「田舎とは何ぞや」ついては、その範疇にあらず、なのだ(三番粉を何パーセント使うとか決まりはない)。
味を決めるのはそば屋の店主(製粉屋ともいう)。だから店によって風味や食感が違ってくるのだ。
そば雑学は巻末に続きます
「ああいうのがホントのそばだ!」とか「ああでないと食べた気がしない」などと、そば好き(田舎派)が口をそろえて絶賛するのが信濃路のそば。
ご覧の通り、色でいうなら紛れもなく田舎ふう。
でも、食べる者をとりこにするのは色だけじゃない。歯応え強烈にして、鼻に抜ける素朴な香りと口の中をいっぱいに満たす素材の旨味、そして痛快なのど越し。そばを味わう起承転結のすべてが印象的。
より食感を楽しみたいなら「冷」、風味を満喫したいなら「温」だろう(個人の印象です)。
信濃路のそばには、そんなこだわりを持っている筆者である。
ちなみに、紹介するのは「ちくわ天そば・冷」(温冷選べる)。
元来ちくわの天ぷらが好きな筆者であるが、これを出すそば屋は珍しい(ここ以外に知らない)上に、ちくわ1本の大きなこと。しかも2本!
その食感は弾力に満ち、食べ応えたるや、軽くぺろっとイケちゃいます、というものでは決してない。
で、このちくわが思いのほか田舎そばに合うんだな。
練り物ならではの旨味と田舎そばの風味、これがなかなかに良い相性なのである。
そばといえば定番のエビ天やイカ天などよりも、田舎そばを引き立てているなと、感心しきりの筆者だった。
店名:信濃路
住所:旭川市金星町1丁目
電話:0166-22-9263
営業時間:11:00~19:00
定休日:不定休
駐車場:あり
冒頭で「そばも種類いろいろ」と書いたが、食べ歩いていると、そのいろいろを提供する店が時々ある。
そのひとつが放哉。そばを注文するときに、田舎そば・更科そば・田舎十割(土曜日のみ)から好みの麺を選ぶことができる。
たとえば、「おろしを田舎そばで」てな具合で。
おろしそば(800円)
今回はおろしそばを頂いた。
盛りは多くも少なくもないごく普通。皿にすだれというのは、なかなかに涼しげでよい。
麺の色は確かに田舎そばふう。
だが、かおりは思いのほか控えめというか穏やかというか。
いかにも田舎そば!な殻の香りがするものではない。
麺はコシがしっかりとしていて、弾力あるその歯応えに口の中が快感に満たされる。
大根おろしをちょっと足して食べてみれば、大根のほんのりとした辛味が田舎そばならではの素朴な香りと旨味を膨らませ、大いに美味。
また、つゆも良い。そばとの相性よく、逆に言うならそばが引き立てるつゆの甘味に、食欲が増す。
こういうそばは飽きるということがない。
店名:じゃずそば放哉
住所:旭川市6条通7丁目エクセルA1ビル1F
電話番号:0166-85-6911
営業時間:11:30~15:00
定休日:日曜、祝日
駐車場:なし
これを田舎そばとするには、いささかの反論も聞こえて来ないわけではない。
みずみずしい味わいと喉越し。それは田舎そばの「素朴さ」とは違う「洗練」された旨さがあるからだ。
しかし、このそばに感じる「野趣」こそ、田舎そばらしいと思う。
ので、当記事においては一作のそれを田舎そばとして扱わせていただきたい。
冷やしたぬき(800円)
今回頂いたのは冷やしたぬき。天かすとともに添えられた海苔や青物がそばの風味を引き立てる、筆者の好物でもある。
いつもながら手打ちの風合い豊かな平打ち麺は、軽快なコシがありつるつる。口当たり喉越しとも極めて滑らかだ。
噛まずともするりと喉を下っていくような、ああ、この快感は一作ならでは。
ちなみに、薬味として添えてくれる紫蘇がとても良い。
そばの風味を素敵に味変。そんな感じで楽しませてくれるのは、さすが、そばを知り尽くした亭主の離れ技。
時系列は逆になるが、着席すると出てくる蕎麦湯に癒される筆者。
水代わりに蕎麦湯を出す店はちらほらあるが、つゆで味を調えくれるって、あまりない。
これ、冷や酒を出されるよりウレシイかも(いや、やっぱ酒かな)。
店名:そば処 一作
住所:旭川市北門町15丁目
電話:0166-52-6347
営業時間:11:00~14:00
定休日:水曜、木曜
駐車場:あり
さて、おさらいです。
「田舎そば」は白い一番粉から黒っぽい三番粉(もっと黒い四番粉もある)を併せた挽きぐるみと呼ばれるそば粉を使ったそば。麺は黒っぽく香りも高い。
その対極にあるのが一番粉だけを使った「更科(さらしな)そば」。「御膳そば」と呼ぶ地域も。
ふと、筆者は思った。
そばって、その2種類しかないの?
調べてみると、「並そば」というカテゴリーがあった。主に二番粉と三番粉を使ったもので、最も一般的なそばがこれに当たるそうな。店のメニューに特に表示がない場合は大概、並そばだと思われる。
また、二番粉をメインに使った「やぶそば」と呼ばれるものも。
田舎だ更科だという話をしていると、「おれは十割が好きだ」と口をはさんでくる人がたまにいる。が、それはそば粉の種類でなく、そばの打ち方(製麺のしかた)の話であってちょっと勘違いかも。
そばの打ち方としては、よく耳にするのが「二八(にはち)」。つなぎ(小麦粉)を2割、そば粉8割の配合で打ったそばだ。つなぎのつなぎを混ぜると粘りが増すので打ちやすく、かつ茹でやすい。
つなぎを使わずそば粉100%で打ったそばが「十割」。よりそばの風味が強いが、打ち方のの難易度は上がる。
そば通、あるいは、それを真似るヒトは「とわり」と呼んだりして、これを好む傾向がある。
この記事のキュレーター
ちくわ天そば(870円)