ひやおろしとは
酒造の専門用語をなるべく使わず、ざっくりと解説すると・・・
日本酒は通常、製造後と出荷前の計2回の加熱処理が施される。
これに対し、製造後1度加熱をしたのみで、出荷前2度目の加熱をしない、特に「冬に製造および加熱処理~ひと夏熟成~秋に加熱せず出荷」するものが『ひやおろし』と呼ばれる。
蔵で「冷や(ひや)」と呼ぶ加熱していない酒を、そのまま出荷する(卸す)ことによる「ひや+おろし」が語源。
あえて加熱しないのは、夏の間の熟成によって醸し出した繊細な香りや風味を保つため。これにより、まろやかで落ち着いた味わいが特徴とされている。
上の3本が、'25年9月、旭川にある3蔵から発売された「ひやおろし」。
蔵は左から「大雪の蔵」・「男山」・「高砂酒造」。
商品ラインナップ
※表示価格は税込参考価格
販売店や通販サイトによって価格に違いがある場合があります
■純米 大雪乃蔵 ひやおろし
合同酒精株式会社
純米酒 精米歩合60% アルコール15〜16%
720ml 1,384円
購入先 酒類販売店
■ひやおろし(秋酒)
株式会社男山
特別純米 精米歩合58% アルコール15度
720ml 1,650円
購入先 酒類販売店および同社直売店
■国士無双 ひやおろし
高砂酒造株式会社
純米 精米歩合60% アルコール15度
720ml ¥1,595
購入先 酒類販売店および同社直売店
ひやおろし吞み比べレポート
去る、休日の昼下がり。
筆者(きき酒師資格あり)と友人(日本酒ナビゲーター資格あり)が宅呑み。前掲3本の「ひやおろし吞み比べ」を開催(笑)した。
以下で、日本酒愛飲家(ただの呑兵衛ともいう)たちの、食べ飲みの感想を綴ります。
各ひやおろしは、冷蔵庫でほどよく冷やしておいたもの。
まずは【大雪の蔵】をひとくち。
なかなかに華やかな酸味。ひやおろしはどちらかというと穏やか、という思い込みは払しょくされる。
これをまろやかな甘みが包み込んで、しっかりとした口当たりを演出。
秋の酒には秋の茄子を。
油で火を通したナス焼き。これを味わってからの大雪の蔵。おおっ、口のなかの油をさっぱりとしてくれ、茄子の深い旨味の、余韻までしっかり楽しませてくれる。
料理になめらかに寄り添う、この相性の良さこそひやおろし。
少し時間が経ち、吞む酒の温度が上がったか、甘味が増し口当たりがより面白くなった。
つづいては【男山】を。
つんとした酸味が香るも、そのテンションは穏やか。
とてもあっさりとした印象があるんだが、男山の秋酒ってこんなんだっけ?と友も同じことを言う。
冷やしすぎたかな。それとも、アテが濃い味だから?
その濃い味とは『ちゃんちゃん焼き』。
前でも述べた、秋の酒には秋の味覚、を実直に(笑)取り組む。
魚屋いい感じの秋鮭(生鮭)を見つけ、メニュー即決。
まったりとした味噌の口当たりに、酒がすっきりと溶け込む。
そう、これがマリアージュ。見事な相性だ。ひやおろしはこうでなくちゃね。
すっきりとした飲み口に、杯がどんどん進んでいく。
こりゃ飲み過ぎ注意だわ。
とか言いながら、すっきりしつつもその中に、酒の確かな素材味を確信。今年も良い出来だ。
そして【国士無双】も。
宴もたけなわ、ゴハンもかねて握り寿司の登場。
赤身のじわっとした旨味。ホタテの甘味。イクラのまったり感。サーモンのしっとり濃いめな脂。メシの味を豊かにする酢の風味。
いやはや、ひやおろしは、どれもこれもをがっちりホールド。
単刀直入にいえば、「すしに合う!!」。
その要因を探るなら、酒のジューシーに膨らむ酸味。長年慣れ親しんだ、筆者が思うところの高砂らしさがここにある。
あるいは、ひやおろしならでは、生酒に近い、香味の膨らみ。
ちなみに、再びの「大雪の蔵」「男山」も、寿司にドンピシャ。
旨い酒を得て、寿司も喜んでいた(笑)。
ほろ酔い後記
たまにはこういう吞み方、つまり酒の味わいを語りつつ、アテとの相性を楽しみながら呑むのも一興。
言葉を編みながら呑むと、脳みそが活性するのか、酒もより美味しさが鮮明になるような気がするのだった。
お試しあれ。













美味しいもの、旨い酒を味わう時間が何より大事。
不惑の呑兵衛を目指すべく、きき酒師の資格を取得。
・SSI認定FBO公認 きき酒師
・日本酒WEBメディア SAKE TIMES ライター