44歳女性が旭川で南青山の有名店『塩チョコクッキー』を引き継いだ理由【patisserie unjour】

44歳女性が旭川で南青山の有名店『塩チョコクッキー』を引き継いだ理由【patisserie unjour】

30代で東京にある洋菓子学校に入学し、44歳で地元・旭川で自分のお店をオープン。そんな時に南青山で全国的な人気を誇っていた『塩チョコクッキー』を引き継ぐ話が舞い込んできました。ひっそりと隠れ家のように営業しているのにも関わらず、全国から注文が相次ぐ塩チョコクッキーと、年齢で自分に制限をかけず好きなことにチャレンジする、夫婦で営むスイートなお店【patisserie unjour】のお話。


30歳で学校に

23歳でアパレル関係の仕事の都合でイタリアやフランスに初めて行き、現地で初めて食べる食事や華やかなスイーツに大きな感動を覚えた田中さおりさん。

帰国後もその感動は薄れることなく、興味は膨れるばかりでした。

そんな時に偶然見かけたテレビ番組、情熱大陸で【サダハル アオキ】という有名パティシエを見た時に“アオキさんの作るお菓子はどんな味なんだろう”と興味を持ち、さらに「フランス菓子をもっと知りたい!」と思うようになりました。

そして不思議と自分の中でも、なぜだか”私いつかアオキさんに会える”と感じたそうです。すでに結婚もして、住んでいるのは北海道の旭川。口で言うほど、行動に移すことは簡単ではありませんでしたが、自分の中で抑えきれなかった思いがありました。

ある時、我慢できなかったその思いを、旦那さんである浩貴さんに伝えました。

“東京で洋菓子の学校に通いたい”

浩貴さん自身は一切止めることはなかったのですが、両親や周囲からは猛反対されたそうです。しかし、自身の“スイーツを学びたい”という情熱は冷めることなく、多くの人の反対を押し切り東京の学校に入学する決意をしました。

結婚もしていて、年齢は30歳を過ぎた頃でした。

不思議な感覚は現実へ

1年半学校に通いながら様々なスイーツ店を巡っている中で、タイミングよく【パティスリー・サダハル・アオキ】のアトリエでの求人募集を見つけたさおりさんは、迷うことなく履歴書を送ります。見事に採用となったさおりさんは、テレビで見ていた憧れのサダハル アオキの店で働くことができました。

テレビで見ていたアオキさん本人は普段、フランスのパリで仕事をしていますが、時々日本へ帰国してアトリへにも足を運んでいました。アオキさんとアトリエで対面し何度か話をすることができ、その一瞬一瞬は感動で夢と現実の境目がなくなったそうです。

「お菓子を作る時は美味しくなってねと、気持ちを込めて楽しく作るとさらに美味しくなるよ」

アオキさん本人が気さくに茶目っ気がある人柄だったおかげで、アトリエで働く他の従業員も皆人間的に素晴らしくとても働きやすい環境でした。

ショコラシックとの出会い

元々、地元旭川に帰って自分の店を開きたいという思いがあったさおりさんは【パティスリー・サダハル・アオキ】の店を退職後、南青山にあるショコラシックというお店で働くことに。

ショコラシックは塩チョコクッキーが有名なアットホームなお店。また、職場環境も様々なことにチャレンジさせてくれる自由な環境でした。

そして洋菓子学校を卒業した後から、浩貴さんも旭川から横浜へ移住し、夫婦そろっての生活が再開しました。

ショコラシックで3年ほど務めたさおりさんはその後も自分の描く店舗をイメージしながら、いくつかの店で修行を重ね、休日は知人の店で働くなどして自らのスキルを磨きました。

地元・旭川でお店をやりたい

約12年間、首都圏でのスイーツ修行をしていたさおりさんは満を辞して「旭川に戻ってお店をやろう」と浩貴さんに伝えると、この時も浩貴さんは反対することなく後押しをしてくれました。

さおりさん44歳、浩貴さん47歳の時でした。

さおりさんがすでに抱いていたイメージは大きな通りに直接面している場所ではなく、隠れ家的な場所。それでいてなおかつ分かりやすい場所というのが当初のイメージ。

首都圏で仕事をしていた時から、すでにお店をオープンする時のチラシにはどのような文面を入れるかなど構想は出来上がっていました。

また、お店をオープンしてもしばらくはお客さんがそんなに来ないということも色々な人から話を聞いていたので焦ることなく、じっくりとお店を広めていくという心構えもできていました。

互いの役割

「お店を一緒にやって欲しいんだけど」そう言うと浩貴さんはなんて言うだろうか。そんなさおりさんの心配は杞憂に終わります。

「全く嫌だとは思いませんでした。年齢的にも再就職は難しいのも分かっていましたし」と答える浩貴さん。

しかしいざお店を開けてみると、お互いの役割分担がピタッとハマり、さおりさんは製造に専念できますし、浩貴さんは営業や接客などで活躍をみせます。また、互いに良き理解者であるということも大きなメリットとなっています。

「意外かもしれませんが、お店に入って仕事モードのスイッチを入れるのは、旦那の方がはっきりしているかもしれません」と笑うさおりさん。

家での夫婦とお店でのパートナー関係が、しっかりオンオフできる相手であったのも功を奏しました。

南青山の塩チョコクッキーが旭川に

2018年1月に地元旭川で【patisserie unjour】(パティスリー アンジュール)をオープンした田中夫妻に、すぐさま大きなターニングポイントが舞い込んできました。

東京の南青山で修行をしていた有名店ショコラシックが、閉店するとの連絡が入ったのです。

夫妻がお店をオープンしてから3ヵ月後。当時お世話になったショコラシックのオーナーに連絡をすると「子育てもあるし、お店はやり切った気持ちが強い」とのことでした。

田中さん夫妻も、自身の店で看板メニューも模索していた最中「ショコラシックの塩チョコクッキーをやらせて欲しい」と伝えると快く承諾し、それらに必要な機材も良心的な形で譲り受けました。

機材を譲り受けてから2018年の5月には南青山で人気のあった塩チョコクッキーを、北海道の旭川で販売すると、復活の噂を聞いた全国のファンから問い合わせが来るようになりました。

タイミングが全て

「今考えると私たちは本当にタイミングに恵まれているんです」

2006年に東京の学校に行こうとした時は、リーマンショックの手前。もしリーマンショック後だったら世の中の風潮も受けて動けなかった可能性もあったかもしれません。また憧れのパティスリー・サダハル・アオキでタイミングよく働くことができたのも、偶然空きがあったから。

そして自分たちがお店をオープンと同時にショコラシックが店を閉めて、機材からレシピなどを譲り受けることができたのもタイミング。

「インスタでスイーツが映えるようにブームになったのも大きかったですね」

夫妻は共に口を揃えて「全てタイミングが都合よく動いてくれた」と話します。

好きなことをやるのに年齢は関係ない

さおりさんが自分の好きなことをやろうと行動に移したのは30歳を過ぎた頃。そしてそこから12年の経験を積んで、独立したのは44歳になってから。

「一般的に見ると遅い部分はあるかもしれませんが、若い時に独立するとそれはそれで見えない部分もあると思います。この歳だから若い時に気がつけなかったことに気を使って仕事をすることができています」

そう話すさおりさんと浩貴さんの外見は、実年齢からは想像ができない爽やかさと柔和な空気感があります。

「やりたいことをやるのにお金や年齢は関係ないと思います」

この言葉に説得力を持たせることができるのは、周囲の反対に惑わされることなく自分のやりたいことに忠実に従い行動してきたさおりさんと、それを信じて後押しをしてきた浩貴さんだからこその言葉です。

どんなことも楽しく

「実は東京で電車に乗るのがとても楽しくて」そう笑いながら話すさおりさんに浩貴さんは驚いていました。

「まさかそんなことが楽しかったなんて」

東京でスイーツ修行をする中忙しい中にも、日常の生活すべてが楽しいと感じれるようになったさおりさん。

「人間なので時には仕事が億劫な時もあります。しかしそういう気分の日は必ず商品に出てしまいます。ですので、日常から生活のひとつひとつを楽しむように心がけています」

そう語るさおりさんのスイーツと、お店の色に見事にマッチしている浩貴さんの【patisserie unjour】に是非一度足を運んでみてはいかがでしょうか?

あなたが口にするそのひと口は、あなたの人生を彩るひと口になるかもしれません。

patisserie unjour(パティスリー アンジュール)

パティスリーアンジュールでは毎日インスタを更新し、その日のおすすめスイーツや時間変更などをお知らせしています。是非ともチェックしてみてください↓

お店ホームページ

オーナーシェフ 田中 さおり

店舗運営    田中 浩貴

〒079-8413  北海道旭川市永山3条16丁目2−1

TEL  0166-74-4661

OPEN  平日10:00〜18:30

    土日祝10:30〜18:30(なくなり次第終了)

    月曜(不定休)火曜  定休

この記事のキュレーター

バドミントン元全日本ジュニアチャンピオン。20代半ばよりオーストラリアで生活後、アジア、南米、北米を1年半放浪。帰国後は沖縄の宮古島、兵庫の淡路島などで島生活を経てバドミントンネパール代表のコーチに就任。その後メキシコでジュニア代表もコーチし、マヤ族と一緒に生活。海外ではクリスタルやオパールなどの天然石の買い付けも行い、マクラメジュエリー、アトリエ「名もなき石屋」を幌加内で運営。著書にノンフィクション「旅を終えると君の余命は1年だった」を出版。英語、スペイン語、手話での会話が可能。

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