【黒薔薇】からの警告状
前回、最後に、我々は【黒薔薇】ら対して挑戦状を叩きつけた。
そして、発売後の6月24日、またさらに【黒薔薇】からの警告状が編集部に届いた。
いかにも大げさに新聞紙を切り貼りし、犯罪組織のつもりでいるのだが、実にくだらない。
内容も「攻撃を加える」などと、脅しているつもりだろうが、前号に記載した“画びょう攻撃”を考えると、今回の攻撃もたかが知れているのではないかと思われた。
すると、その翌朝【黒薔薇】かから一本の電話が入ったのである。
編集部に爆弾が…!
電話を受けたのは、『あさたん編集部の花』と呼ばれているメルモちゃん(仮名)である。
彼女は、その電話の内容を、次のように切実と話してくれた。
「ダックスボイスって言うのですか? それを使って声を変えているんですよね。
気持ち悪かったですよ。
ヘッヘッヘッなんて笑うんですから…。
この人頭おかしいんじゃないかって思いました」
内容はちょっとシャレにならないものだった。
「編集部に爆弾を仕掛けた。
昼の12時キッカリに爆発するからな!」
と言うのだ。
そんなハズはないと思いながらも、いちおう一通り編集部内を全員で探してはみた。
やはり、それらしき物は見当たらない。
そして12時がやって来た。
どうせイタズラだろうと思ってはいるが、みんな緊張していた。
そして時計の針が12時を回って少し経った時、突然玄関の方で
パッーン
と大きな音が鳴った。
みんな一瞬〈ドキッ〉としたが、すぐに2人のスタッフが玄関へ向かって走った。
我が編集部はビルの9階に位置するのだが、スタッフがエレベーターの前に着いた時には、すでにエレベーターは6階まで降りていた。
1人が非常階段で追いかけたが、5階ぐらいまで降りた時に、ビルの駐車場から一台の車が飛び出した。
白のソアラである。
残念ながら、ナンバープレートは見えなかった。
その2人が戻ってきた時、別のスタッフが玄関で爆発音の正体を見つけていた。
それはなんとクラッカー。
玄関ドアの新聞受けの中でクラッカーが鳴らされていたのである。
確かにしょーもない、いかにもオタクっぽい手段ではあるが、計画性といい、なかなか手際の良さが感じられ、編集スタッフの誰もがやられたという気持ちになっていた。
【黒薔薇】誘い出し作戦決行
すぐにあさたん会議が開かれた。
みんなイライラを抑えきれない様子である。
会議ではもちろん【黒薔薇】と対決する方法が議論されたが、ネックになっているのが、相手は、こちらの所在地や電話番号を知っているが、こちらは相手のシッポすら掴んでいないという事である。
そこで、何とか【黒薔薇】を誘い出す作戦を考えた。
その作戦とは『学生のフリをして、伝言板に電話番号を書き、ターゲットとなる人物の写真を渡す』というものであり、写真を受け取りに来たヤツを撮影し、後をつけて相手の所在地を突き止める作戦である。
作戦は、翌日からすぐに開始された。
JR旭川駅の伝言板に我が編集スタッフ おじ造(仮名)の電話番号を記入。
その夜スタッフ全員で、おじ造の家に集まり、電話を待った。
22時7分【黒薔薇】からの電話が入った。
テープレコーダーを用意し、相手の声を録音しようとしたが、例のダックスボイスを使っており、まったく役に立たなかった。
しかし、こちらの思惑通り、誘い出しに成功した!
【黒薔薇】を追い詰めろ!
写真の受け渡し方法は、宮下通りの『東本願寺』である。
「鳥居をくぐって、すぐ左にある木に張り付けておけ」との指示があった。
約束の時間に、写真の入った封筒を指示通りの木に貼り、おじ造はその場を去ったが、残りのスタッフは近くに身を潜め【黒薔薇】が現れるのを待った。
約10分後。
白のソアラがお寺の前に止まった。
一昨日、編集部のあるビルから飛び出して行ったあのソアラである。
ナンバープレートは用意周到にも、黒いビニールテープが貼られており、見ることができない。
車から出てきた男も帽子をかぶり、サングラスをかけている。
運転席の男も同じである。
木に貼り付けてあった封筒を男が取り、助手席に乗り込むと、車はすぐに発進した。
我々もその後に続き車を走らせた。
ソアラは、そのまま神居に向かって走り、5分ほど行ったところで急に車を止めた。
我々もソアラを少し追い越したところで車を止め、様子を見ようとして後ろを振り向いた。
その時、ナンバープレートのテープを剥がそうと、ソアラから降りてきた男と目が合ってしまったのだ。
その男は、すぐさま車に戻り急発進させた!
我々も追いかける!
しかし、ここで我々は重大なミスを犯していることに気がついた。
我々が乗っている車はミラだったのである。
相手はソアラで、しかも改造車。
追いつくハズはなく、みるみる離されるばかり。
信号3~4個目で、ついに我々は赤信号につかまってしまった。
これで相手の所在地を知る術を失ってしまった。
でも我々も諦めはしない!
相手とソアラを写した写真を引き伸ばし、「この車を知りませんか?」と各大学の掲示板に貼り付けたのである。
ついに犠牲者が…!
各大学に手配ポスターを貼ってくれたのは、前回も投じようしたアルバイト学生のY君である。
Y君自身も、自分の友人を駆使して【黒薔薇探し】に協力してくれた。
また『情報提供者 先着5名様にディスコ〇〇〇の無料入場券プレゼント』としたためか、それらしき2人、それらしき車1台の情報を入手することができた。
そして、2人と1台を結びつけるいとを探し出そうと調査を開始した次の日、とんでもない情報が編集部に飛び込んできた!
なんと、学生アルバイトのY君が【黒薔薇】に襲われたというのである…。
[Part.3]へ、つづく。
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