【身近なお悩み法律相談】設置した街路灯に住人からクレーム!撤去費用は?

【身近なお悩み法律相談】設置した街路灯に住人からクレーム!撤去費用は?

弁護士に相談するようなトラブルや問題なく暮らしたい。でも、何かあったときのために知っていて損はない! そんな身近で起こったお悩みに、テレビなどでも活躍している【北村晴男弁護士】が答えてくれた、身近なお悩みの解決法&アドバイスを紹介します。


安全の為に設置した街路灯で思わぬトラブル、責任は何処に…

5歳になる子どもがいるのですが、家の近くにある電柱に街路灯が設置されておらず、家の周りがとても暗く不用心なため、町内会長にお願いして街路灯を設置してもらいました。

が、設置後、その電柱に隣接した住人が、何も聞かされずに勝手に設置して光害になるから、今すぐ取り外せと苦情がありました。

安全のために必要としたのは、私です。

設置に対して確認を行わなかったのは、町内会長です。

工事の最中に、何も言わなかったのは、苦情住人です。

もちろん苦情の住人は撤去費に関して、町内会費から使うな、私には関係ないと言います。

この場合、どこに責任があり、法律的には誰が悪いのでしょうか?
(30代/サナの父)

互いの利害を照らし合わせ結論を出していく

これは町内会で費用を出して街路灯を設置したものと思いますが、旭川市のホームページを見ると街路灯設置補助金というものがあります。

街路灯を設置する場合、事前に補助金の交付申請をすれば、既設の電柱に設置する場合は22000円まで、新たに灯柱を設置する場合には46000円までの補助金が出るようです。

ですから本件は、もしかしたら市から補助金が支払われているのかもしれません。

街路灯は何のために付けるかというと、「夜間の犯罪や事故を未然に防止」し、「安全・安心の町」をつくるためです。

その街路灯のすぐ近くに住む人だけでなく、そこを夜間に通る可能性のある人みんながその恩恵を被るわけです。

そうすると、街路灯の設置は大変公共性のある事業ということができます。

これに対し苦情を申し立てている人は、「光害になる」と言っています。

今すぐ取り外せと。この人にとっては「眩しくてイヤだ」「こんなところに住みたくない」ということなのでしょうが、街路灯はその人も含めて、そこを夜間に歩く可能性のあるすべての人にとって、「夜間の犯罪や事故を未然に防ぐ」という大変有意義なものであることは間違いありません。

もちろん、「真っ暗な中で生活したい」、「星がきれいに見えるところで生活をしたい」という思いの方がおられることは理解していますが、個人のそういう価値観がすべてに優先する、とは言えません。

本件は、いわば夜真っ暗なところで生活をしたいという人と、夜道路だけはせめて明るくあって欲しいと考える多くの人たちとの、価値観というか利害がぶつかり合う場面なんですね。

そうすると、その利害を調整する必要があります。

夜明るい方が犯罪も起きにくいし事故も起きにくい。

これは明らかですね。

他方で「光害」というのは具体的に何を指しているのか、その方の言い分を聞かないと正確には分りませんが、部屋の中で眩しいというのであれば、自らカーテンを付けるなどして簡単に自分の利益を守れます。

大した費用も掛かりません。

他方で外を歩く人たちはより安全に生活できます。

それだけで利害調整ができる。

その場合にカーテンの費用をまわりの人たちが負担する必要は原則としてない。

個人的な欲求なので自分でカーテンを設置すればそれで公平だと思います。

受忍限度の範囲内の範囲内であるかどうかが重要

次に、光が自分の敷地内に入るのがどうしてもイヤなんだということであれば、やや高い塀を作るとかして、一定の範囲ではなんとか解決できそうですね。

それでも、どうしてもいやだとおっしゃる場合に、ひとつのキーワードが受忍限度(じゅにんげんど)という考え方です。

どうしても利害がぶつかり合う場合には、「眩しくてつらい」という件が普通の人にとって、とても耐えられない事なのか、それとも受忍限度範囲内なのか。

つまりその位は我慢できることなのか、という一般的な基準で考えるほかありません。

例えば、「どうしても暗いところで星を見たい」というだけであれば暗いところに出掛けて行けば星は見えますよね、恐らく旭川なら簡単なのでは? わざわざ家から見なきゃいけないという、その必要は少ない。

そのくらいの不利益…、つまり家の中や庭から星明かりが見られたのに、街灯が出来たことによって眩しくて見られなくなった、というのであれば、暗い公園や山に行って見てください、という話です。

そんなところに出掛けて行くのはつらいと仰るのであれば、「そのくらいは受忍限度の範囲内でしょ」となる可能性が高いです。

「今すぐ取り外せ」という要求に従って取り外すことによって発生する不利益はかなり大きいと思われます。

道路が安全でなくなりますよね。

夜間の犯罪と言えば痴漢とかストーカーとか強盗、誘拐などいろいろ考えられますが、それらを発生しにくくするという意味で非常に有益なのが街路灯です。

撤去することによる不利益があまりにも大きいと思われ、さっき申し上げたような検討をしてみると、どうもこれは認められない可能性が高いです。

仮に撤去となった場合の責任は

以上のとおり、そもそも撤去することを前提に考えられているようですが撤去などする必要がないということになりそうです。

万が一、町内会で「いやいや暗いところの方がいいんだ、夜は暗いところで生活をしましょう」というみなさんのコンセンサスができて、「街路灯を撤去しよう」という話になったとします。

その場合には街路灯を設置するにあたって、そのキッカケを与えたのが、この相談者の方であったとしても、そもそもここに街路灯を設置しようと決めたのは町内会です。

であれば、町内会の責任において設置したわけですから、仮に撤去するとなったとしても相談者が費用を払わなければならない道理はどこにもないということになります。

ですから仮に撤去することになったとしても、相談者は費用を支払う必要はありません。

万一、町内会がそういう要求をしてきたら、断固拒否しましょう。

設置前の説明や段取りで問題を回避できる

1つ付け加えると、街路灯に隣接した住人には「何も聞かされずに勝手に設置された」という不満があるのかも知れません。

確かに設置する場所については、ほかの街路灯との位置関係などから、必ずしもここに設置しなきゃいけないとまでは言えないかもしれません。

こういう考えの方がいるのだったら、そこから少し離れた位置に付けるということも十分に考えられたわけで、そうすればこういうトラブルは発生しなかったと言えなくもない。

そうすると町内会が街路灯を設置しようと決めるにあたっての手続きに若干、ほんの少しだけ難があったという可能性はあります。

街路灯を設置しましょう、どこどこにいつ設置しましょうということになれば、それを事前にお知らせする…。

回覧板などでお知らせをして、みなさんが納得して、後々文句が出にくい方法で決定するという手続きは踏んだ方がより良いかもしれませんね。

ただ、本件では、そういうことを尽くしていたのかもしれない。

たまたまその人が回覧板を読んでいなかったという可能性ももちろんあります。

そういう手続きを踏んでいなくて、自分の敷地の目の前じゃなくて10m離れていれば一切文句を言わなかったという可能性もあります。

もしそうであれば1つの妥協的な解決としては、ただ単に撤去するのではなくて、みなさんの調整がつけば道の反対側に移すと決めて、その移す費用は例えば町内会で出すとか、あるいは苦情を言っている人が半分出すとか、そういう調整をして解決するというのも1つの方法ですよね。

ただ、その場合にも少なくとも、この相談者の方が単独で払わなきゃいけないとか半分払わなきゃいけないとか、そういうことはあり得ないでしょう。

あくまでも町内会の責任でもって決定したことですから。

北村 晴男
弁護士(東京弁護士会)
■1956(昭和31年)年生まれ。長野県出身。
■1992(平成4)年に個人事務所を開設し、2003(平成15)年に法人化。生命保険、交通事故、医療過誤、破産管財事件、家事事件など多岐にわたる事件を処理している。
■弁護士法人 北村・加藤・佐野法律事務所代表。
■メルマガ「言いすぎか!! 弁護士北村晴男 本音を語る」(まぐまぐ!)配信中

出典:asatan

この記事のキュレーター

asatan公式アカウントです。
旭川とその周辺地域に関連するイベント、グルメ、観光、くらしに役立つ情報などなど、ドシドシご紹介しますのでお楽しみに!

関連するキーワード


法律 近所トラブル

関連する投稿


【5月2日】旭川市民無料法律相談会開催

【5月2日】旭川市民無料法律相談会開催

2024年5月2日(木)に旭川市で開催される『憲法記念行事 市民無料法律相談会』のご紹介です。


【身近なお悩み法律相談】新車が契約通りの車じゃない!賠償してもらう方法は?

【身近なお悩み法律相談】新車が契約通りの車じゃない!賠償してもらう方法は?

弁護士に相談するようなトラブルや問題なく暮らしたい。でも、何かあったときのために知っていて損はない! そんな身近で起こったお悩みに、テレビなどでも活躍している【北村晴男弁護士】が答えてくれた、身近なお悩みの解決法&アドバイスを紹介します。


【身近なお悩み法律相談】離婚した夫のSNSから、私の写真を消したい

【身近なお悩み法律相談】離婚した夫のSNSから、私の写真を消したい

弁護士に相談するようなトラブルや問題なく暮らしたい。でも、何かあったときのために知っていて損はない! そんな身近で起こったお悩みに、テレビなどでも活躍している【北村晴男弁護士】が答えてくれた、身近なお悩みの解決法&アドバイスを紹介します。


【身近なお悩み法律相談】会社での噂話が発端で退職するはめに。誰が1番悪い!?

【身近なお悩み法律相談】会社での噂話が発端で退職するはめに。誰が1番悪い!?

弁護士に相談するようなトラブルや問題なく暮らしたい。でも、何かあったときのために知っていて損はない! そんな身近で起こったお悩みに、テレビなどでも活躍している【北村晴男弁護士】が答えてくれた、身近なお悩みの解決法&アドバイスを紹介します。


【身近なお悩み法律相談】出勤日外の労働が反映されないのは違法?

【身近なお悩み法律相談】出勤日外の労働が反映されないのは違法?

弁護士に相談するようなトラブルや問題なく暮らしたい。でも、何かあったときのために知っていて損はない! そんな身近で起こったお悩みに、テレビなどでも活躍している【北村晴男弁護士】が答えてくれた、身近なお悩みの解決法&アドバイスを紹介します。


最新の投稿


【4月21日】開催間近!旭川で多肉植物が集まる大イベント♪

【4月21日】開催間近!旭川で多肉植物が集まる大イベント♪

2024年4月21日(日)に旭川市市民活動交流センターCoCoDeで開催される『多肉祭vol.3』のご紹介です。


みんな大好き「赤い宝石」「い・ち・ご」♪北海道産の「いちご」の直売所と「いちご」を使った絶品スイーツ♪

みんな大好き「赤い宝石」「い・ち・ご」♪北海道産の「いちご」の直売所と「いちご」を使った絶品スイーツ♪

春のフルーツといえば「いちご」!ですが「北海道産」のいちごがスーパーで並んだり「いちご狩り」が始まるのは初夏にかけて。ところが年明けから北海道産のいちごの直売をしている場所があるんです。 美味しい新鮮ないちごとそのいちごを使ったスイーツを販売しているお店もご紹介します♪


まさに【旭川市】の台所!何度でも訪れたいマイベストプレイス2選♪

まさに【旭川市】の台所!何度でも訪れたいマイベストプレイス2選♪

何かと都合の良い場所にある、ありがたいくらいお安い食堂!メニューがたくさんあるので、その日の気分に合わせられるのもSo Good!(。ゝω・)b


【新店】札幌で有名なカレーを味わえるお店がオープン!【旭川市】

【新店】札幌で有名なカレーを味わえるお店がオープン!【旭川市】

永山にオープンしたお店で、札幌にある有名なカレーを味わえる! これは足を伸ばす価値あり! そして、スリランカの本場の味を楽しめる専門店も紹介!


【旭川市】母の日のプレゼントにおすすめ!喜ばれること間違いなしな商品

【旭川市】母の日のプレゼントにおすすめ!喜ばれること間違いなしな商品

5月12日(日)は母の日ですね。みなさんプレゼントは購入しました?今回は旭川市内で購入できるおすすめの商品をいくつかご紹介します♪


コープ
vision
旭川を盛り上げよう!キュレーター募集!
カラダ
新店
不動産
本郷美術骨董館'
LINE募集'

人気ランキング


>>総合人気ランキング
3年ぶり開催の幌加内そば祭りに上杉周大さん登場!会場大盛り上がりで大盛況
バイオ
旭川ホテルガイド
旭川を盛り上げよう!キュレーター募集!