【日本初】恒久的歩行者専用道路「買物公園」がある街

【日本初】恒久的歩行者専用道路「買物公園」がある街

 旭川駅前から北に続く約1㎞の通り。曜日や時間に縛られない日本初の恒久的歩行者専用道路です。50年以上も前に、ニューヨークや東京に先駆けた前代未聞の社会実験を行い、多くの市民、商店街、関係団体、さらには国をも巻き込みました。「敗色濃厚の会議をひっくり返した一言」、「規制の壁を打ち破った全市をあげての運動」といった数々のドラマ、先人の汗、そして大きな夢が成し遂げ、ついに昭和47年6/1に誕生した、それがここ旭川平和通買物公園(以下「買物公園」)なのです。


目次

買物公園にかけた先人の夢

「人間性の回復」と 「商店街の活性化」

 当時は、高度経済成長に伴う自動車の氾濫により、自動車公害や交通事故の急増など、人間がじゃまものにされている主客転倒の現実に面していました。旭川市長(当時)・五十嵐広三さんは、こうした車社会から解放されるとともに、繁華街だからこそ花や緑、彫刻や噴水に囲まれた広場で人々が交流し、自然と対話できる、人間のための「公園」(空間)を取り戻したいという夢を語りました。同時に、市の中心にあり、舞台となった商店街が求めたのは、地域の魅力を向上させて売上げ=「買物」につなげる活性化でした。こうした歯車がかみ合い、実現したのが「買物公園」構想なのです。

誇るべき買物公園 恒久的で日本初となる空間

 買物公園は法律上では「歩行者専用道路」に当たります。しかし、構想当初はそうした区分は存在せず、後述する社会実験をはじめ買物公園の実現に向けたうねりが影響を与え、法律をも変えていきました。
 そして、現在、私たちが当たり前に毎日、いつでも歩くことができるように「恒久的」な歩行者専用道路である点が日本初のことなのです。その新規性、独自性が大注目を浴び、オープン前から全国の視察が訪れ、全国・地方合わせて数百回の報道がなされました。
 買物公園に現在まで息づく、彫刻や噴水などの文化・芸術的要素と商店街が融合した、市民の憩いの場として機能する空間は、まさに「恒久的」であることがもたらしたといえます。

オープン直後を伝えた広報誌
(昭和47年6/15号)

夢の実現に奔走

 後に五十嵐さんは言います。「僕たち市民が、この買物公園を誇りにするのは、出来た造形の姿ではない。(中略)僕たちが平和通り買物公園について、胸を張って大いに語りたいと思うのは、この広場がつくられる時のプロセスなのである。」※道路を公園に変えようという試み。国、警察などの反対や、法律・時間・予算の壁など問題は山積みでした。それに屈せず、時には商店街・商工会議所・行政らが国、北海道知事、道警本部など関係する箇所は全て折衝に回る、まさに全市をあげた運動を行うなど「買物公園」の名の下に協力し克服してきたのです。また、時には市民のアイデアを計画に盛り込むなど、皆の知恵を結集して乗り越えてきました。
 買物公園の誕生までに約8年を要しました。この間、病に倒れた方、自身が首になり退職金で支払うことも覚悟で資材を調達した方など、壮絶な人間模様と協力の上に、夢の実現が成ったことは忘れてはいけないでしょう。
※『買物公園ものがたり』

中央図書館所蔵。昭和47年6/1(オープニングセレモニー)

社会実験

 買物公園オープンの3年前、本格実施に先立ち国道・道道を封鎖する社会実験を行いました。
 前代未聞の実験に向けてチームは根回しに尽力。ついに関係機関が集まった会議で噴出したのは問題点。「やはりだめか」という落胆の空気が漂ったとき、商店街理事長(当時)・山本政治郎さんが立ち上がり言いました。
「かつて士農工商という言葉があったが現在も生きているのだろうか。住民や商店街が、こうあるべきだと願うことが、どうして理解することができないか。(中略)私はどのようにでも責任をとるが、実験を真剣に考えている若い芽だけはつまないでくれ。」※会場は静まり、出席者の胸に響いたといいます。会議後も折衝が続きましたが、晴れて実施の許可が下りました。実験は12日間で計92万人の人出となり大成功でした。これをきっかけに昭和47年の買物公園オープンが加速していったのです。※『買物公園ものがたり』

買物公園で育った方にお話を聞きました

たくさんの笑い声や人通りで 活気が広がりましたね

 買物公園オープン前は排気ガスで空気が悪かったことを覚えています。それが樹を植え、車を止めたことで劇的に変わりました。町内会の皆と、ここで焼き鳥をし、にぎやかにビールを飲み交わしたのは、車が通らないこの通りでしか味わえない雰囲気でした。私の子供たちは、キャッチボールや家庭用プールで遊び、ここで新しい友達ができたりして元気で満ちていましたね。後で聞きましたが、買物公園に反対した商店街の人も、市役所の情熱がすごく、何度も来て「もう仕方ないか」と押し切られて最後には賛成したらしいですよ(笑)

教えてくださったのは、115年続く前川茶舗の店主 前川裕司(まえかわひろし)さん

今も続く市民の夢

 買物公園は、誕生から30年の節目である2002年にリニューアルを迎えました。リニューアルまでには市民、商店街、専門家、商工会議所、市らが10 年以上の時間をかけて議論。時には約3,000人の市民にアンケートも実施しました。多くの思いを重ね合わせ、一致点を見出し、路面の段差解消、ロードヒーティングの設置、街路樹の植樹などによって現在の姿に。買物公園はイベントの舞台としての性格も併せ持つことになりました。
 こうして時が経ち、姿は変わりました。しかし、「買物公園に描いた夢」や、「自らの夢を追い続ける精神」は、誕生から50年以上が経過した今なお引き継がれています。ここでは、今、歴史や思いを紡いでいる人たちの声をご紹
介します。

部活のボランティアを通して、 買物公園の多様性を感じています

 冬まつりの「Welcomeミニ雪だるま」制作や食べマルシェなどでボランティア活動をする中で、買物公園はいろいろなタイプの人を受け入れる場所だと感じます。小さなイベントでもいいので、いろいろな人が集まりやすい場所になるような活動ができればと思います!

旭川明成高校インターアクト部

魅力いっぱいの買物公園で、これからもお店を続けたい!

 買物公園はイベントが多く、人が集まる魅力的な場所です。僕は3店舗を経営していますが、全て買物公園に出
店しています。郊外は発展しましたが、ここにしかない良さがあると思うので、これからも魅力あふれるこの場所で
お店を続けていきたいです。

Le Ann/Cafe salon de bois 代表 佐藤竜太さん

インバウンドの方も地元の方もここに来れば何か楽しめる!という空間に

 開店当時に比べて、周囲にもお店が増えて人の動きが出てきたなという実感があります。オリジナルクラフトビールで、皆さんに癒しの空間を提供しながら、この場所をもっと盛り上げていきたいです。休日も平日も関係なく楽しめるイメージを作っていきたいです!

-Freehouse-THE YEAST 店長 木戸一馬さん

「 旭川って何かいいよね」お店をきっかけに気付いてもらえたら

 日本最北の日本茶カフェとして、旭川はれて屋台村でお茶を身近に楽しめる場を提供しています。地元だけでなく海外、道外のお客様との会話を通して、買物公園や旭川の良いところを知ってもらえるとうれしいですね。これからももっと日常的に使ってもらえる通りになるといいですね。

日本茶CAFE/和風居酒屋WHIZ 店主 リエゾンミサさん 谷口雅彦さん

買物公園を 写真と音楽で盛り上げる!

 買物公園は旭川の象徴。店名と場所は旭川の写真館ということを分かりやすく伝えたい思いから決め
ました。僕は音楽もやっていていろんなイベントに参加しています。
 自分にできることを続けながら、もっと買物公園を盛り上げたいです。

あさひかわ写真館 代表 笹谷槙哉さん

「旭川ファン」を増やすには、お店やエリアの個性が大切

 7・8条通エリアは味わい深い雰囲気があり、足を運んで歩いてみないと出会えないような個性的なお店も多いんです。だからこそ自分もここに店を構えました。買物公園って面白い店があるねと知ってもらえれば、旭川ファンの増加につながると思います。

プロダクトアート工房ミチヒト 代表 見上 道さん

誰もが気軽に利用できる、 市民の買物公園であって ほしいです

 私たちは買物公園など市内の彫刻の清掃、保守をしています。買物公園の彫刻は季節に合わせて服を着せてくれる人もいて、多くの方に愛されているんだなと実感します。
 大イベントだけでなく、日常的に誰もが気軽に利用できる場所であってほしいと思います。

彫刻サポート隊 隊員 加藤 隆さん

駅から続くエリアだからこそ より魅力を創り、伝えていくお手伝いを

 最高級の和牛を提供できる場として買物公園を選びました。海外の観光客の方も多く、旅の思い出を彩る場を作れたときはうれしいですね。地元や駅で降り立つ人に魅力を伝え、また来てもらえるよう、自身の成長を通じてエリア全体を活性化していきたいです!

焼肉わじま 代表 佐藤俊一さん

先人が作り上げたお店と買物公園を 、次の世代につないでいきます

 多くの人に愛されてきた老舗が閉店すると聞き、常連だった私が「なくしてはいけない」と思いきって承継したんです。買物公園はまちなかのにぎわいを創出する大事な通り。お店も、この通りも、先人の思いを引き継いで次世代につなげていきたいです。

お菓子にちりん 店主 井上俊一さん

文化的なよりどころ。 集い、交流し発展するところ。 それの源泉が買物公園であっていい

 2日間で約7万人が集う「まちなかキャンパス」は、日本のどこにもない小学生~大学生が互いに学び合う場です。買物公園は適度な人口密度、スケール、開放感が揃い、適する会場はここをおいて他にありません。これからも学生たちの学びの出口の場として質を高めていきたいです。

まちなかキャンパス実行委員会 会長 浜田 良樹さん

パリ2024オリンピックで金メダルを獲得した北口榛花選手の凱旋パレード

冬はイルミネーションで幻想的な空間にも

「北の恵み あさひかわ食べマルシェ2 0 2 5 」買物公園に約94万人が来場!

夏を彩る市民舞踊パレードでお祭りムード一色

まちに広がる 、これからの夢

 旭川のシンボルとして親しまれてきた買物公園。
 時代とともに人々の暮らしや価値観が変化し、その役割や姿も少しずつ変化していきました。日常的に訪れる場所としての魅力をどのように高めていくか―。
 受け継がれてきた思いに新しい夢を重ね、買物公園の未来を描く動きが、今始まっています。

多様なメンバーで 未来を描く

 「買物公園でこんなことができたら」「これがあったら楽しいのに」それぞれが思い描く夢や理想を共有し、その実現につながるアイデアを形にしながら、新しい買物公園の姿をつくりあげていくため、令和6年3月に「買物公園エリアプラットフォーム( 以下「エリプラ」)」を発足しました。
 商店街の代表者や学識経験者、買物公園をよく利用する市民、行政など、多様なメンバーで構成する新たな官民連携組織です。「エリプラ」では、みんなが同じ目標に向かって活動できるように、今後のまちづくりの方向性や将来像の実現に向けた取組みを描いた「買物公園エリア未来ビジョン」を策定しました。「素敵な自分でいられる」「行きたい・歩きたくなる」「やりたいことが実現できる」そんな買物公園を目指して、課題とも向き合いながら議論を重ね、みんなの思いを少しずつ形にしています。

将来像の実現に向けた 最初の一歩 

「買物公園エリア未来ビジョン」の実現に向けて最初に取り組んだのが「まちにち計画」です。一度きりのイベントではなく、日常の中で気軽に立ち寄れる〝これからの買物公園の姿〞を試しながら探っていく社会実験として昨年初めて実施し、今年は8月9日〜9月21日の44日間実施しました。
 「エリプラ」でプロジェクトチームを立ち上げ、4つのゾーン(1条・3条・5条・7条)ごとにチームを構築。「どのような仕組みにしたらみんなが使いやすい場所になるのか?」「何があればみんなが集まる場所になるのか?」アイデアや意見を出し合いながら、各ゾーンの特徴を生かしたコンテンツを検討し、芝生やベンチなどでくつろげる滞在空間、簡単な申請で自分のやりたいことが実現できるバスキングエリア、飲食や音楽、買物公園の夜を楽しめる
イベントなど、さまざまな仕掛けを実施し、来街の促進や滞在時間の増加につなげました。

エリプラメンバーに聞きました!

買物公園を歩く 自分のことを好きになれる ようなまちを目指します

 子供の頃から買物公園の近くに住んでいて「自分もここで何かできないか」と思ったのが、エリ
プラに参加したきっかけです。
 まちにち計画で作った買物公園の滞在空間は、誰かが必ず利用していて需要は高いと感じました。僕自身、都心エリアでは「ここを歩いてる俺カッコいい(笑)」と思うことがあります。同様に買物公園を歩く自分を好きになってもらえるまちづくりをしていきたいですね。

山田直人さん

買物公園の使い勝手の 良さや可能性をアピールしたい

 まちにち計画は、沿道店舗も巻き込みながら、買物公園の「通り」全体でつくることを意識しました。「通り」の特性を生かす企画は難しくもあり、面白さも感じましたね。買物公園は交通の面などから、市民の方にはやや心理的ハードルが高い場所なのかもと感じます。でも実は多くの可能性を秘めた使いやすい場所なので、それを改めて知ってもらえるよう活動していきたいです。

3条プロジェクトチームリーダー 柳 絵里さん

実験から実現へ 新しい買物公園を、 わたしたちがつくっていく

 当時の社会実験や買物公園オープン時の様子を知ると、日本初の歩行者専用道路を実現しようとした先人のとんでもないエネルギーを感じますし、それが50年以上続いている事実は、この場所の価値を物語っていると思います。
 今回の社会実験では、滞在空間により普段は通り過ぎる人が自然と立ち止まって一息ついたり、各コンテンツを楽しんだりする姿がありました。まちにち計画は、改めて買物公園を訪れるきっかけとなったと感じま
す。ただ、ここで終わりではなく、次につなげていくことが大切です。
 買物公園は「イベントの舞台」としても発展してきましたが、これからはもっと自由に過ごせる「公園」的な要素もあっていいと考えます。社会実験を通して見えてきた課題や効果を検討しながら、もっとすてきな新しい買物公園の姿をわたしたち市民みんなでつくりあげていきたいです。

エリプラ代表幹事 長尾英次さん

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