完全自給自足を目指す音楽家SINGOという男
唯一無二の音楽的才能と田舎での自給自足生活から作り出される全ての曲は他に類をみない曲調で、全国各地に圧倒的なファンを作り続けている芸農人SINGO
3人の子供を持つ父親として、子供たちには出来るだけ自然食を与え、自然と共に遊ばせ、自由を選択させつつ、自らも自分が好きでたまらない音楽で全国を旅しながら歌い続ける。
「環境に優しい生活をしているし、人間らしいシンプルな生活ができる。都会で生活をしなくても逆に世の中を見ることができるし、複雑な社会を外から見ている感じかな」
そう語る彼の原点は小学校時代に担任だった先生から受けた影響でした。
■影響が大きかった担任の先生
音楽や自然が好きだった担任の先生は年に1回自分のコンサートを行なったり、アウトドアに連れて行ってくれ釣りなどを教えてくれる少し変わった先生。
しかしSINGOは彼が担任だったことによって音楽の楽しさを知り、自然の中で生きる楽しさを教えてもらった。
「最初は先生の曲のコピーから。それから尾崎豊やビートルズ、フレディーマーキュリー、ボブマリーなど色々なアーティストを聞くようになったね」
小学生の頃からギターで遊ぶようになり、先生が授業以外で教えてくれる自然での遊び方をそのまま歳を重ねても自分の生き方の基盤として根付くようになりました。
ミュージシャンという生き方
彼がミュージシャンとして生きていこうと決めたのは30歳を過ぎた頃。
「音楽だけでやっていきたいと思ってはいたけど、正直無理だと思ってた。音楽は趣味程度に収めたいと妻に言ったら、ここまでやってきたんだから貫きなよって言われて。それが最終的な決め手かな」
と、妻の恵子さんの後押しがあったから。
「でもバイトをやめて音楽だけで家族を養うって決めた時は勇気が必要だったね」と正直な言葉も。
ただSINGOの作る曲は他とは違い、この生活とこの家族があって産まれる飾らない自然体の音楽。
「都会で生活していると今までの曲は作れなかった」と本人が言うように、音楽で自身の生活を表現できる数少ないミュージシャンでもある。
■Space土chant
2011年に同じ旭川に住むパーカッション担当のマサトと帯広に住むベース担当ヨッシーと本格的にバンド「Space土chant」を結成。
全国ツアーを精力的に活動し、現在では多くのファンを魅了している。
多くのライブハウスや有名なフェスなどに出演する傍ら、学校や幼稚園などでも音楽を通して喜びを与え表現する。
ファンの間では「ドチャント」という愛称で親しまれている。
■ソロ活動と根繋木
Speace土chantで活動をしつつ、ソロでの活動と和寒町で多くの時間を共有する友人たちと創る「根繋木」(ネツナギ)のバンドも大切にしている。
「根繋木はドチャントのようにツアー活動をしてはいないけど、自分たちの生活や生き方がリンクしている大切なバンド。いずれは根繋木での音楽活動も広げていきたい」と語る。
根繋木なくしてSINGOの音楽は表現できないのだ。
SINGOの音楽ベースはルーツレゲエ。
黒人ミュージックに心を打たれ、その中でもアフリカに住むピグミー族のシンプルな曲調を自らのアイデンティティーに取り入れている。またその中には昭和のフォーク調も取り入れた完全オリジナルミュージックとして確立している。
田舎暮らしという選択
札幌で結婚し恵子さんのお腹に新しい命が宿った時に「田舎暮らしで子供を育てたい」と妻の恵子さんに伝え、巡り出会ったのが今彼らが生活する和寒町。
300坪の畑と家屋付きの土地を50万円で購入し、家の中のリフォームはほぼ自からの手で手直し。
「周りに家がないから音は出し放題。夏は裸で生活していても人目がないから楽だし、子供達も制限なく自由に遊べる」とSINGOは笑う。
畑では友人と共同で育てている米からナス、トマト、大根、人参、きゅうり、豆など家の畑には数多くの自家農園で栽培を楽しむ。
(友人たちと田植えを毎年楽しみながら行なっている)
秋になると家にある果実を捥ぎ取り、裏の山にキノコを採りに行く。夕方になれば近くの川で魚を釣り庭で焼く。
「田舎暮らしって本当にお金がかからない。自分にとっては生活の全てが遊びだし何よりもシンプル」
生活の一つ一つを遊びとして田舎暮らしを心から楽しむ姿はとても豊かな生活と言えます。
■お金のかけないリフォーム
自分の家のリフォームが必要だと思ったら家を解体している所へ行き、廃材や断熱材をもらいそれらをそのまま自分の家でDIYの素材として再利用。
材料費も人件費も一切かからない0コストだ。
「100万円払って業者に頼むくらいなら、100万円分の仕事は自分で遊びとしてやる」
そんな遊び思考のマインドは、気づかぬうちに自らのスキルとなり、今では自分の家で直せないところはほぼ皆無。
そして自らのセンスもあいまって、自然調和のおしゃれな家づくりにも役立っている。
■芸農人として
収穫や畑の仕事が忙しい時にはあまりツアーは組まず、農家人として畑仕事を楽しむ。
「有機野菜を買って食べるとなると少し高いけど、自分で作れば手間すらも楽しんで作れるし安心」
しかし、そんな彼らでも最初からうまくいった訳ではない。
多くの失敗を重ね、時には鹿などに作物を荒らされながら自分たちのやり方を作り上げてきた。
芸事をやりながら農家人として生きる。
これぞまさに芸農人としてのライフスタイルである。
家族について
最近になって考えることは、これから子供達が大きくなりいつかは都会に行きたいと言い出すであろうということ。
しかしそんな彼らでもいずれはやっぱり戻ってきたいという“楽園”をここに作り上げておきたいと考えるようになった。
子供たちが孫を連れて来るようになっても孫を含めて楽しめる場所と家族にしておきたい。
子供たちも大人たちもみんなが好きなことをできる環境が家族にとっての幸せ。
妻の恵子さんも同じくそんな家族のあり方を望んでいます。
「好き」を仕事に自由に生きるということ
「昔は好きな音楽で生活ができるとは思っていなかった」
一見すると好きな音楽で自由に生活をしているように見えますが、今のライフスタイルは自身でも「奇跡」と語ります。
また都会での生活よりも田舎での自然暮らしが自分にとって全てが遊びとなり、全てがSINGOの音楽へと繋がります。
「自分が好きな生活をすることで日々の生活がどんどん良くなり、色々なアイディアやビジョンが見えてくる」
彼のライフスタイルは「今」を生きれていない人々へのヒントを与え、好きなことで食べていくのを諦めつつある人へ勇気を与える生き方でもあります。
■迷わず住んでみてから考える
多くの人は好きなことや好きな場所で生活をしてみたいと考えていることと思います。
その際にどうしても考えてしまうのは仕事のことだったり生活のこと。
しかし彼は言います。
「迷わず住んでみてから考える。そして行動すること」と。
彼自身、最初から全てが上手くいった訳ではないと話すように、始めは戸惑うことや苦労があるかもしれませんが動いた先に何かを掴むようになります。
好きな場所で好きなことを貫くと彼自身が語るように「奇跡」的な人生が得られる可能性があるのではないでしょうか。
■短編音楽ドキュメンタリー「土に唄えば」
芸農人SINGOがどのような生活をして、どのような生活で音楽を作っているのかドキュメンタリムービーとして制作されています。
最後に
なんとなく今の生活を淡々と続け「これでいいのかな」と思い気がつけば歳をとっている人生。
物質的豊かさにとらわれず自分の「好き」だけを追求して毎日を楽しく過ごしていく人生。
どちらも同じ人生です。
好きなことや、やりたいことは人それぞれであって人の感じる豊かさもまた人それぞれ。
あなたの望む人生はどちらですか?
喜ぶために生まれてきたこの人生、あなたは「今」を楽しんで生きていますか?
Space土chantオフィシャルHPはこちら↓
バドミントン元全日本ジュニアチャンピオン。20代半ばよりオーストラリアで生活後、アジア、南米、北米を1年半放浪。帰国後は沖縄の宮古島、兵庫の淡路島などで島生活を経てバドミントンネパール代表のコーチに就任。その後メキシコでジュニア代表もコーチし、マヤ族と一緒に生活。海外ではクリスタルやオパールなどの天然石の買い付けも行い、マクラメジュエリー、アトリエ「名もなき石屋」を幌加内で運営。著書にノンフィクション「旅を終えると君の余命は1年だった」を出版。英語、スペイン語、手話での会話が可能。