何もかもができなくなった
(富良野市で行われた講演会)
4人目の子供がお腹に宿り数ヶ月経った時だった。
パートナーは非情にも突然、彼女の元から離れて行った。
悲しみと絶望、そして惨めな自分。
ストレスで生活の全てに手がつかなくなった。
すでに子供は3人。子供たちの為に何とかしなきゃいけないのは頭では分かっている。
でも体が動かない。そんな日が何日も続いた。
母親失格。
それだけではない。女性としての自信も心も折れたままだった。
■それでも動く命
彼女が自信も心も失いかけても、自身に宿る命は自らの存在を気づかせるようにお腹の中で鼓動を響かせた。
子供に罪はない。そんなことは百も承知。
言葉で言うのは簡単だが、心に負った傷はあの日のことを忘れさせてはくれなかった。
しかし病院の検診でエコーを見るとお腹に宿す命から言葉にならないメッセージが伝わってきた。
辛くて絶望の底から上がることさえ不可能だと思っていたのに、その不可能さえ覆すメッセージ。
「ママ私を信じて」
お腹に宿る命からはっきりと聞こえた声だったが、襲いかかってくる不安と戦うことは簡単なことではなかった。
■感謝してみませんか
pixabay
そんな時に以前申し込んでいた天使力コーチングのセッションを受ける事になった。まさかこのタイミングで受けれるとは思わず、自分で申し込んでおきながら誰かに自分の心を触れられるのが怖くて逃げたくなった。
そっとしといてほしい。そんな自分がいた。
それなのにあの時なぜ受けてみようかと思ったのか今では思い出せない。
ただ再び自分の人生に光を与えてくれた出来事だったことは間違いない。
コーチングをしてくれた先生は話を聞いてボロボロと泣きながら「それでも感謝してみませんか」と手を握って語ってくれた時、こんな状況でも感謝を見つけてみようとしている自分が現れた。
そしてなぜだか「私、子供達のいる自宅で産みたい」と心の底からの声が聞こえた。
初めてはっきりと自分の身体の中から語りかけてきた声。
雪が降りしきる冬の日、彼女にとってとてつもなく大きな出会いだった。
赤ちゃん死んでもいいの?
それまで病院に通っていた彼女は意を決して先生に伝えた。
「自分の家でプライベート出産します」
すでに3人の子供のうち2人目と3人目は自宅でのプライベート出産。
しかしその時は当時の旦那が付き添った。
今回は1人。
付き添いの大人は誰もいない。
「プライベート出産は危ない。赤ちゃんが死んでもいいのか」
病院の先生にそう言われても彼女の答えが変わることはなかった。
そして自宅での出産
(出産当時の映像を使った上映会)
予定日をすぎた春休み初日緩やかに陣痛は始まった。子供達は全員揃いしっかりと目覚めている昼間を赤ちゃんが選んできたに違いない。
部屋には小さな子供が二人と中学生の娘だけ。
彼女はこれから産まれてくる赤ちゃんと自分、そして自分の家族を強く信じることにした。
できることは信じるだけだった。
■世界一幸せなお産
中学生の長女が出産時の動画を撮影した。
冷静で何一つ動揺すら見せない長女にどれほど救われたことか。
2人の小さな子供達は精一杯の応援をしてくれた。
「がんばれ!赤ちゃんがんばれ!」
そのつたない声が何よりも家族の深い愛を感じさせてくれた。
付き添いの大人は一人もいない。
でも誰よりも何よりも世界で一番の幸せなお産だった。
■命
授かった小さな命を自らの手で受け止めた。
去っていったパートナーから受けた心の傷が消えたと言えば嘘になる。でも愛おしくて仕方ない新たな命。
部屋の中には力強い産声と共に感動と驚きの鳴き声が響き渡った。
批判したい人は批判すればいい。
誰が何と言っても彼女は子供たちと一緒の中で新たな命を産み落としたことが誇らしくてたまらなかった。
捉え方は自分次第
どんな出来事も、捉え方にはいくつもの角度がある。
自分を肯定するのも否定するのも全ては自分の捉え方。
何かが正しくて何かが間違っているということも決してない。
結果的に無事に産めた?
それは違う。
信じた結果が全て、そして真実。
その真実と自信を与えてくれたのは紛れもなくお腹に宿っていた小さな命。
「ママ私を信じて」
その声が全てを変えた。
自分に持てなかった自信を与えてくれたのは、お腹から語りかけてくる小さな命からのメッセージ。
あなたも自分を信じていい。
小さな命が伝える全ての人に送るメッセージ。
プロフィール
たかはし まゆみ
北海道伊達市在住
1歳から17歳の子供を持つ4人の子供たちの母。
病院出産と3度のプライベート出産を体験し、お産が大好きになる。第4子妊娠中に出会った天使力コーチングを学び天使力コーチになる。主に北海道内でオーガミックバーズなどの上映会や子育てを中心とした講演会やセッションを行なっている。旭川近郊では比布町や深川市、富良野市で開催された。
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kaka123hug@gmail.com
バドミントン元全日本ジュニアチャンピオン。20代半ばよりオーストラリアで生活後、アジア、南米、北米を1年半放浪。帰国後は沖縄の宮古島、兵庫の淡路島などで島生活を経てバドミントンネパール代表のコーチに就任。その後メキシコでジュニア代表もコーチし、マヤ族と一緒に生活。海外ではクリスタルやオパールなどの天然石の買い付けも行い、マクラメジュエリー、アトリエ「名もなき石屋」を幌加内で運営。著書にノンフィクション「旅を終えると君の余命は1年だった」を出版。英語、スペイン語、手話での会話が可能。