【身近なお悩み法律相談】車のマフラーの騒音に困っています。取り締まってもらう方法は?

【身近なお悩み法律相談】車のマフラーの騒音に困っています。取り締まってもらう方法は?

弁護士に相談するようなトラブルや問題なく暮らしたい。でも、何かあったときのために知っていて損はない! そんな身近で起こったお悩みに、テレビなどでも活躍している【北村晴男弁護士】が答えてくれた、身近なお悩みの解決法&アドバイスを紹介します。


近隣のバイクのマフラー音がうるさい、警察に言ってもある程度の効果しかない…

騒音で困っています。

団地に住んでいるのですが、夜遅くなると、道路を挟んだ向かいにある閉店したパチンコ店の駐車場に、マフラーの音が大きい車が何台か止まって、アイドリングし合っているようなんです。

警察に何度も連絡をしていますが、警察が見回ってくれるその日はおさまるのですが、次の日からまたアイドリング大会のようなものが始まります。

1週間から10日ぐらい毎日だったり、1日置きだったりと、1ヵ月に1日だけだったりとバラバラなのですが、そんな状態がもう2年も続いています。

夜にその場所へ行き車種やナンバーを控えて警察に伝えないとダメなんでしょうか?

 アイドリングをしている個人を突き止めて警察に取り締まって欲しいのですが、どうしたらよいのでしょうか?
(旭川市/もんきち)

軽犯罪法では難しいのであれば不正改造を指摘するという手段も

まず、軽犯罪法という法律があり、「公務員の制止をきかずに、人声…などの音を異常に大きく出して静穏を害し近隣に迷惑をかけた者」については拘留、または科料に処せられます。

「警察に連絡をすると見回ってくれる」というのは、恐らく、警察官がこの軽犯罪法に基づいて、注意してくれているのだと思います。

ですから、仮に警察官が注意したにもかかわらず、アイドリングを続けて騒音を出し続ければ、軽犯罪法違反で立件が可能になります。

けれども、警察官が注意をするとその場で止めるようですね。

これは、「警察官に注意されたら止めればいいや」ということで、この様な迷惑行為を続けているんだと思います。

そうすると、イタチごっこでいつまでたっても、この問題は解決しません。

私は車について専門家ではないのでわかりませんが、「マフラーの音が大きい車」とあるので、不正な改造をしている車である可能性があるように思われます。

いわゆる違法改造ですね。

普通の車の音よりはるかにデカイ、暴走族や走り屋などの改造車でなければ出ないようなデッカイ音が出る。

そういうマフラーであることを前提に考えると、道路運送車両法という法律があり、「不正改造を実施した者は6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処する」となっています。

そうすると、例えば今の段階で警察は、不正改造がなされている車かも知れないと、薄々感じてはいるけれど、正直面倒くさいから放ったらかしになっているという可能性もゼロではありません。

ですから警察に通報する時に「あれは不正改造車に違いないから、道路運送車両法に基づいて処罰して欲しい」と明確に伝えた方がいいですね。

不正改造かどうかは車の専門家に騒音を聞いてもらえばわかると思います。

修理工場の人やカーディーラーの人など車に詳しい人だったら、その音が違法に改造をした結果なのか、それともただ単に大きく吹かしているだけなのか、わかるはずです。

そういう人に音を聞いてもらい、「これだけ離れていて、こんなに大きな音がするのは、不正改造車だよね」という意見がもらえたら、そのように申告したらいいと思います。

ナンバーなどを控えた上で告訴する事が近道

証拠という意味で考えると、誰がそういうことをしているか、つまり、その車の所有者を特定すれば、より道路運送車両法に基づく処罰はしやすくなります。

ですから、ナンバーを控えることによって、車を特定しましょう。

近付いてナンバーを控えるのが恐いのであれば、例えば遠くから双眼鏡や望遠鏡でいいから覗いて、ナンバーを控えたらどうでしょうか。

そこに止まっている数台の車全部のナンバーを控えて、「あれだけの音を出すのだから不正改造車に違いないよ」と。

もちろん、さっき申し上げた専門家の意見を聞いたうえでね。

それを警察に申告して、警察に道路運送車両法に基づく取り締まりをしてもらうことにしましょう。

仮に、そういう情報提供をしても警察がまったく動く気配がないということになったら、どう考えるかなんですが…。

この道路運送車両法違反は被害者がない犯罪なので「告発」ということになりますが(被害者が犯罪事実を申告し、捜査と処罰を求めることを「告訴」といい、それ以外の者が求めるのを「告発」といいます。)、正式な告発がないと警察は、その処理をしなければいけないという具体的な義務が発生しません。

もちろん、警察官には犯罪事実を捜査するきっかけ(端緒)を得るように努める一般的な義務があり、そのようなきっかけを得たら捜査を行うべき義務があるのですが、それだけでは具体的事案についての義務は発生しません。

例えば「車のナンバーはこれこれでした」と電話で伝えられたとしても、あるいはメモ書き程度で、こういうナンバーでしたよと渡されたとしても、それだけでは具体的な事件処理の義務は発生しません。

では、どういう場合に発生するかというと、正式な告訴状や告発状が警察に提出され、「受理」された段階です。

ですから、我々が警察にどうしても捜査をしてもらいたければ、告訴状・告発状を出して警察にこれを受理してもらうのが一番の近道ということになります。

諦めずに警察へ告発状を受理してもらう

告発状は、インターネットや本で一生懸命に調べれば素人の方でも書くことはできます。

ご相談のケースでは、被疑者の欄には氏名不詳と書きます。

ただ、告発状の中身がしっかりしていても、一般に、警察は告発状を簡単には受理してくれません。

これは事実上の問題です。

なんで受理してくれないかというと、正式な処理をしなければいけなくなるからでしょう。

警察は「これこれこうだから証拠が足りませんよね」とか様々なハードルがあることを説明して、受け取らない努力をします。

そうなった時に、めげない事です。「1回言ってダメならしょうがない。警察官を説得するのは面倒くさいよ」って諦めるんですよ、大抵の人は。

そしたらラッキーですよね、警察官からすれば。

その人からの告発状を受け取らなくても受け取っても給料は基本変わらないですから。

「わざわざ仕事を増やす必要がない」と考えている警察官もいるでしょう。

だから、市民が諦めてくれるように一生懸命努力するわけです。

だから「諦めてはいけない」ということです。

ただ、私は「だから警察官は悪い」なんて全く思っていません。

その立場になれば大部分の人はそう考えて行動します。

「給料が同じなら、なるべく仕事を増やさないようにしよう」と。

それが人間です。

だから全世界で共産主義や社会主義の実験は、ことごとく失敗に終わったのです。

告発する権利はあるので準備したうえで行動する

犯罪が明らかに起きているという時に、市民には告発する権利があります。

さらに言うと警察側に告発状を受理しないという権限はないんです。最後の最後は、「告発状を受理しない権限はありませんよね」と言って押すことになります。

でもいきなり、それを言うのも何なので、とにかく粘り強く「大変困っているんだ」ということを伝えて正式な捜査をしてもらうように頑張るということです。

頑張ることは全然悪いことじゃありませんからね。

現に犯罪が行なわれているとすればですよ。

大した音も出ていないのに「不正改造車だ!違法だ!」と言うのは、これはいかがなものかと思いますが、みんなが困るような大きな騒音を出しているのであれば、それは不正改造車の可能性が高いわけですから、それを訴えることは正当なことです。


一生懸命告発状の書き方を勉強するという限りでは、費用は掛からないですよね。

そういう時間も労力も、もったいないという人は弁護士に相談をして一定の費用をかけて告発状を書いてもらう。

それを警察になんとしても受理してもらい、正式に捜査をしてもらうように弁護士に警察を説得させるということが最後の手段として考えられます。

実際のことを言うと、弁護士もいきなり正式受理をさせようとまではしません。

まずは説明をして被害を訴えて告発状を示して、なんとか立件して欲しいと説得します。

その結果、警察は多くの場合「受理ではありませんが、コピーだけ受け取ります」と言って受け取ります。

その後、必要に応じて「正式受理をして欲しい」としつこくお願いをして、最後の最後には、さっき申し上げた「告発状を受理しない権限はないのはわかっているでしょ」と伝えることになります。

でも頑張れば頑張るほど警察は「理由はしっかりしているし、やってみるしかない」と仕事をしてくれることになります。

ナンバーを控えないで、ただワーワー言うっていうのはあまり効果がないですよね。

もちろん理屈上は、警察官が騒音の現場に出掛けて行って、ナンバーを控えることはできるじゃないかとなります。

それはその通りなんです。

ただ、警察官を動かして立件して欲しいというのだったら、せめてナンバーを控えて、警察に渡した方が現実的です。

危険がない限り、市民としてもできる限りのことをして、警察に促すということが実際上は大事だと私は思っています。

北村 晴男
弁護士(東京弁護士会)
■1956(昭和31年)年生まれ。長野県出身。
■1992(平成4)年に個人事務所を開設し、2003(平成15)年に法人化。生命保険、交通事故、医療過誤、破産管財事件、家事事件など多岐にわたる事件を処理している。
■弁護士法人 北村・加藤・佐野法律事務所代表。
■メルマガ「言いすぎか!! 弁護士北村晴男 本音を語る」(まぐまぐ!)配信中

出典:asatan

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