除雪をした場所に隣人が雪を…証拠を撮るのも難しくどうしたら
雪を捨てられても生活に支障のない場所に捨てるのならまだしも、車庫の前やきれいに除雪をした玄関周りなどに捨てるので、またその雪を捨てなくてはならず、とっても迷惑しています。
70代ぐらいの老夫婦なのであまりキツイことも言いたくないのですが「人の敷地に雪を捨てるのはよくない」と伝えたことはあったのです。
でも、まったく効き目はありませんでした。
向かいの旦那さんが1度、警察に相談したのですが、「実際に捨てている写真などの証拠がないと取り締まれない」と言われました。
写真を撮ろうと試みたんですが、雪を捨てる時間がバラバラで未だに撮れていません。
人の敷地に勝手に雪を捨てる、勝手に家庭菜園する行為は法に触れないんでしょうか?
教えてください。
(旭川市/N・S)
まずは費用を抑えて書面で申し入れ
人の敷地に雪を捨てることが不法行為にあたることは疑いありません。
雪を捨てられて、雪が山盛りになっていると、その部分は使えないなど自分の土地を自由に使えなくなるので(使用収益を妨げられます)、土地の所有権の侵害となります。
捨てられた雪をさらに捨てるのに、業者に頼めば費用がかかりますから、損害も発生しており、不法行為にあたることになります。
この老夫婦の行為であることが、信頼できる目撃情報などで明らかであれば、まず、書面により申し入れをするのが普通です。
例えば、「何月何日、自分の敷地に雪を捨てているのを確認しました。2度とこういうことはしないでもらいたい。
今後、同じようなことがあれば、防犯カメラなどを設置したうえで警察に相談することになります。
そういう事態になれば、最終的には防犯カメラの設置費用もご請求することになるため、2度と他人の敷地に雪を捨てないでください。」というような書面を作って老夫婦に警告をします。
書面を作るのに費用はかかりませんし、内容証明でも2千円程の費用で済みます。
犯罪として成立出来なくても証拠がある事が大事
それでもまだ雪を捨てていることを確認したら、1つの選択肢として本当に防犯カメラを設置する。
四六時中映っているので、やりにくいという意味での抑制効果もありますし、やればやったでその姿が映りますので証拠として残ります。
警察は「証拠があれば取り締まる」と考えているようなので、住居侵入罪や器物損壊罪の適用を念頭に置いているのかも知れません。
他人が住居の敷地内に承諾なく入ったら住居侵入罪にあたります。
自分の敷地に雪を捨てに来る人に対して「入っていいですよ。」とOKする人はいませんから、住居侵入罪が成立します。
ただ、スコップで雪を放り投げて人の家の敷地には一切入らないということになると、住居侵入罪では取り締まれません。
その場合は、他人の土地の一部を使えなくしたという意味で器物損壊罪が成立する可能性があります。
それで警察が取り締まる、あるいは注意をしてくれれば解決する可能性が高いでしょう。
また仮に犯罪は成立していなくても、証拠があって人の迷惑になっているときには警察が注意をしてくれる場合があります。
低予算で調停を起こすという手段が適切
次に、勝手に家庭菜園をする。そんなことをしてはいけないのは子どもでもわかります。
仮に、「やめて下さい!」と申し入れをしたことがなく、ただ黙って見ていたとなると、相手が狡猾な人だったら、「承諾してくれていたでしょ。だから今まで3年間も5年間も黙って文句も言わなかったんでしょ」と、嘘の主張をされることがあります。
あるいは、嘘とまでは言えなくても、もし老夫婦が「ここを借りて家庭菜園をさせて頂いています」って小さくつぶやいているとします。
それに対して文句を言わなかったら、本当に承諾したと思い込むこともあります。
ですから「これは絶対にダメですよ。止めてください」と、明確に申し入れをする必要があります。
口頭で言ってダメであれば、これもすぐ書面で申し入れをしておかないと証拠が残りません。
申し入れをしたにもかかわらず、止めないとなったら… ご近所のトラブルですから、調停を起こすのが1番適切だと思います。
こういうご近所トラブルについての調停は簡易裁判所に起こすことになります。
調停を起こすための費用は、申立書に貼る印紙代と予納する郵便切手を合計しても、本件のケースでは合計4,000円以下でしょう。
調停を起こすと、簡易裁判所から呼び出し状が老夫婦に届きます。
そうすると老夫婦が裁判所に出てきてくれる可能性は十分にあります。
その場合、調停委員が、間に入って「そういうことをしたらダメですよね」と説得してくれます。
自分が相手を説得するよりも第三者の調停委員が説得してくれる方がはるかに効果があります。
最初に説明した「勝手に雪を捨てる」ケースでも、解決に至らなければ調停を起こすのが有効だと思います。
北村 晴男
弁護士(東京弁護士会)
■1956(昭和31年)年生まれ。長野県出身。
■1992(平成4)年に個人事務所を開設し、2003(平成15)年に法人化。生命保険、交通事故、医療過誤、破産管財事件、家事事件など多岐にわたる事件を処理している。
■弁護士法人 北村・加藤・佐野法律事務所代表。
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出典:asatan
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