レンタルの着物がびしゃびしゃに…クリーニング代に延滞料と散々な目に
もちろん車を止めることなく逃げられました。
とっさに車のナンバーと車種、車の色は覚えて書き留めましたが、その時は結婚式を優先して警察には被害届を出しませんでした。
でも、レンタルした着物だったので本来ならクリーニング代は必要なかったのに、ビシャビシャのまま返却するわけにはいかずクリーニングにも出しました。
その分、返却が遅れて延滞料も取られました。
結局、3万円も予定外の出費となり散々な目に遭いました。
このような場合はすべて泣き寝入りするしかないのでしょうか?
一方的な被害で理不尽な状況は救われることがないのでしょうか?
その車を運転していたドライバーに、水を掛けられたことによってかかった費用をせめて請求したいのですが、どうすればいいですか?
(26歳/真菜美)
刑事事件として被害を出すことは難しく民事での請求が妥当
「警察に被害届を出さなかった」とのことですが、本件は基本的には刑事事件ではないので、警察が関与する事案ではありません。
恐らく道路交通法違反にもあたらないし、刑法上の犯罪にもあたらないからです。
仮に警察に被害届を出したとしても、警察は受理してくれないでしょうし、動いてもくれません。
ただ、故意に着物を汚したということになれば、器物損壊に該当します。
その場合には、刑事事件になりますが、ただ一般的に車が走行中に泥や水を跳ねるというケースで、故意の場合はほとんどありません。
警察も「故意ではないだろう」と事件にはしてくれないと思います。
そうなると民事になりますが、故意または過失によって人の衣服をビショビショにしてしまえば不法行為に該当する可能性があります。
損害があれば賠償請求ができます。
損害というのは、恐らくクリーニング代のみになると思います。
弁護士であればナンバーから車の所有者を特定できるが
ただ相手を突き止めなければ請求できませんよね。
本件では「ナンバーは控えました」とありますが、現時点では一般の方がナンバーから所有者を突き止めることは難しいです。
陸運局へ行って登録事項等証明書交付請求という手続きを行なう必要があるのですが、その請求にはナンバープレートに書いてある「自動車登録番号」と7桁の数字の「車体番号」を全て書かなくてはなりません。
車体番号は当然わかりませんから、この登録事項等証明書交付請求ができないのです。
なので、所有者が誰かということを一般の方が突き止めることがまずできません。
警察が、陸運局に照会すれば、すぐわかるんですが、これは刑事事件ではないので警察も協力してくれません。
弁護士は、職務上の必要があれば、弁護士法23条の2を根拠に、弁護士会の会長名で各種団体などに照会することができます。
ですから弁護士に依頼すると弁護士会の会長が陸運局に照会してくれて登録事項等証明書が取得できます。
それを見れば所有者、使用者がわかります。
ただ車を運転していた人が必ず登録上の所有者や使用者とは限らないので、それだけで車を運転していた人を特定できるわけではありません。
例えば、弁護士が「何時何分にどこどこの場所で、この車によって、こういう被害が生じました」と請求したとします。
そうすれば、自分は運転していないとか、自分は運転をしていたとか、回答があるでしょうから、その回答によって水を跳ねた人を特定することができる可能性があります。
相手が「自分は運転していない」「誰が運転をしていたか分からない」と言うと、なかなか難しいですけど…。
過失の有無によって被害の立証を
仮に運転手が特定できたら、次は、故意または過失によって被害を与えたことを立証する必要があります。
故意は相手が否定したらまず立証できない。
では過失はどうか?
過失は具体的な事実を基礎にして判断します。
運転する側から見て「前方左側の道路脇に人が立っているのが見えました。
その手前や横に水が溜まっているのが見えました。
そのままの速度で行けば水がバシャンとかかると予測できたけれども、特に考えもせずに走りました」ということになれば、過失が認められる可能性が高い。
その一方で「雨は降っていたけど水が溜まっていたのはわからなかった」ということも有り得るわけです。
もしそうだとすれば過失は否定される方向に傾きます。
基本的にはそのようにして過失があるかどうかを判断します。
状況によっては損害として認められない可能性も
次に損害です。
クリーニング代が損害になるでしょう。
「返却が遅れて延滞料をとられました」ということですが、レンタルのシステムがよくわかりませんけど、被害状況を説明して汚れたまますぐに返却し「クリーニング代は自分が払います。」と言えばよかったように思われます。
そうしたらクリーニング代だけの負担だった。
わざわざ説明もせずに返却を遅らすからいけない。
被害者側にも損害の拡大を防ぐ義務がありますから、合理的な判断をしないで損害拡大をさせたことになれば、事情によりますが、その部分は損害として認定されない可能性があります。
不注意によって損害が拡大したものについてまで賠償義務を負わされたら加害者側もたまりませんからね。
被害者だから何でも請求できるわけではありません。
トータル損害が3万円とすると、相手から3万円を回収するために弁護士費用は掛けられませんから、結局のところ相手を特定することは難しいことになりますね。
気の毒ですけど、雨のあとなどに着物を着て歩道を歩く場合には、車道の水たまりなどに十分注意するとともに、場合によってはタクシーを使うなどの配慮をして被害を避ける工夫も必要ではないでしょうか。
北村 晴男
弁護士(東京弁護士会)
■1956(昭和31年)年生まれ。長野県出身。
■1992(平成4)年に個人事務所を開設し、2003(平成15)年に法人化。生命保険、交通事故、医療過誤、破産管財事件、家事事件など多岐にわたる事件を処理している。
■弁護士法人 北村・加藤・佐野法律事務所代表。
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出典:asatan
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