File No. 12 鳶(とび)工
工事現場で高所作業にあたるスペシャリスト。今回紹介する、工事や建築の現場で足場を組む「足場鳶」のほか、高層ビルや送電塔など高所で活躍する職人全般を指します。
自然体でこなす高所の伝統技術
■職人肌の性格と鳶への憧れ
物静かで確実な仕事ぶり。まさに職人の雰囲気が漂う長島さんですが、時折25歳の若者らしい爽やかな笑顔を見せてくれる好青年です。鳶は「飛び」が語源とされるほど、足がすくむような高所が仕事場。鳶の仕事に就いた理由は「足場を組んで仕事するのがかっこよく見えました。高い所も別に…」と、こともなげに言います。
■技とチームワークの両方が大切
この日は小学校の耐震工事に伴う高所作業。取材時は足場の解体中でした。数人が連携する作業が多く、声をかけ合いながら進めます。
最年少の長島さんの作業風景の撮影中には、先輩たちから次々と盛り上げる声が。和やかで明るい雰囲気の中、テキパキと足場を外していく作業にはプロの技が光っています。
■鳶工のやりがいとは?
「仕事はきつさもあるけど、僕は会社と先輩に恵まれていると思います。丁寧に仕事を教えてもらえて、なんとかやってます」と言う長島さんに、厳しいこの仕事のやりがいを聞きました。「足場鳶の仕事は、足場を撤去すれば完了です。でもその瞬間は、自分の仕事が建物に刻まれたということ。そこになんともいえない達成感があって、やりがいを感じています」。
■鳶の伝統はどうなっていく?
伝統的な鳶の世界も、昨今の厳しい情勢の影響を受けています。特に他の業種と同様、なり手不足は大きな課題。旭川鳶土工事業組合(組合長 堀和仁)では各種講習や、とび1、2級技能検定講習で若手技能士の育成を図る一方、年々増加する外国人労働者の教育にも注力しています。もちろん安全性の一層の追求や正社員としての安定雇用など、時代に即したアップデートも欠かしません。
長島さんは「鳶を始めて4年目ですが、これまでもこれからもいろんな現場で勉強が必要だと思っています。鳶は好きで長く続けていきたいですし、1日でも早く先輩たちの仕事ぶりに追いついていきたいです」と鳶の未来を担う頼もしい若者の姿がそこにありました。
鳶工 長島大登さん
平成10年旭川市生まれ。令和2年、21歳で市内の堀組に入社。社内最年少の鳶工です。
Check!! 江戸の火消しは鳶だった⁉
祭りなどで披露される「纏(まとい)振り」「はしご乗り」。江戸の火消しの伝統の技ですが、当時の火消し組には高所が得意な鳶も加わっていました。良き伝統の継承も鳶のプライド。