ラーメンぶた丼 きくち
寡黙なご主人と女将さんが切り盛りする老舗。ご近所からぶらりとやってきた風のお客がいる、いかにも町の食堂的なムードに居心地が良い。
醤油ラーメン(700円)
筆頭に紹介したかったのはこれ。筆者の思う食堂ラーメンの基本形であるからだ。
ラードがきらきらと浮かぶ透明感あるおつゆ。その中にはちぢれ麺。具(トッピングなんて昔は言わなかった)はチャーシューとメンマ、そしてネギ。今じゃお馴染みの玉子なんて、昔はサッポロ一番の袋の写真だけだと思っていた(笑)
ナルトだってラーメンの画像や映像でよく見かけるが、あれは内地(本州のこと)が主流か。旭川のラーメンでは昔から、あまり見かけませんな。
麺は食べ良い太さ。ちぢれがおつゆを引き連れて、口の中に広がるうまみ。
芯がありつつも表面はゆで汁にやや溶けて、のど越しはひたすらに柔らか。
おつゆは醤油の香味がしっかりとしているが、濃いわけでなく、すっと喉元に入っていく。
そんな、穏やかな食べ応えのラーメンは、とかく飽きるということがない。
お店情報
店名:きくち
住所:旭川市東旭川北1条4丁目
電話番号:0166-36-2320
営業時間:11:00~19:30
定休日:木曜
駐車場:あり
こぐまグループ 旭川ラーメン近文店
店周辺は意外にラーメン店が多く激戦区といった様相であるが、そんな中で涼しい顔で安定営業(と拝察します)を続けている同店。ラーメン以外にもメニューが豊富、というのが存在感を確かにしている要因か。実際、平日昼にはすぐに駐車場が埋まる。
正油ラーメン(650円)
温かな汁に入浴する小熊が気持ちよさそう。
ラーメンの特徴は、前掲の「きくち」と同じ。
期待を裏切らない「昔ながら」感に何かしら安堵する。
昔は前身の「熊ッ子チェーン」もあちこちにあり、よく通ったものだ。
当時はそれを「昔ながら」と思うはずもなく、ただ当たり前に食べていたわけだが、そんな記憶をふと思い出すような味が今も継続あるいは継承されていることは実に有難い。
穏やかな香味のおつゆ、ちょっと軟らかめな麺。
浮いた脂が潤滑油になったかのように、ひたすらに食べやすい。
ので、麺すする、おつゆ飲む、すする、飲む・・・のピッチが自ずと早くなる。
はたから見れば、お腹すいてるのかなと思われそうだが、いや、確かにそうなのだ。その食べ応えの気持ちよさに、食べてるその場から、また食欲が湧きだすのだった。
旨いラーメンとは、そうしたものだ。
お店情報
店名:こぐまグループ旭川ラーメン近文店
住所:旭川市緑町12丁目
電話:0166-12丁目53-8977
営業時間:11:00~20:30
定休日:火曜・第3水曜
駐車場:あり
ラーメン ギョウザ ささき
大きな道からちょいと外れたその店は、知る人ぞ知る静かな有名店。
自ら「昔風」を名乗るとは、この店のラーメンに関しては、もはや説明不要か(笑)
正油ラーメン(600円)
これまた見事なまでに「昔風」を演出してくれている。
いや、創業の頃からこのカタチで、それをずっと変えずにいただけで、演出じゃないんだな(筆者の深読みです)。
あまりに変化がないのもアレなんで「昔風」とキャッチをつけました、というところか。
とても控えめな女将さんなのだが、やることには商魂が感じられ粋である。
ラーメンのカタチは前掲2店を含めどれも同じ。どんぶりが違ってなかったら、画像を取り違えて掲載しても気づかないかも(笑)
そう、それが昔ながらのラーメン。「何も引かない、何も足さない」なのである(昔あったウイスキーのキャッチコピー)。
で、肝心の味わいであるが、申し訳ありません。あっさり、穏やか、やわらかな・・・筆者の脆弱な語彙力では、「前同」になってしまう(笑)が、それも然り。昔ながらラーメンには無理矢理ひねくり出したような華美な表現は無用なのである(決して手を抜いてはいません)。
ただひとつ。ちょっと嬉しかったのは、これを撮った日、偶然に居合わせた高校生が帰り際「美味しかった」と言ったこと。
昔ながらラーメンは今も美味しいラーメンと確信を得たり。
お店情報
店名:ラーメン ささき
住所:旭川市旭神2条2丁目
電話:0166-65-7085
営業時間:11:30〜19:00
定休日:日曜
駐車場:あり
緑橋カウンター
昔ながら、といっても老舗の話ばかりではない。
昨秋開店の新店で、その片鱗をうかがうことがてきたので、特筆したい。
以前にもカレーの記事などで取り上げたことがある同店だが、昨秋開店した折、初めて頂いたラーメンには驚いた。
初めてにして初めてじゃない。そう、昔々好きだった食堂のラーメンの味がしたからだ。
正油ラーメン(700円)
おつゆの色が濃く見えるが、スタイルは前掲3店と同じだ。
レンゲに映える艶やかな琥珀色。醤油味であることに疑いの余地がない。
おつゆは豚骨、鶏ガラ、魚介の出汁の調和が素晴らしい。加えてコク深い醤油ダレ。
ふと思ったことには、昔、食堂のラーメンってシンプルで、どこもこんな感じだったな、と。
だから、どこのどんな店でも安心して注文したもんだ。
今は旭川ラーメンもいろいろありすぎて、広告など見ながら「美味しいのかな」から始まる、ちょっと困った現象も(笑)
ちなみにオーナー曰く、目指しているのは奇をてらわないTHE旭川ラーメン、とのこと。
今後も進化すると思うが、よく体現できていると思う。
チャーシューメン(850円)
チャーシューも、今人気なのはとろとろタイプ。
だが、「昔ながら」は違う。
食感はもっちりとしていて、煮汁の醤油香が鼻腔をくすぐる、それが昔ながらのチャーシュー。
悪戯に分厚いこともなく、麺やその他具材のバランスとのバランスによって厚さは決まる。
同店は、そこらへんにもこだわりがあるようで、また、上出来だ。
お店情報
店名:緑橋カウンター
住所:旭川市3条通8丁目緑橋ビル1号館
電話:090-2876-4771
営業:11:30~14:00
定休:土曜、日曜、祝日
駐車場:なし
食べ歩き後記
とかなんとか、筆者目線の世界観を語ってしまいました。
ともあれ、今回紹介したラーメンは、進化(変化)し続ける旭川のラーメンシーンにおいて、あるいは、非旭川系なんてのも台頭する近頃にあって、味わいのひとつの基準として「一杯の価値あり」というところでしょうか。
ぜひご賞味あれ。
美味しいもの、旨い酒を味わう時間が何より大事。
不惑の呑兵衛を目指すべく、きき酒師の資格を取得。
・SSI認定FBO公認 きき酒師
・日本酒WEBメディア SAKE TIMES ライター