旭川の路上ハンドパン奏者「キョん」という奇才から目を離すな

旭川の路上ハンドパン奏者「キョん」という奇才から目を離すな

2000年代初期にスイスから生まれたばかりの打楽器ハンドパン。 ハンドパンから奏でる音色と魅惑的な形が多くの人を魅了し、同じようにその楽器に魅了された一人の青年キョん。 短期間でハンドパンを自らのものとし、国内でもトップクラスのハンドパン奏者に食い込む成長の速さと才能は他を寄せ付けない圧倒的なセンスの塊。 業界からも注目される若き青年キョんの演奏は、ハンドパン先駆者としてどこまで突き進むのか。


ハンドパンと出会ったきっかけ

「twitterで初めて見たときに『これだ!』っていうものが走ったんです」

若干二十歳の若者が初めて出会ったハンドパンという楽器から幻想的な音を耳にし、その奇抜なフォルムに好奇心を揺さぶられたとき、キョんはネットですぐさまハンドパンを探した。

しかし色々なツテを使って探してみたものの、良質なハンドパンが日本ではまだあまりないことや、見つけたとしても高額なものしか見当たらず購入に至るまで半年の月日が流れた。

今でこそ知名度が上がり様々な代理店などが国内でも見つけれるようになったものの、キョんがハンドパンを購入しようと決めた2年前は国内ではまだまだ情報が少ない稀な楽器。

しかしそんな少ない情報の中、当時のキョんにとって高額な30万円近いハンドパンを実際に購入した時、見事に自分のフィーリングと見事に合致した感触は言葉で表現できるものではなかった。

撮影:ハヤシヒロナオ

音を出せない

実際に届いたハンドパンを触り奏でてみたものの、自分がイメージしていた音は出せなかった。

それから毎日のようにハンドパンを叩き、自ら動画を撮り続け投稿も毎日のように行なった。

それは誰かに見せるわけではなく、自分の成長を日々確かめるために全く「音」になっていない初日から動画投稿は続けた。

「本当にしょうもない時からYoutubeをはじめ、SNSにアップしてました」

反応は全くなく、そもそもが日本で認知すらされていない楽器。

しかしキョんはSNS上の人に承認欲求を求めることなく、動画は日々投稿を行い続けた。

「最初は何十万もする変な楽器買いやがってあいつ。そんな感じで見られてました」

そんな反応は半年ぐらい続いた。

奇跡的な出会い

「ハンドパンを買った日に店を出て5分後に旭川でハンドパン奏者に会ったんです。『あれ?それハンドパンだよね』って」

その日、旭川で大道芸人フェスティバルが行われており、たまたま埼玉から来ていたハンドパン奏者はキョんが背負っているハンドパンを見つけ声をかけてきた。

夕方にフェスティバルが終わるとその大道芸人は、キョんのハンドパンを叩き演奏し彼との交流が始まった。

国内でもそう多くないハンドパン奏者が、キョんの購入後すぐに声をかけてくるなんて神様の粋ないたずらではないか。

それとも人生とはどこかで誰かが操作しているものなのか。

その後そのハンドパン奏者とは東京のハンドパンフェスなどで再会し、キョんは国内の同じハンドパン奏者と交流を持つようになっていった。

路上ライブで腕を磨く

撮影:つぼ

「路上ライブをずっとやりたくて。逆に路上ライブでやるためにハンドパンを買ったようなものです」

ハンドパンを購入し二ヶ月後には旭川の街中で路上ライブを行なっていたキョん。

夕方に街へ繰り出し路上で演奏をして、週末には一晩で1万円を超えるほどの収益をあげるくらいの演奏スキルを身につけていた。

そんな形でハンドパン奏者としてのスキルを上げていくうちに、新しいハンドパンを欲しくなったキョんはtwitterを使って、

「路上ライブで必ず稼いで返済するので誰かハドパン下さい」とツイート。

するとそのツイートを見てくれた人が、

「私のハンドパン売りに出す予定だったのでどうですか?」と反応をしてくれた。

そうして2台目のハンドパンを手に入れたキョんは再び旭川の夜の街に繰り出し、半年間でハンドパンのみの路上ライブで17万円を稼ぎ出し、全て先行投資を許してくれた売り主に返済をする。

その後、キョんのこのスタイルを気に入った持ち主から「もう一度チャレンジしませんか?」と逆オファーがあった。

気がつけば一台のハンドパンから始まったキョんのハンドパンは4台にもなっていた。

変わる周囲の反応

最初に動画投稿を始めた頃はスキルの低さもあってか「何十万もするもの買って変なやつ」と言われていた。

その後、路上でライブを行うと、物珍しさから多くの人が寄ってきて好奇の目で見られるようになった。

今ではハンドパンのスキルや認知も上がり周囲からは「上手くなったね」と声をかけられ、好奇なものから見守られる存在へと変わっていった。

キョん自身がライブハウスで働いていることもあり、周囲の音楽関係者からもきょンの奏でるハンドパンを見る目や耳も肥えてきた。

「キョんがライブやるなら行くよ」

そんな声も直接かけられるようになり、キョん自身が住む家には日本中からのハンドパン奏者が足を運ぶ場所にもなていった。

フジロックなどの大きなイベントに出演している奏者から、同世代のハンドパン奏者など様々な仲間を作っていった。

キョんが目指すこれから

撮影:ほのか

「とにかくハンドパンには一生関わっていきたい」

そう答えるキョんが描く未来はハンドパン奏者としての枠だけにとどまるつもりはない。

ハンドパンを軸にしてやりたいベクトルは様々なイメージを描いており、最近ではnoteというブログ媒体を使って『ハンドパン奏者図鑑』なるものを作っている。

「自分よりも他人を広めたい」

そんな想いは様々な奏者とコラボを行なったり、イベントなどを開催できるステージに持っていきたいという強い意欲も持ち合わせている。

キョん自身の奏者としての目標は『ライジングサン』や『りんご音楽祭』などの大きな音楽フェスで出演者としてステージに上がることを目標としている。

またキョんの奏でるハンドパンは同じハンドパン奏者の中でも独特なリズムテンポと幻想的な音を使い分けるスタイルは他とは一風違うものがある。

自身が憧れるミュージシャンなどとコラボレーションし、自らの階段ステージを一つずつ上げて様々な世界観を描き旭川から国外へと飛び出すであろう。

キョんにはそう感じさせる何かを持ち合わせている。

それは決して大げさな表現ではないと証明してくれるのはそう遠くはない将来かもしれない。

竹山恭平(キョん)

撮影:ハヤシヒロナオ

旭川市出身

旭川市内の路上ライブでハンドパンの腕を磨き2018年10月にハンドパンとパーカッションユニット「じぇんつー」を結成。OKI DUB AINU BANDのOKIやRIZEのKenKenなど様々なアーティストと共演。

Twitterアカウントはこちら→(@kyremon)

〜主な出演

2018/12/16 「MORE MORE MORE」@CASINO★DRIVE じぇんつー初ライブ出演

2018/12/18 国内ハンドパン奏者のコンピレーションアルバム「HANDPAN RELAXING CHILLOUT MUSIC 98min」にじぇんつーとして参加

2019/3/30 「WATCHMAN PRESENTS えびパン祭りLIVE復活〜春」ソロ出演

2019/4/27 「3Canadians Artists Japan Tour 2019」@ライブハウスモスキート じぇんつーとして出演

2019/5/25 「Interweave!」@CASINO★DRIVE じぇんつーとして出演

2019/7/15 「LINE空間現代」@ライブハウスモスキート じぇんつーとして出演

2019/7/27 「FSR in summer 2019」@Sound Lab mole じぇんつーとして出演

2019/12/8 「Atmospherics∞:10」ライブハウスモスキート じぇんつーとして出演 

2020/1/1 「COUNTDOWN HOKKAIDO 1920」@Sound Lab mole じぇんつーとして出演

2020/1/13 「FSR2020 WINTER」@Sound Lab mole じぇんつーとして出演

2020/2/29 「汚軽田 夢子 誕生祭」@CASINO★DRIVE じぇんつーとして出演

ハンドパン奏者図鑑

ハンドパン奏者インタビュー『倍音人ロード』②|竹山キョん|note

https://note.com/kyonhandpan/n/n3a6314a0f8e8?fbclid=IwAR3ARezVUnWByDWFvmxIPC52KPgfd4lqaSXZSUNG-kjUyPzC9mE-7m6DtCo

こんにちは。 竹山キョんです。 前回に引き続き倍音人ロードさんに取材した内容を記事にしていきたいと思います。 今回は色んな質問をぶつけていきます。 サクサク進めるといいな... 第1回見てない方はぜひこちらもご覧くださいませ。 名前の読み方と由来 キョん:ロードさんの名前の由来ってありますか? ロード:元々は自分の道を貫く!って意味でロードってつけたんですけど、結局いろんな楽器をやってしまってますし、特に深い意味はありません(笑) キョん:楽器一筋!って感じはするのでとても合ってると思いますよ!!!!!! ロード:ありがとうございます! キョん:『倍音人』

この記事のキュレーター

バドミントン元全日本ジュニアチャンピオン。20代半ばよりオーストラリアで生活後、アジア、南米、北米を1年半放浪。帰国後は沖縄の宮古島、兵庫の淡路島などで島生活を経てバドミントンネパール代表のコーチに就任。その後メキシコでジュニア代表もコーチし、マヤ族と一緒に生活。海外ではクリスタルやオパールなどの天然石の買い付けも行い、マクラメジュエリー、アトリエ「名もなき石屋」を幌加内で運営。著書にノンフィクション「旅を終えると君の余命は1年だった」を出版。英語、スペイン語、手話での会話が可能。

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