いざ、栗山町へ
行き先は、空知管内栗山町。
旭川から岩見沢市を経由し千歳、室蘭方向に向かうとほどなく到着。
列車利用で2時間24分(特急2時間1分)、車で1時間46分という距離だ。
※NAVITIMEによる
■まずは、きっぷを買おう
JRで行くルートは、旭川から函館本線で岩見沢へ。そこで室蘭本線に乗り換えとなる。
当日、行きの路線検索によると、旭川発滝川行で滝川駅下車、岩見沢行に乗り継ぎ岩見沢へ。そこで苫小牧行きに乗り換え栗山駅下車となる。
券売機の行先表示には「栗山」の文字はなし。上記の駅でその都度きっぷを買うしかないのかな。まあ、乗り継ぎに時間の余裕があるのでそれもアリだが、いちいち財布出すのも面倒くさい。
そんなときは・・・
オレンジ色の券売機「話せる券売機」でオペレーターさんが親切に対応してくれる。
と、駅員さんが教えて下さった(笑)
AI音声でなく生身のヒトなので、とても頼りになる。
こっちの行程を説明すると「栗山行」を発券してくれ、支払いまで手取り足取り説明してくれた。
派手な背景(笑)
乗った列車のシートの柄です
■出 発
10:35発滝川行き。
例年だとこの時間帯の便はキハ40型(筆者がこよなく愛する古い車両)が運用されていたが、新型のH100系に代わっている。
ほかの路線でもそうなのだが、国鉄時代から運用されている車両が、どんどん新車両に変更となっている近年なのである。
個人的な思いとしては、新型車両はどうも味気なく、特に旅をする際には情緒が乏しい。
車内は機能的だが・・・
何はともあれ、儀式に取り掛かる(笑)
まずはビールで旅情緒に浸るべし。
滝川着、乗り継ぎのの列車は・・・
おおっ?何だこりゃ、初めてお目にかかるこれはJR北海道が2023年から導入している737系電車。
上は737系の車内。
座席はすべてロングシート。通勤・通学に特化した広々とした通路だ。
残念ながら、酒を嗜むというムードではない。
ああ、時代の移り変わりは、どうも釈然とせぬ。
岩見沢で室蘭線に乗り換え。
待っていたのはキハ150型気動車。ああ、やっぱこういう気動車はほっとするなあ。
車内より田園風景を眺めながら。
岩見沢から栗山までは20分と少々。意外に近い。
へえ、栗沢・栗丘・栗山。
栗の木がたくさん植えられているからの地名だったりするのかな。栗に縁がありそうな駅名が続く。
無事、栗山駅に到着。
何を隠そう筆者、栗山町は人生初訪問なのだった。
栗山町は農業で栄えた人口約12000のまち。プロ野球「日本ハム」で、またWBCで日本を優勝に導いたあの監督のおかげでけっこう有名になった。
とか、感慨に浸る間もなく、小林酒造を目指す。蔵まではここから徒歩10分くらい。
小林酒造訪問
その日、町内では折しも「くりやま老舗まつり」が開催中。
小林酒造と谷田製菓(きびだんご)の2社をメインに商店街が飲食イベントを展開。
折しも、と言っておきながら、実は筆者の狙い目はこの日。小林酒造が年に一度の酒蔵解放を行うからだ(普段は、仕込み期間を除き、10名以上の予約で見学はできる)。
小林酒造酒蔵解放
小林酒造社屋
倉庫群
小林酒造は、明治11年(1878年)札幌で造業を開始。明治33年(1900年)栗山町に移転し現在に至る。
看板ブランドは「北の錦」。北海道に錦を飾るという思いを込めた命名だそう。
工場敷地内に入る。
建物はレンガや木材が混在し、さすがに年季の入った部分も多い。
整然と並ぶ貯蔵タンク。
さすがにこれは近代のもので、この風景はどこの蔵も違いはないだろう。
上は、六番蔵という建物。
見たところ石造りと思われるこの倉庫は、なんと明治33年(1,900年)に建てられたもの。
つまり、前述した札幌から移転した年だ。それから124年!? 改めて同社の歴史と風格を感じさせる。
見学順路に従い、筆者はさらに製造現場へ。
上は浸積槽(しんせきそう)という、洗った米(酒造米)を水に浸すためのもの。
製造工程でいえば、スタートに当たるところ。
上は、前掲の米を蒸す装置。
上は、仕込蔵にある『麹室』。
日本酒造りを舞台にした映画などでよく目にする、蒸米に麹菌をおもむろにふりかける、いかにも神聖なシーンが展開される部屋だ。
ここで麹が作られ、米、水とともに酒造りが始まる。
上は、発酵した材料を濾過して清酒を取り出す場所。
中央にある機械が、材料を圧搾する「ヤブタ式」と呼ばれる、国内ではスタンダードなマシン。
ということで、酒造工程を一通り見学させてもらった訳だが、ふと目にしたものが・・・
『煉瓦土管販売』と書いてある。なぜ酒蔵で煉瓦(レンガ)を売ってるのかな。
社員さんに訪ねてみると、栗山に新工場を建てる際、蔵を煉瓦造りにするために大量の材料が必要になった。
買うより自分で作った方が得と、レンガの自社製造、ついでに販売もして利益を上げたのが当時の2代目社長。
なるほど。アイディアマンだったのね。
そんなストーリーが、筆者の胸に刺さる(プロジェクトXっぽい話が大好き)。
何気に目にしていたレンガの建物が、より崇高に見えてくるのだった。
最後に、有料試飲コーナーでくつろぐ。
当然ながら、周りの人もみんな呑んで楽しんでいる。この日ここだけは飲酒が100%肯定される、そんな連帯感があってか知らぬ客同士も和やかだ。
旅を終えて
鉄と酒を楽しむ、筆者には極上の時間に満足。
であったが、道中は車内呑みも楽しみたいというとき、近年導入された新型車両は旅情緒に乏しいことを知る。
いわば呑兵衛の受難、というところか(笑)
お土産は、当日だけの限定酒と銘入りのぐい呑み。
実際に蔵を訪ねると、その酒に対する愛着はひとしお。大事に呑もうと思う。
山うに漬けとあるのは、同社の小林家に代々伝わる蔵元郷土料理。
酒粕・豆・唐辛子などを熟成させたペースト状。その見栄えと食感がウニに似ていることからその名が付いたとか。
少量、ひと舐めしただけで旨みがジュワッ。なかなかの珍味なのだった。
美味しいもの、旨い酒を味わう時間が何より大事。
不惑の呑兵衛を目指すべく、きき酒師の資格を取得。
・SSI認定FBO公認 きき酒師
・日本酒WEBメディア SAKE TIMES ライター