F i l e N o . 0 4 木工(旋盤・せんばん)
木材を取り付けて回転させる機械「木工旋盤」(木工ろくろ)を使い、刃物で削って加工します。繊細さが求められ、木工技術の中でも難易度が高いといわれます。
幻想的な灯に込める技と想い
■Q 木工の世界に入った経緯は?
機械メーカーに勤めていた頃は、設計図を描く毎日でした。やがて「自分で考えた物を自分で作りたい」と考えるようになり、旭川で木工旋盤の職人をしていた祖父のことを思い出しました。退職して旭川に移住し、独学で旋盤の技術を身に付け、工房「灯のたね」を立ち上げました。
■Q どんな製品を作っていますか?
自社の看板製品は、オレンジ色の光が漏れる照明です。全て道産のトドマツ材を使っており、木のぬくもりと温かい光で見る人が幸せな気分になるような物を作っています。また、全国のメーカーから注文を受け、文具や仏具などの部品も製作しています。木材の仕入れから塗装まで一貫して手掛けています。
■Q 加工はどんな作業ですか?
回転する木材に刃を当てて削り、形を作っていきます。ぶれないように息を止め、歯を食いしばるように力を入れます。いつも悩むのは、木の薄さです。薄くしないと光が透けませんが、薄すぎると強度が保てません。削った後に割れに気付き、がっかりすることもあります。準備は加工と同じくらい大切で、手間を掛けています。品質のばらつきを押さえるため、刃物を均一に研ぎ、木材の大きさや形も整えます。
■Q やりがいを感じる場面は?
1つとして同じ木材はありません。加工では0.1㎜の精度が求められます。寸法が図面どおりにぴったり合い、表面が美しく仕上がると、自分でも驚くほどの達成感があります。お客さんに「幻想的です」「色が素敵」と喜んでもらえるとうれしいですね。
■Q 旭川の強みは何ですか?
旭川は家具メーカーが多く、職人が経験を積む機会に恵まれています。祖父が現在の「旭川木のモノ組合」に所属していた縁で、先輩方が若者を珍しがり、私の面倒をよく見てくれました。オープンで友好的な雰囲気もあり、同業者とノウハウを共有しやすい環境です。
CHECK!! 木工職人になるには?
クラフトや家具メーカーへの就職の他、旭川高等技術専門学院などの職業能力開発施設で加工・組立技術を習得する方法があります。旋盤は井上さんのように、先輩に教わりながら技を磨くという道もあります。
木工旋盤職人 井上寛之(いのうえひろゆき)さん
江別市出身。道外の機械メーカーを退職後、旭川市へ移住。平成19年に工房「灯のたね」を開業し、クラフト照明を多数製作。