2023年08月28日

【旭川地酒レポート】 話題の2本を味わってみました

ニュースに事欠かない我らが旭川の酒蔵。その中から、筆者が食卓で楽しんだ、注目の2アイテムをご紹介。その魅力を皆さんにお伝えします。


若蔵2023 白麹仕込み ~高砂酒造

純米酒 若蔵2023 白麹仕込み 180ml(473円)

 

まずは高砂酒造から、7月下旬発売の新製品を。
同社の直売所「明治酒蔵」で、カップ酒とは面白いなと購入したが、720ml入り、いわゆる四合瓶も販売中(1,595円)。

ラベルに「若蔵(わかぞう)」とある。商品名には違いないが、まずこの「若蔵」の何たるかを少々説明しよう。
若蔵は、高砂酒造の若手スタッフによるプロジェクト名でもある。蔵人が若い心(初心・好奇心)を持ち、新しい製品造りへの挑戦を目的としているそう。
若蔵は若い蔵人(くらびと)に掛けた名前と捉えられるが、未熟な若者をあざけて言う「若造」にも掛けてあるような気がしないでもない。とすればこの点、謙虚で面白い。

 

で、この若蔵が毎年何かかにかの成果を発表、つまりプロジェクトによる限定酒を発売してきたが、7年目となる今年、去る7月下旬に発売したのがこの「白麹仕込み」だ。

話の流れとしては、白麹って何?ということになりますな。
酒造りに使われる麹菌には「黄麹菌」「黒麹菌」「黄麹菌」があり、大概は「黄」が用いられる。「白」は爽快な味わいが期待できる反面、酸味が強くなるという特徴があり、強い酸味は日本酒造りにはタブーとされる気運もあり・・・・
という中、あえて酸味を強調し新たな日本酒を表現しようじゃないか!と考えたのが7年目の若蔵なのだ。
実に非凡。プロジェクトのコンセプトを体現してるね。

ともかく、早く呑んでみましょう。

 

まず、ひと口。
ふわっと広かる酸味。ほんのり甘く、旨味がじわじわっと湧いてくる、そんな展開を感じる。
旨味ととも口に留め置けば、おや、やはりこの酸味はただものじゃないね。果実酒のような確かさと華やかさを併せ持っている。
また、心のしっかりとした酒質を目指した造り方(生もと造り)をしているとのこと。豊かな酸味に惑わされない、コクや旨味も構築しているようだ。

そんな酒は、とにかく料理と合う。とりわけこってりしたものと相性が良いとされ、同社もこれをアピール。
この日の晩酌、主菜は中華「えびマヨ」であったから、若蔵には絶好の機会である。

 

大ぶりな海老に、クリーミーなマヨソースが程よく絡んだえびマヨは上出来(自画自賛w)。
これをパクリと頂いてから、若蔵をひと口。
おおっ、合うねぇ!! 酒がえびマヨにすっと馴染んだね。
どういうことか、ちょっと専門的に言うと、マヨソースの甘みたっぷりなこってり感と酒の酸味が溶け合ったということ。そのおかげで、口がすっきりして次のひと口が欲しくなるという流れだ。これが「合う」ということなのだ。

えびマヨは、実はソースを絡める前に卵白衣をつけて揚げてもある。それなりに脂っこくもあるのだが、若蔵にかかればノープロブレム。酸味が際立ち、確かな旨味が口に広がった。

おかげで、箸が止まらない。食事向きの酒(食中酒)であることは、呑むほどに高まる食欲が証明している。

お買い求めは

●酒類販売店

●高砂酒造 明治酒蔵(直売店)
住所/旭川市宮下通17丁目
電話/0166-22-7480
開館時間/9:00~17:30
休館日/年末年始

【すし専用】 特別純米つまみつつ ~男山

特別純米つまみつつ 720ml(1,650円)

 

大胆と言おうか一種の開き直りと言おうか、ここまでやると潔い。
すし専用とはなんと面白い酒だろう。

発売されたのは昨年末。筆者も寿司店でいただいた。
今なお発売中とのことなので、改めて紹介させていただくことにする。

 

寿司、特に握り寿司と思うが、商品名もラベルデザインも、すべてがその動作に掛けてある。
すし店専用の取扱いかと思いきや、一般向けにも小売りされている。
不思議なもので、このラベルを目にすると、よし、この酒を買って(家で)寿司でも食べようかという気にもなる。
というか、実際そんな気になった筆者。改めて、この酒が寿司に合うかどうか試してみようということに。

 

まずは酒を。
香りはほんのりと。やや控え目なのは主役はお寿司ですから、ということでしょうか。
口当たり、のど越しともすっきり系、タイプとしてはやや辛口。多様な寿司ネタと無難に合いそう。
より味わいを探ってみれば、穏やかながら素材(米)の旨味もしっかりあって、これは酢飯との相性も意識しているんだろうか、なんて思う筆者である。

筆者はイクラが好物

 

うんうん。さすが北海道のすし職人(北海道鮨商生活衛生同業組合青年部)が監修しただけのことはあるかも。
よく合いますな、寿司に。
ネタの素材感、脂の香味など、それらの平均値をデータ化したかのような相性の良さは見上げたもの。期待通り、酢飯も美味しくしてくれている。
また、呑めば口の中がすっきりもするという点も、寿司向きだ。

また、そうした特性から、この酒は寿司だけじゃなく、いわゆる「日本のごはん」にも好適と見た。
値段も手頃なので、普段の食卓で気軽に楽しめそう。

お買い求めは

●酒類販売店

●男山 酒造り資料館
住所/旭川市永山2条7丁目
電話/0166-47-7080
開館時間/9:00~17:00
休館日/年末年始


この記事のキュレーター

美味しいもの、旨い酒を味わう時間が何より大事。
不惑の呑兵衛を目指すべく、きき酒師の資格を取得。

・SSI認定FBO公認 きき酒師
・日本酒WEBメディア SAKE TIMES ライター