【旭川】そんな地酒に魅せられて ~夏の限定酒を愛でる

【旭川】そんな地酒に魅せられて ~夏の限定酒を愛でる

地酒蔵のあるまち旭川。四季折々の酒が薫ります。今頃ならば、夏の味覚にも合うすっきりした夏酒が愛飲家の注目アイテム。ということで、今回はいずれも夏季限定発売、2社2本のレヴューをお届け致します。


高砂酒造 『純米酒 大雪 雪中貯蔵』

先月発売されたこの酒。その熟成方法が実に興味深いのです。冬期間、搾りたての新酒をタンクごと雪で覆い貯蔵し春までゆっくりと熟成させるというもので、これを「雪中貯蔵」といいます。
覆った雪によりタンク全体をマイナス2℃前後の一定温度に保つと熟成環境が安定し、搾りたてのやや荒々しい酒質がまろやかになるんだそう。

出典:高砂酒造
タンクは昨12月下旬、美瑛町美馬牛の丘陵に埋設されました。写真は3月下旬、それを掘り出している様子です

酒造りにおいては必ずしもこうしなければならないという工程ではありませんが、雪国の酒造りとして何ともドラマチックなエピソード。こうして作り手の思いが伝わると酒の美味しさがよりふくよかに感じますよね。

埋設された酒は2種類。
1基は今回紹介となった道産酒米「彗星」による純米酒。もう1基は道産酒米「吟風」による純米吟醸酒で、6月より通年発売の予定。

なにげに果実を思わせる香りは、ほんのりとごく穏やか。口にふくんでみれば、まろやかな酸味、そして旨みがじわりと舌に伝わってきます。軽やかにフルーティーな甘さもあります。しかも、それら香味はまとまりがよく、まろやかな熟成感を演出。

熟成というと「濃い」とか「まったり」といった酒質をイメージしがちですが、この酒は違います。すっと飲める口当たりの良さがあります。後味もすっきり。食事と一緒に楽しめそう。

ところで、筆者も毎年これを頂いていますが、年々美味しくなっているような感じが。
そう思うのは筆者だけでしょうか。

■ 純米酒 大雪 雪中貯蔵
【価格】720ml:1,375円/税込(数量限定)
【販売先】酒類販売店、および同社直売所(旭川市宮下通17丁目) 

下のオンラインショップでも入手できます

男山 『笹おり』

厳寒期に仕込まれ、生(加熱殺菌をしていない)で瓶詰め、貯蔵されたものが、この5月に出荷されました。
飲食店でも人気、筆者も毎年楽しみにしている酒をさっそく味わってみます。

買った直後は、ビンの底には、おり(素材の沈殿物)が少したまっています。といっても、品質に問題ありというものではなく、これが「笹おり」たる由縁。ビンをゆるゆると回転させるなりして溶かすと、うっすらと美しい霞状の酒を愛でることが出来ます。また、1杯目はおりを溶かさず透明な上澄みを味わう、2杯目はおりを溶かして風味の違いを確かめるという飲み方も面白いと思います。

そうそう、笹おり(ささおり)という名前。気になってる方もいますよね。名前の由来はちょっと長くなるので、のちほど。

ほんのりと甘酸っぱい香り。飲み口はさらりと、初めの香りもそのままに酸味と旨味に口の中が潤います。生酒らしい瑞々しさがありながら、旨味に関しては、一本筋が通ったような確かにあり、かつその質感は端正。
きき酒師が語るとそんな表現になってしまいますが、すっきりと呑みやすく酒の香味も確か。そんな酒です。

日本酒の香味が苦手と誤解されている方がいたなら、今一度こんな酒を試してみたらいいのに、と思いました。
何しろ、料理と一緒に楽しめるタイプなので、親しみやすいです。

笹おり ~名前の由来

蔵人の隠し酒の異名を持つこの1本。

笹(ささ)とは古来からある酒の呼び名。時代劇で、殿様が召し使いに向かって「ささを持て」って言ってシーン、見たことありませんか。そして、おりは簡単にいえば酒の中の沈殿物のこと。

酒造りでは、発酵の進んだもろみ(簡単に言うと米と麹による清酒の原料・白くてどろどろ)から酒を取り出すためにろ過し桶(今はタンク)に入れます。時間が経つと上は澄んだ清酒(笹)となり、下にはおりが溜まる訳ですが、その中間のかすみ状の部分にこそ香り高くコクがあると、蔵人がこれを「笹おり」と呼び珍重したそうです。
その味をそのまま伝えようと商品化されたのがこの酒です。

■笹おり
【価格】500ml:1,043円/税込
【販売先】酒類販売店および同社酒造り資料館売店(旭川市永山2条7丁目)

下のオンラインショップでも入手できます

料理と一緒がおすすめです

今回の酒は、どちらも料理にあうこと請け合い。
料理を美味しくする、料理によって酒も美味しく感じる、そんな相性があると思います。

記事作成のためのテイスティングに用意したツマミはホタテの刺身。
テイスティングと言ったって、晩酌です。いつでも酒は旨いツマミとともに楽しむのが我が流儀。

刺身なら醤油とわさび、というのが一般的ですが、おすすめの食べ方がカルパッチョ。
醤油(さらにわさびまで)だと、今回の酒の軽やかな酒質に対して味が濃すぎるからです(酒の味が分からなくなる)。
なので、オリーブオイル(EV)と軽く塩と黒コショウで味付け。あとは好みでディルなどの香草やピンクペッパーなどを。ホタテに限らず貝類、白身の刺身に有効です。

酒をより引き立て、同時にホタテがより美味しく感じられると思います。お試しあれ。

この記事のキュレーター

美味しいもの、旨い酒を味わう時間が何より大事。
不惑の呑兵衛を目指すべく、きき酒師の資格を取得。

・SSI認定FBO公認 きき酒師
・日本酒WEBメディア SAKE TIMES ライター

関連するキーワード


日本酒

関連する投稿


旭川生まれの老舗酒造で気軽に購入できるちょっとしたおすすめ商品

旭川生まれの老舗酒造で気軽に購入できるちょっとしたおすすめ商品

酒造や酒屋さんの多い旭川市内、今回は老舗酒造で購入できるおすすめの商品をご紹介します。お土産にもおすすめですよ。


【栗山町】旭川から行く乗り鉄&酒蔵探訪の日帰り旅

【栗山町】旭川から行く乗り鉄&酒蔵探訪の日帰り旅

酒販店や居酒屋でお馴染みの『北の錦』。北海道の人気ブランドを醸す小林酒造の酒蔵を訪ねました。試飲も目的なので「足」は車でなくJR。乗り鉄も楽しもうと、ちょっと欲張りな一挙両得旅のレポートです。


さすらいの呑兵衛 【Made in 旭川】 をツマミに呑む

さすらいの呑兵衛 【Made in 旭川】 をツマミに呑む

お店で見つけた地元企業の商品。しかも酒のアテになっちゃうかも!? と思うより早く、さっそく購入し晩酌する筆者なのであった。ということで、筆者が呑みながら味わったMADE in 旭川な食品をご紹介。その用途は酒のアテだけにあらず。日々の食卓、旭川土産にもお試しあれ。


ニセコ・旭川・上川の個性的なクラフトジンや地ビール、日本酒を飲み比べ

ニセコ・旭川・上川の個性的なクラフトジンや地ビール、日本酒を飲み比べ

近年、北海道各地でクラフトビールやクラフトジン、地酒など新しいお酒が登場しています。酒呑みとしては、そんなお酒を買うのが旅の楽しみのひとつになっています。


【旭川の地酒】今年も旬の酒「しぼりたて」を味わってみました《初心者ガイドも》

【旭川の地酒】今年も旬の酒「しぼりたて」を味わってみました《初心者ガイドも》

待望、新酒の到来だ!! 「しぼりたて」って何だか果実の飲み物のような言葉ですが、いえいえ、日本酒も「しぼりたて」があるんです。しかも今の時期だけ、冬ならではの酒が「しぼりたて」。今シーズンも酒屋に並んでいますよ。ということで、筆者が度々お届けする日本酒レビュー、今回は毎シーズン楽しみにしている、新発売の2本を紹介します。


最新の投稿


【旭川市】テレビで紹介される事多数のたれや人気商品を紹介

【旭川市】テレビで紹介される事多数のたれや人気商品を紹介

テレビで紹介された商品って一気に人気になりますよね。今回は何度もテレビで紹介されているたれや、最近テレビで紹介されたおすすめの商品をご紹介します。


愛されるB級グルメ!旭川市のオススメ食堂ごはん

愛されるB級グルメ!旭川市のオススメ食堂ごはん

ラーメンやカツ丼など、地元民に愛されリーズナブルにお腹を満たしてくれるB級グルメ。 旭川市内にある、オススメ食堂ごはんをご紹介します。


肉を食べてスタミナをつけよう!焼肉・すき焼き・ハンバーグ

肉を食べてスタミナをつけよう!焼肉・すき焼き・ハンバーグ

ちょっと疲れているなぁと思った時に食べたくなるのが肉料理。きっとカラダが求めているんでしょうね。今回は、焼肉、すき焼きなど肉のランチをご紹介します。


【11月30日】まちなかぶんか小屋で『追悼 石川郁夫 その人と作品を語る集い』開催

【11月30日】まちなかぶんか小屋で『追悼 石川郁夫 その人と作品を語る集い』開催

2024年11月30日(土)に旭川市のまちなかぶんか小屋で開催される『追悼 石川郁夫 その人と作品を語る集い』のご紹介です。


【11月30日】家族で話していますか?お金のこと【旭川で開催】

【11月30日】家族で話していますか?お金のこと【旭川で開催】

2024年11月30日(土)に旭川友の家で開催される『家事家計講習会 家族で話していますか?お金のこと』のご紹介です。


コープ
旭川を盛り上げよう!キュレーター募集!
カラダ
新店
不動産
本郷美術骨董館'
LINE募集'

人気ランキング


>>総合人気ランキング
a不動産
イズミ
旭川ホテルガイド
旭川を盛り上げよう!キュレーター募集!