Part.1~3はコチラ!↓
2020年05月13日
【彫刻のまち】とも呼ばれる旭川。市内の街中や公園には約100基もの彫刻が設置されているんだそう。でも、身近であるがゆえに「あまりじっくりと見たことがない」なんて方も少なくないのではないでしょうか? 今回は春光エリアの、中原悌二郎記念旭川市彫刻美術館すぐそばに設置されている彫刻6点を紹介しますよ♪
Part.1~3はコチラ!↓
春光5条7丁目の緑豊かな場所に位置する旭川市彫刻美術館。
この建物は旧旭川偕行社旭川と呼ばれ、旧日本帝国陸軍第7師団の将校らの社交場などに使われていたもの。旭川初の重要文化財に指定された建物としても知られています。
1994年には、旭川育ちの彫刻家 中原悌二郎を記念した彫刻専門の美術館としてオープンしました。
館内には数々の彫刻が並んでおり、なかには『考える人』を手掛けたことで知られるロダンの作品も。
さてここからは、旭川市彫刻美術館のすぐそばに設置されている野外彫刻6点を紹介していきます。
出典:asatan
中井延也さんは愛別町出身、旭川市育ちの彫刻家。市民になじみ深い、買物公園7条通にある高さ21mの剣のような作品『開拓のイメージ』の作者でもあります。
旭川市彫刻美術館入り口にある『鳥化する丘』は、上目から見ると麦わら帽子のような形。しかし、視線を低くして見ると、3つの足のようなものが確認できます。
まるでUFOみたいで、今にもふわりと飛んで行ってしまいそうね、なんて感じた方も多いはず(笑)。
石の美しく磨かれた部分と、粗く削り出されたままに見える部分が見事に【対比】されており、石の素材感を活かしつつ、抽象的なテーマを形にしています。
【作品情報】
『鳥化する丘』 中井延也
1989 本小松石 160×115×60
中原悌二郎記念旭川市彫刻美術館前(旭川市春光5条7丁目5-35)
出典:asatan
続いて紹介するのは、美術館前にそびえたつ『地の柱』。作者の高岡典男さんは、知られることなく消えていった文明というものに興味を持っていたそう。
「記録にも残っていないような文明があったとして、そこに生きた人々の遺伝子・思考・行動様式はきっと現代に受け継がれ、影響を与えている」と考えていたようです。
こちらの作品は【横方向に走る溝】が特徴ですね。これは(世界を問わず)昔の人々が石を割り出すための矢穴の跡がモチーフ。
建造物を作るにあたり"石"を選んだ古代人の知がこの跡に詰まっていると、高岡さんは感じたのでしょう。
【作品情報】
『地の柱』 高岡典男
1992 白御影石 202×99.5×60.5
中原悌二郎記念旭川市彫刻美術館前(旭川市春光5条7丁目5-35)
出典:asatan
海外を中心に制作活動を行なう西雅秋さんの作品です。
日本の【歴史】や【地域の信仰】などをテーマに、鉄やブロンズなどの金属を使った作品を多く手掛けていることで知られており、こちらの作品もそのうちのひとつ。
一見するとドラム缶のようなものが2つ。片方(写真左)は鉄、もう片方(写真右)はブロンズで作られています。
【時間が経つにつれて次第に錆びて風化していく鉄】と、【比較的変化が少ないブロンズ】。自然のなかで物質が朽ちていく姿の奥に、人間のあり方・存在の儚さなどが垣間見えます。
また、西さんは終戦直後の広島県生まれだったこともあり、この作品モチーフの着想には原発の冷却パイプがある、と捉える方も。
タイトルは『Innocence-Wedge』。直訳すると「純真のくさび」、または「無知とくさび」といったところでしょう。
「ただ作られただけで罪を知らないモノ」、あるいは「モノ(の本質)を知らない人間」。この作品には【将来を危惧する思い】が込められているのでしょうか。
【作品情報】
『Innocence-Wedge』 西雅秋
1998 鉄・ブロンズ 105×140×140(×2点)
中原悌二郎記念旭川市彫刻美術館横(旭川市春光5条7丁目5-35)
出典:asatan
続いては、作品旭川市彫刻美術館入り口すぐの場所にある『石走る(いはばしる)』です。
作者の寺田栄さんは北海道教育大学旭川校の教授として教壇に立つかたわら、主に石を素材に制作活動を行なっていたそう。
寺田さんが持つテーマは「風景と彫刻との調和」。
この作品は、上面にいくつもの溝が刻まれているのがポイント。風が生み出す【波紋のようになだらかな線】が、ずっしりとした石に【躍動感】を与えます。
側面は削り出した【石そのもの】の質感が残されており、彫刻でありながら、自然物としての存在感を醸し出しています。
【作品情報】
『石走る(いはばしる)』 寺田栄
2004 白御影石 75×80×150
中原悌二郎記念旭川市彫刻美術館前(旭川市春光5条7丁目5-35)
出典:asatan
中原悌二郎記念旭川市彫刻美術館の周辺でひと際目立つ作品がこちら。
白と黒のラインが特徴的な『メビウスの立方体』です。
循環・再生・無限をイメージさせるメビウスの帯(輪)を立体で表現したものだそうで、同名の作品が東京都美術館にも展示されています。
【幾何学的な模様】が作品の立体感を狂わせ、【見れば見るほど不思議な感覚】にとらわれてしまいます。
知的な要素を含む彫刻で、写真で見るだけでは全体像を把握するのは難しいと思います(ずっとこの写真を見ていると酔ってしまう恐れも…)。
足を運んで、実際にはどんな形をしているのか、チェックしてみるといいかもしれませんね。
【作品情報】
『メビウスの立方体』 五十嵐晴夫
1978 白・黒御影石 94×94×94
中原悌二郎記念旭川市彫刻美術館横(旭川市春光5条7丁目5-35)
出典:asatan
作者の山内壮夫さんは岩見沢市出身で、日本の彫刻界をけん引した彫刻家のひとりとされています。『旭川市内の”野外彫刻”を巡る旅Part.4』では『家族』という作品が紹介されていますよ。
初めは具象彫刻を中心に制作していたそうですが、次第に【抽象作品へと表現スタイルを変えていった】のだとか。
山内さんの手掛ける作品は愛の形を現した母子像や、人間の本質が読み取れる人物群像など、人間性への問いが根底にあるように思われます。
彫刻美術館と六角堂の間に設置されている『お母さんのひざ』。
物資が不足した1950年代に作られたコンクリート製の作品ですが、【ゆるやかな曲線のなかに優しい母性を感じる】作品です。
ちなみに山口県には、デザインの似た『母のひざ』という山内さんの彫刻が設置されており、こちらは"ベンチ代わりにして座れるように工夫された作品"として紹介されています。
【作品情報】
『お母さんのひざ』 山内壮夫
1956 コンクリート 108×61×56
中原悌二郎記念旭川市彫刻美術館横(旭川市春光5条7丁目5-35)
今回は原悌二郎記念旭川市彫刻美術館すぐそばに設置されている、6つの彫刻を紹介しました。
市内のあちこちに彫刻が設置されていて、【彫刻のまち】とも呼ばれる旭川。公園や街中など至る所に彫刻がありますから、たまには足を止めてじっくりと見てみるのも面白いと思いますよ。
この記事のキュレーター
出典:asatan